そろそろ寿命なはずなのに、世界がじじいを離さない

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新生活

建築

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 職人とともに黙々と作業する。鉄次郎はデザインの説明と力仕事を主に行った。ルルも時おり希望を伝え、鉄次郎はそれを笑顔で受け入れた。

「それは接着剤ですか?」

「ええ。こちらも強化されているので、半永久的に劣化しません。剥がす時はそれ専用の魔法材を使用します」

「なるほど。これは素晴らしい」

 職人がハケで接着剤を手早く塗っていくのを感心して眺める。これならば自由な形で接着することができ、丈夫で、しかし簡単に剥がすこともできる。

「晴れていてすぐ接着剤が乾くので、この分なら明日には完成します」

「そんなに早く。有難いことです」

 こじんまりした平屋にしたので通常より早く出来上がると予想していたが、それを上回る早さだ。

「水回りの設置は我々が行いますので、鉄次郎様は休憩なさってください」

「恐縮です。よろしくお願いいたします」

 専門分野ともなると、鉄次郎が手伝っても邪魔になるだけだ。素直に近くの木陰へ行き、ルルとともに用意されていた飲み物を飲む。

「疲れていませんか?」
「大丈夫。鉄ちゃんすごくて楽しかった」
「楽しまれたのならこちらも嬉しいです」

 明日仕上がると言われたが、見学しているとみるみるうちに家の形が鮮明になった。

「今日はここまでで失礼いたします。明日は屋根の部分と、細かいところのチェックをしたら完成となります」

「お世話になりました。明日もどうぞよろしくお願いいたします」

 お互いにペコペコお辞儀をし合って職人たちと別れる。ルルと城に戻ろうとしたら、シルアが小走りでやってきた。

「あれ、もうおしまいですか!?」
「ええ、ちょうど。お勉強お疲れ様です」
「ざ、残念……でも、すごいですね。もうほとんど完成してる」

 シルアが家の周りを一周して感嘆の声を上げる。

「あ、これが縁側ですね!」
「そうです。ここで日向ぼっこをするのが良いのですよ」
「素敵」

 すると、ルルがくいくいとシルアのドレスを引っ張った。

「お家、ルルも手伝ったんだよ」
「すごいじゃない。さすがルル」
「えっへん」

 腰に手を当て、自信満々に笑うルルをシルアが抱き上げた。

「二人でお邪魔させてもらおうね」
「うん」

 その様子を微笑ましく見守っていると、シルアがおもむろに小袋を取り出した。

「そうだ。これ、お花の種なんです。もしよかったら、お庭にまいてください」
「これはこれはご丁寧に。有難く頂戴します」

 家は明日出来上がるが、たしかに庭が殺風景に思う。鉄次郎は縁側から見える庭に種をまくことにした。
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