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救出編
あの子に再会した結婚初日
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「はぁ……酷い一日だった……」
結婚式を終え、寝室にたどり着いた私はため息をつく。もちろん、使用人の人たちは下がってもらった後だ。まぁ、後数分もしないうちにまたやってくるのはわかってるんだけど。
『ねぇ、お姉様……』
結婚式の後、わざわざ二人きりになってまでメアリーが話しかけてきた。その時の言葉が今でも頭にこびりついている。
『お姉様って、とーってもしぶといですよね!』
もうこれで会うこともなくなるだろうし、と妹は赤裸々に事情を暴露し始めたのだ。曰く、お父様とお母様に注目してもらいたかった。私やウィルが目障りだった。みんなに心配してもらいたかった。
『その願いはもう叶っているでしょう? お母様にもお父様にも唯一愛され、あなたを守ってくれる殿方は大勢いるじゃない』
もし、ちやほやされたいだけなら、私やウィルにあそこまで攻撃を加えるように扇動する必要はなかったはず。そう聞くと、彼女は天使のような微笑みでとんでもないことを言い放った。
『私、お姉様がだーいきらいなの。死んでほしいくらい』
どんなに嫌味を言っても、平然としてるお姉様が嫌いだ、どんなにみんなを頼ってもずぶとくて全く死なないお姉様が嫌いだ。私より優秀と家庭教師に褒められていたのも、全部嫌いだと。
嫌われているのはわかっていたけれど、そんな曖昧で子供じみた理由で、ここまで明確に殺意を向けられていたなんて。
『だから、アレックス様に頼んだの』
最後に、メアリーは少し声を潜めて言った。
『お姉様。いつまで生きられるか分かりませんけれど……お幸せに』
そんなわけで、私は今酷い頭痛と倦怠感に悩まされている。よく分からないけれど、妹はだいぶ頭がおかしいし、私はいつまで生きられるか分からない身らしい。
メアリーがアレックス様に頼んだのは、おそらく私の殺害。わざわざ言いにくるなんて、全く性格が悪い。『妹のせいで、アレックス様に殺されるんです!』なーんて誰にも言えないし、言ったところでまともに扱われないであろうことよく理解している。
「……はぁ」
本日何度目かのため息をついた時だった。
コンコン
窓を叩く音がする。何かがぶつかったのだろうか。こんな夜中に? 不審に思いつつも窓に歩み寄って、そっとカーテンを持ち上げる。
そこには、ふわふわの金髪と、アクアマリンのような瞳を持った少年が立っていた。
「だ、だれ……?!」
メアリーの信者にはこんな子いなかったと思うけど……。若干距離を取りつつ尋ねる私に、その少年はにっこり笑ってこう言った。
「僕だよ、姉様」
その笑顔が、記憶の中の唯一幸せだった思い出達と重なる。
「ウィル……?」
どうして。五年前、勝手に私が逃がしたつもりだったあの子が、ここに……?
結婚式を終え、寝室にたどり着いた私はため息をつく。もちろん、使用人の人たちは下がってもらった後だ。まぁ、後数分もしないうちにまたやってくるのはわかってるんだけど。
『ねぇ、お姉様……』
結婚式の後、わざわざ二人きりになってまでメアリーが話しかけてきた。その時の言葉が今でも頭にこびりついている。
『お姉様って、とーってもしぶといですよね!』
もうこれで会うこともなくなるだろうし、と妹は赤裸々に事情を暴露し始めたのだ。曰く、お父様とお母様に注目してもらいたかった。私やウィルが目障りだった。みんなに心配してもらいたかった。
『その願いはもう叶っているでしょう? お母様にもお父様にも唯一愛され、あなたを守ってくれる殿方は大勢いるじゃない』
もし、ちやほやされたいだけなら、私やウィルにあそこまで攻撃を加えるように扇動する必要はなかったはず。そう聞くと、彼女は天使のような微笑みでとんでもないことを言い放った。
『私、お姉様がだーいきらいなの。死んでほしいくらい』
どんなに嫌味を言っても、平然としてるお姉様が嫌いだ、どんなにみんなを頼ってもずぶとくて全く死なないお姉様が嫌いだ。私より優秀と家庭教師に褒められていたのも、全部嫌いだと。
嫌われているのはわかっていたけれど、そんな曖昧で子供じみた理由で、ここまで明確に殺意を向けられていたなんて。
『だから、アレックス様に頼んだの』
最後に、メアリーは少し声を潜めて言った。
『お姉様。いつまで生きられるか分かりませんけれど……お幸せに』
そんなわけで、私は今酷い頭痛と倦怠感に悩まされている。よく分からないけれど、妹はだいぶ頭がおかしいし、私はいつまで生きられるか分からない身らしい。
メアリーがアレックス様に頼んだのは、おそらく私の殺害。わざわざ言いにくるなんて、全く性格が悪い。『妹のせいで、アレックス様に殺されるんです!』なーんて誰にも言えないし、言ったところでまともに扱われないであろうことよく理解している。
「……はぁ」
本日何度目かのため息をついた時だった。
コンコン
窓を叩く音がする。何かがぶつかったのだろうか。こんな夜中に? 不審に思いつつも窓に歩み寄って、そっとカーテンを持ち上げる。
そこには、ふわふわの金髪と、アクアマリンのような瞳を持った少年が立っていた。
「だ、だれ……?!」
メアリーの信者にはこんな子いなかったと思うけど……。若干距離を取りつつ尋ねる私に、その少年はにっこり笑ってこう言った。
「僕だよ、姉様」
その笑顔が、記憶の中の唯一幸せだった思い出達と重なる。
「ウィル……?」
どうして。五年前、勝手に私が逃がしたつもりだったあの子が、ここに……?
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