【番外編完結】聖女のお仕事は竜神様のお手当てです。

豆丸

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お手当て開始

  
 次の日の朝どころがその場で竜神様の世話が始まった。神官二人に竜神様に食事を食べさせて欲しいと熱望され、聖女候補三人で厨房に向かったはずだったのに………。 
  
 明日からは交代で竜神様のお世話をする事になる。歳上だからと初日を押し付けられ私が一番手。

 今、私は厨房を借り一人だ。 
 綾乃さんは疲れた休むと大騒ぎ自室に引っ込んだ。小春さんは立ちくらみでグレンさんにしなだれ懸かりこちらは医務室に……都合の良い立ちくらみだわ。 
 グレンさんとレインさんは二人に付いて行ったので今、私の横には料理長が居る。私が変な食材を使わないように監視も兼ねているわね。料理長も竜族で無精ひげのちょっと小太りのダンディーなおじさま。 
  
 竜神様は口から食事をするのは150年ぶり。だからのど越し良く胃に優しいシチューにしようと思う。 料理長さんに竜神様が食べでも安全な食材かどうか確認しつつ、作業をする。 

 玉ねぎ細かく刻みを少しのバターでよく炒める。じゃがいもはホロホロにし人参は潰してどちらも裏ごしして滑らかに。牛乳に小麦粉を溶いて塩は少な目に。 

 薄味シチューが完成した頃、神官二人が厨房に戻ってきたので、一緒に竜神様の部屋に向かった。 

 ポツンと黒い塊こと芋虫じゃなくて、竜神様。 ベッドの真ん中に忘れ去られたように存在してる。 

 (食べてくれると良いけど) 

 寝たままじゃ食べにくいけど、芋虫体型は椅子には座りにくそう。神官の二人に頼み枕を沢山準備し竜神様の背中を支えてもらう。 
おそるおそる竜神様に触れた。酷く軽い体。 
 彼は顔も芋虫に似ていた。黒くてカサカサして鱗がある。黒過ぎて目とか鼻は何処だかわからない。 
 口らしき穴の周りに触手のようなひげが生えていて、おぞましくて鳥肌が立ってしまう。 

「ここが口で良いんですよね?」 
 ぽっかり空いた穴にそーとスプーンを近づける。
「口以外に何に見えるんだ?」 
「あはは?そうですよねー」 
「早く食べさせてあげて下さい!」 
「わかりました………ひいっ!!」 
 スプーンを口に入れると触手が私のスプーンを持つ手を捕まえた。気持ち悪さに吐き気がしてくる。それでも、スプーンを離さず口の中に流し込むとピクンピクンと芋虫体をくねらせた。 

「ああっ!素晴らしいです。竜神様がお食べになりました!!」レインさんは涙ぐみ空を仰ぐ。 
「本当だ!!食べたぞ!あんなに嬉しそうな竜神様の顔を見るのは久しぶりだ」グレンさんは拳を握り興奮気味。 
 
 ……嬉しそうな顔??どこが?? 
 
 私は食べる前と全く変化のないのっぺりとした芋虫顔を見つめた。あの気持ち悪いくねくねが歓喜表現なのかしら? 

 神官二人のテンションには付き合えないけど、150年ぶりに食事をさせてあげることが出来た。 
 彼らの喜びが痛いほど伝わるから、私は気持ち悪さを我慢して、また竜神様の口にシチューを流し込んだ。

 
 
  
 シチューを食べ終えたタイミングで竜神様は排便をしてしまった。レインさんが侍女を呼んでくれたけど、私は彼女を止めた。 
 侍女さんに呪いがかかっても困るし、それに明日からは私の仕事になる。 
 看護師舐めんなー!こちとら日々患者さんのオムツ交換しているんだから。看護実習以来の布オムツに感動しつつ。お尻を布きれで綺麗に拭いた。 
  
 竜神様の下半身はとかげみたい、大事な部分は鱗に覆われていて、解らなかった。収納式かな?  
  
「布オムツをまた使うと洗濯面倒だから、お尻綺麗にしたついでに竜神様をお風呂に入れてあげたいんですが?お湯ってありますか?」 
 
「はい!聖女様、直ぐにお風呂の準備をいたします!」侍女は感動した様子でパタパタと駆けていった。 
 
「初日から飛ばしてお前大丈夫なのか?」 
 グレンさんが私の顔を覗き込んできた。その端正な美貌にビクッとしてしまう。 

「夜勤明けで眠いですよ。でも竜神様のしっぽが腐りかけているのが気になるので綺麗にして薬塗りたいです。軟膏ありますか?」  

「薬ですか?薬師を呼んで直ぐに準備させます!聖女様が塗ってくだされば薬も効くはずです!期待出来ます」てきぱきとレインさんが指示を飛ばす。
 
 (あんなに酷いのに薬も使えなかったのか、かわいそうに)
 
 部屋に侍女さんが準備してくれた、たらいに竜神様を浮かべた。新生児を洗うように丁寧に、綺麗になってと思いを込めて。腐りかけのしっぽは痛くないように泡をたっぷりつけて。気持ち悪さより綺麗にしたい欲が勝る。 
 竜神様はされるがまま。くねくねもしていないから、寝ているのかな?気持ちいいかな?
 
 あっという間にたらいのお湯が黒く濁る。侍女さん達と神官の二人も新しいお湯や新しいたらいを運んでくれた。 
 水が透明になる頃には、黒い塊だった竜神様からくすんだ黄色い鱗がしっかり見えた。 
 芋虫体型だと思っていたけど瓢箪型で小さな手足がちょこんと生えていたわ。 
 
「芋虫だと思っていたけど瓢箪型とかげだったのね」  
「お前な………竜なんだよ、芋虫でも瓢箪でもねえよ」   
 呆れたようにグレンさんが言うとくすくすと侍女さん達が笑う。
  

 乾いたタオルで綺麗に拭き、保湿材を塗ればカサカサの黒い塊だったのに艶々な仕上がり。 
 とかげっぽい生き物になったから。これで少しは綾乃さんも小春さんも竜神様と接しやすいはずだわ! 
  
 仕上がりに満足し次は、しっぽの腐りかけた部分にたっぷり軟膏を塗り包帯を巻いた。早く良くなりますようにと願いを込めて。 

 ぐっと頭が重く引っ張られる感覚。 
 あれー?? 
 夜勤明けの疲れかしら? 
   
 力が抜けて竜神様のベッドに倒れ込んでしまった。 
「おい!しっかりしろ、大丈夫か?」 
 グレンさんの声が遠くに聞こえる。 
 瞼が開かない、体が重いわ。意識を失うような私は寝てしまった。 


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