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新生活
ハナドラゴン
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「ハナドラゴンはどの辺りにいますか?」
「ここです。歩くと半日かかるので、ミングで行きます」
「ミングをお持ちなのですね」
久しぶりにミングを見た。シルアと出会った時のことが思い出される。
「二人乗りなので狭いですが、どうぞ」
「いえいえ、お邪魔いたします」
言われてみれば、シルアのミングよりやや小ぶりだ。彼女のは三人乗りといったところか。
二人で空旅をし、ハナドラゴンが住み着くという花畑に着いた。
花畑といっても、もう半分以上食い荒らされている。たしかにこれは損害だ。しかし、花を食すのもハナドラゴンにとっては生きるために必要だろう。どうにか共存できればいいと思うが、人間を襲うらしいのでそれも難しい。
──ゴブリンくらい意思疎通できる種族であればよかったが。
全ての生き物と共存したいというのは夢物語だ。ある程度のところでの線引きも必要なのは理解している。
「有難う御座いました」
ミングを仕舞う横できょろきょろと辺りを窺う。
「今のところは見当たりませんね」
「夜行性なので、夕方から活動を始めます。あと三十分もしないうちに出てくると思います」
「なるほど」
寝起きなら攻撃力が弱いので、Dランクでも倒せるとのことだった。
ちなみにクウリは魔法士らしい。短剣は念のための飾りだそうだ。
「まだまだひよっこですが、足手まといにならないよう頑張ります」
「私もひよっこです。お互い頑張りましょう」
クウリが鞄から小さな杖を、鉄次郎が鉄佳を取り出して構える。これで準備は万端だ。
「珍しい形の剣ですね」
「刀という種類の剣です。ここでは珍しいようです」
「初めて聞きました」
二人でほのぼの会話をしていたら、遠くからグルグルという音がした。
「これがハナドラゴンの声でしょうか」
「おそらく」
音のした方を注意深く見つめる。木の陰から一メートル程の、凶悪な顔をしたドラゴンが顔を出した。
「……可愛らしい見た目ではないのですね」
「Dランクには似合わない顔ですよね」
顔だけ見ればBランクくらいあってもおかしくない。鉄次郎は鉄佳に力を籠める。鉄佳がにわかに光り出した。
「わぁ」
クウリがその光を眩しく眺める。
「クウリさん、来ましたよ」
「は、はい!」
ハナドラゴンが二人を見つけ、こちらに飛んできた。クウリが呪文を唱えると、杖の先から雷が発射された。
「ギャオ!」
「やった、当たった」
当たりはしたが、ハナドラゴンの機嫌が悪くなるだけだった。
「あれ、ダメージを受けてないのかな」
クウリが不安気な表情で呟く。鉄次郎が一歩前に出た。
「大丈夫です。私が行きましょう」
「ここです。歩くと半日かかるので、ミングで行きます」
「ミングをお持ちなのですね」
久しぶりにミングを見た。シルアと出会った時のことが思い出される。
「二人乗りなので狭いですが、どうぞ」
「いえいえ、お邪魔いたします」
言われてみれば、シルアのミングよりやや小ぶりだ。彼女のは三人乗りといったところか。
二人で空旅をし、ハナドラゴンが住み着くという花畑に着いた。
花畑といっても、もう半分以上食い荒らされている。たしかにこれは損害だ。しかし、花を食すのもハナドラゴンにとっては生きるために必要だろう。どうにか共存できればいいと思うが、人間を襲うらしいのでそれも難しい。
──ゴブリンくらい意思疎通できる種族であればよかったが。
全ての生き物と共存したいというのは夢物語だ。ある程度のところでの線引きも必要なのは理解している。
「有難う御座いました」
ミングを仕舞う横できょろきょろと辺りを窺う。
「今のところは見当たりませんね」
「夜行性なので、夕方から活動を始めます。あと三十分もしないうちに出てくると思います」
「なるほど」
寝起きなら攻撃力が弱いので、Dランクでも倒せるとのことだった。
ちなみにクウリは魔法士らしい。短剣は念のための飾りだそうだ。
「まだまだひよっこですが、足手まといにならないよう頑張ります」
「私もひよっこです。お互い頑張りましょう」
クウリが鞄から小さな杖を、鉄次郎が鉄佳を取り出して構える。これで準備は万端だ。
「珍しい形の剣ですね」
「刀という種類の剣です。ここでは珍しいようです」
「初めて聞きました」
二人でほのぼの会話をしていたら、遠くからグルグルという音がした。
「これがハナドラゴンの声でしょうか」
「おそらく」
音のした方を注意深く見つめる。木の陰から一メートル程の、凶悪な顔をしたドラゴンが顔を出した。
「……可愛らしい見た目ではないのですね」
「Dランクには似合わない顔ですよね」
顔だけ見ればBランクくらいあってもおかしくない。鉄次郎は鉄佳に力を籠める。鉄佳がにわかに光り出した。
「わぁ」
クウリがその光を眩しく眺める。
「クウリさん、来ましたよ」
「は、はい!」
ハナドラゴンが二人を見つけ、こちらに飛んできた。クウリが呪文を唱えると、杖の先から雷が発射された。
「ギャオ!」
「やった、当たった」
当たりはしたが、ハナドラゴンの機嫌が悪くなるだけだった。
「あれ、ダメージを受けてないのかな」
クウリが不安気な表情で呟く。鉄次郎が一歩前に出た。
「大丈夫です。私が行きましょう」
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