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第20話 こころみる
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オーディオ設備業者の男はスピーカーの細部にエアダスターをかけると、脚立から降りて首を傾げた。
「ちょっとメーカーに問い合わせてみないとなんともいえないですね。通電してないのにこれじゃあ……」
そう言って天井から吊るされたスピーカーを訝し気に見上げた。
ぶちぶちっ――
ザーッ……
キーーーーーッ……ケケケ……
ざあぁあざざぅあ――
さーーーさサシャーーーーーーーー――
スピーカーはたまに耳につく大きな不快音を鳴らしつつ、ひたすら薄くノイズ音をたれ流し続けていた。
「どうします?」
そう訊かれ、メーカーに訊かないと分からないならさっさと訊けよ、と言ってやりたくなったが、それを抑えて、メーカーに問い合わせる場合についての詳細を訊ねた。
「ですと、とりあえずメーカーに状況を伝えて修理できるか確認して、修理できそうなら見積もり出すんで、それから修理するか決めてもらうって感じですかね」
「それっていつくらいに分かるの?」
「え?」
「修理できそうかって」
「メーカーさん次第なんでなんともですけど。まぁ、1週間くらいみてもらえれば」
「1週間も?」
「いや、まぁ、メーカーが早く返答してくれれば3日くらいってこともあるかもしれませんが、なんともいえないので」
俺は閉口するしかなかった。
「で、まぁ修理するにしてもまたそれからになるんで、もし急ぐようなら買い替えちゃった方が早いかもしれませんよ。むしろその方が安く済むんじゃないかなぁ」
業者の男はそう言うと、持ってきたカバンの中からカタログを出してこちらに差し向けてきたが、俺は受け取らなかった。
「じゃあ、とりあえずメーカーに確認してみて」
俺が言うと、業者の男は呆気にとられたような顔で、手にしたままのカタログと俺の顔を交互に見た。
その後、業者の男は、メーカーから連絡が来たらすぐ知らせると言って帰っていったが、帰り際、さりげなくカウンターの上にカタログを置いていった。
俺は、少しでも音が遮断できればと思い、タオルや着古した衣類をガムテープで留めてスピーカーを塞ぎ、更にその上からキャビネットごとダンボールで覆って、その端を天井にガムテープで固定した。
体裁は悪いが、どうにかノイズを抑えることができた。
これなら少なくとも客にすぐに帰られるということはないだろう。
あとは、客さえ入れば――
俺は開店以来初めて、店の前の通りに立ち客の呼び込みをすることにした。
しかし、俺はただつっ立っていることしかできなった。
目の前で何人もの人が行き交うのだが、店に呼び込むために何と言っていいのか分からなかった。
なんで俺がこんなことをしなければ――
腹立たしいような情けないような、みじめな気分になった。
目の前を通り過ぎていく人たちが皆、何の悩みもなく幸せなそうで妬ましく思えた。
そんな思いが募った時だった。
背後に何か近づいてくる気配を感じた。
客――?
俺はすがるような想いでその気配の方を振り返った。
すると、目の前に黒い影が現れた。
「そんな眉間に皺を寄せてたら、お客さんは寄ってこないんじゃないでしょうか」
そこには、夕日を背にしたあの女、神和住月が立っていた。
「ちょっとメーカーに問い合わせてみないとなんともいえないですね。通電してないのにこれじゃあ……」
そう言って天井から吊るされたスピーカーを訝し気に見上げた。
ぶちぶちっ――
ザーッ……
キーーーーーッ……ケケケ……
ざあぁあざざぅあ――
さーーーさサシャーーーーーーーー――
スピーカーはたまに耳につく大きな不快音を鳴らしつつ、ひたすら薄くノイズ音をたれ流し続けていた。
「どうします?」
そう訊かれ、メーカーに訊かないと分からないならさっさと訊けよ、と言ってやりたくなったが、それを抑えて、メーカーに問い合わせる場合についての詳細を訊ねた。
「ですと、とりあえずメーカーに状況を伝えて修理できるか確認して、修理できそうなら見積もり出すんで、それから修理するか決めてもらうって感じですかね」
「それっていつくらいに分かるの?」
「え?」
「修理できそうかって」
「メーカーさん次第なんでなんともですけど。まぁ、1週間くらいみてもらえれば」
「1週間も?」
「いや、まぁ、メーカーが早く返答してくれれば3日くらいってこともあるかもしれませんが、なんともいえないので」
俺は閉口するしかなかった。
「で、まぁ修理するにしてもまたそれからになるんで、もし急ぐようなら買い替えちゃった方が早いかもしれませんよ。むしろその方が安く済むんじゃないかなぁ」
業者の男はそう言うと、持ってきたカバンの中からカタログを出してこちらに差し向けてきたが、俺は受け取らなかった。
「じゃあ、とりあえずメーカーに確認してみて」
俺が言うと、業者の男は呆気にとられたような顔で、手にしたままのカタログと俺の顔を交互に見た。
その後、業者の男は、メーカーから連絡が来たらすぐ知らせると言って帰っていったが、帰り際、さりげなくカウンターの上にカタログを置いていった。
俺は、少しでも音が遮断できればと思い、タオルや着古した衣類をガムテープで留めてスピーカーを塞ぎ、更にその上からキャビネットごとダンボールで覆って、その端を天井にガムテープで固定した。
体裁は悪いが、どうにかノイズを抑えることができた。
これなら少なくとも客にすぐに帰られるということはないだろう。
あとは、客さえ入れば――
俺は開店以来初めて、店の前の通りに立ち客の呼び込みをすることにした。
しかし、俺はただつっ立っていることしかできなった。
目の前で何人もの人が行き交うのだが、店に呼び込むために何と言っていいのか分からなかった。
なんで俺がこんなことをしなければ――
腹立たしいような情けないような、みじめな気分になった。
目の前を通り過ぎていく人たちが皆、何の悩みもなく幸せなそうで妬ましく思えた。
そんな思いが募った時だった。
背後に何か近づいてくる気配を感じた。
客――?
俺はすがるような想いでその気配の方を振り返った。
すると、目の前に黒い影が現れた。
「そんな眉間に皺を寄せてたら、お客さんは寄ってこないんじゃないでしょうか」
そこには、夕日を背にしたあの女、神和住月が立っていた。
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