2 / 7
二人の秘密
しおりを挟む
途端、体が動くようになり、遼が後ろに尻もちをつく。
「どうしよう。僕たち、こんなの見つけて」
呆然と呟く遼の横で、光太郎が地面を素手で埋め直す。
「光太郎ッ」
「祠を戻そう」
「でも」
「戻すぞ」
遼もそれ以上何も言わず、黙々と作業を終わらせた。
土で汚れた手を払い、元どおりになった祠を見つめる。
「これ、死体遺棄になるがか?」
「元からあったき、何の罪にもならん。多分」
「多分、かぁ」
目線の先には祠がある。先ほどは無残な姿であったが、今はもうその面影は無い。黙っていれば、誰にも叱られない。二人は顔を見合わせた。
「秘密にしよう」
「うん。俺が祠をぶっ壊したなんて言ったら、母ちゃんブチ切れて大変なことになる」
「たしかに。光太郎のお母さん怖いき」
ようやく遼に笑みが戻る。
してはいけないことをし、そこから人の腕が出た。大事件だ。しかし、黙っていれば、二人には関係のない話。
「それにしても、祠の下に死体があるのは驚いた」
「まっこと驚いたねや。祠って何かを祀っちゅうがか?」
「知らん」
「俺も。今まで祠に興味持ったことなかった」
遼がちらりと祠を見遣る。そして、あることに気が付いた。
「なんで、これ、骨じゃないがか」
呟いた言葉に光太郎も振り向く。
「どういうこと?」
「ずっと昔のことなら、もうとっくに肉は無くなって骨になるがよ」
光太郎は目を見開いて固まった。視線の先には祠がある。今は埋めてしまって見えなくなっているが、その下には腕があるはずだ。
「最近、誰かが埋めたとか?」
「いや、地面は硬かった。ずっと掘り起こされていないと思う」
「なら……」
光太郎が遼の左腕を掴み、祠から距離を取った。
「何も見なかった。な?」
それに遼も頷く。
「うん。幸いここは裏庭やき、こっちまで来なければ祠を見ることもない」
「そうそう。大丈夫」
「僕と光太郎の秘密」
「うん。また明日」
サッカーボールを持ち、光太郎が帰っていく。遼も後ろを見ることなく家に入った。
玄関はまだ九月だと言うのにひんやりとしていた。この家は真夏でも涼しく、どこからか風が吹いてくるのだ。子どもの頃は窓でも開いているのかと思い、家中を探し回ったが、それらしき“空気穴”は見当たらなかった。
そんなことも気にしなくなって数年、久しぶりに周囲を警戒しながら自室に入る。祖父は午後まで囲碁会に出かけている。光太郎さえ言わなければ、このことは二人だけで完結することだ。
ピンポーン。
「あれ」
今日宅配便が届く予定は聞いていない。親や祖父であれば鍵を持っている。不思議に思いながらも玄関に向かうと、玄関のドア越しに人の頭が見えた。
「どうしよう。僕たち、こんなの見つけて」
呆然と呟く遼の横で、光太郎が地面を素手で埋め直す。
「光太郎ッ」
「祠を戻そう」
「でも」
「戻すぞ」
遼もそれ以上何も言わず、黙々と作業を終わらせた。
土で汚れた手を払い、元どおりになった祠を見つめる。
「これ、死体遺棄になるがか?」
「元からあったき、何の罪にもならん。多分」
「多分、かぁ」
目線の先には祠がある。先ほどは無残な姿であったが、今はもうその面影は無い。黙っていれば、誰にも叱られない。二人は顔を見合わせた。
「秘密にしよう」
「うん。俺が祠をぶっ壊したなんて言ったら、母ちゃんブチ切れて大変なことになる」
「たしかに。光太郎のお母さん怖いき」
ようやく遼に笑みが戻る。
してはいけないことをし、そこから人の腕が出た。大事件だ。しかし、黙っていれば、二人には関係のない話。
「それにしても、祠の下に死体があるのは驚いた」
「まっこと驚いたねや。祠って何かを祀っちゅうがか?」
「知らん」
「俺も。今まで祠に興味持ったことなかった」
遼がちらりと祠を見遣る。そして、あることに気が付いた。
「なんで、これ、骨じゃないがか」
呟いた言葉に光太郎も振り向く。
「どういうこと?」
「ずっと昔のことなら、もうとっくに肉は無くなって骨になるがよ」
光太郎は目を見開いて固まった。視線の先には祠がある。今は埋めてしまって見えなくなっているが、その下には腕があるはずだ。
「最近、誰かが埋めたとか?」
「いや、地面は硬かった。ずっと掘り起こされていないと思う」
「なら……」
光太郎が遼の左腕を掴み、祠から距離を取った。
「何も見なかった。な?」
それに遼も頷く。
「うん。幸いここは裏庭やき、こっちまで来なければ祠を見ることもない」
「そうそう。大丈夫」
「僕と光太郎の秘密」
「うん。また明日」
サッカーボールを持ち、光太郎が帰っていく。遼も後ろを見ることなく家に入った。
玄関はまだ九月だと言うのにひんやりとしていた。この家は真夏でも涼しく、どこからか風が吹いてくるのだ。子どもの頃は窓でも開いているのかと思い、家中を探し回ったが、それらしき“空気穴”は見当たらなかった。
そんなことも気にしなくなって数年、久しぶりに周囲を警戒しながら自室に入る。祖父は午後まで囲碁会に出かけている。光太郎さえ言わなければ、このことは二人だけで完結することだ。
ピンポーン。
「あれ」
今日宅配便が届く予定は聞いていない。親や祖父であれば鍵を持っている。不思議に思いながらも玄関に向かうと、玄関のドア越しに人の頭が見えた。
0
あなたにおすすめの小説
【短編集】こども病院の日常
moa
キャラ文芸
ここの病院は、こども病院です。
18歳以下の子供が通う病院、
診療科はたくさんあります。
内科、外科、耳鼻科、歯科、皮膚科etc…
ただただ医者目線で色々な病気を治療していくだけの小説です。
恋愛要素などは一切ありません。
密着病院24時!的な感じです。
人物像などは表記していない為、読者様のご想像にお任せします。
※泣く表現、痛い表現など嫌いな方は読むのをお控えください。
歯科以外の医療知識はそこまで詳しくないのですみませんがご了承ください。
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
そのほかに外伝も綴りました。
母の下着 タンスと洗濯籠の秘密
MisakiNonagase
青春
この物語は、思春期という複雑で繊細な時期を生きる少年の内面と、彼を取り巻く家族の静かなる絆を描いた作品です。
颯真(そうま)という一人の高校生の、ある「秘密」を通して、私たちは成長の過程で誰もが抱くかもしれない戸惑い、罪悪感、そしてそれらを包み込む家族の無言の理解に触れます。
物語は、現在の颯真と恋人・彩花との関係から、中学時代にさかのぼる形で展開されます。そこで明らかになるのは、彼がかつて母親の下着に対して抱いた抑えがたい好奇心と、それに伴う一連の行為です。それは彼自身が「歪んだ」と感じる過去の断片であり、深い恥ずかしさと自己嫌悪を伴う記憶です。
しかし、この物語の核心は、単なる過去の告白にはありません。むしろ、その行為に「気づいていたはず」の母親が、なぜ一言も問い詰めず、誰にも告げず、ただ静かに見守り続けたのか——という問いにこそあります。そこには、親子という関係を超えた、深い人間理解と、言葉にされない優しさが横たわっています。
センシティブな題材を、露骨な描写や扇情的な表現に頼ることなく、あくまで颯真の内省的な視点から丁寧に紡ぎ出しています。読者は、主人公の痛みと恥ずかしさを共有しながら、同時に、彼を破綻から救った「沈黙の救済」の重みと温かさを感じ取ることでしょう。
これは、一つの過ちと、その赦しについての物語です。また、成長とは時に恥ずかしい過去を背負いながら、他者の無償の寛容さによって初めて前を向けるようになる過程であること、そして家族の愛が最も深く現れるのは、時に何も言わない瞬間であることを、静かにしかし確かに伝える物語です。
どうか、登場人物たちの静かなる心の襞に寄り添いながら、ページをめくってください。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる