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番外編① 休日はデート ~グレンさんと
「行ってらっしゃい竜神様!」
「ベンダル様!くれぐれも竜神様をよろしくお願いしますね」
「お気をつけて下さい」
「あいやぃー!」
小さなお手手を大袈裟にフリフリ、竜神様はベンダル様に抱っこされ空に舞い上がった。
式典から一ヶ月、再び幼生体に変態した竜神様は、今日北の領地マホロロに勉学を兼ねて視察に向かった。
勉強は嫌だとごねる竜神様に特性3段弁当を持たせると、ご機嫌で出かけて行ったわ。
ベンダルさん、竜神様と沢山一緒に居たいのに、暗黒竜の後始末や東の領地のセナさんたちの援助、式典の準備で大忙しだったから、のんびり二人っきりになれるのは初めて。
厳つい顔が心なしか嬉しそうに見える。時折ギラリと情欲を滲ませて。
まだ……幼体だから襲わないと思うけど、ちょっと心配だわ。
まあ、ベンダルさんに釘は差したし、ああ見えて竜神様は強いから大丈夫だろう。
久しぶりに竜神様のお世話のない時間に、今後がみえた。
これから竜神様がもっと大きく成長し、お世話も必要無くなって私の手を離れていく……嬉しいけど、寂しい予感にきゅっと手を握り締める。
「グレン……今日は7番に行く予定でしたよね?外食も兼ねてマナツ様もお連れして下さい」
「確かに行く予定だが……おい、レイン。マナツ本人を連れて行って良いのか?」
「本人に見てもらった方が、早く決まりそうですし……」
グレンさんとレインさんが小声でなにやら打ち合わせをしていた。よく聞こえたのは、レインさんの7
番とか外食するということだけ。
何かの隠語?それとも番地かなにかかしら?
「あーっ、マナツ。町で用事があるから付き合ってくれ。マナツに毎日旨い食事を作って貰ってるからな、たまには町で昼飯を食おう!ご馳走させてくれ」
「町で……用事?外食?うーん……」
人混みは苦手だし、格式高いレストランは疲れそう。お弁当作りの後片付けもあるしと、迷っているとノコアちゃんが耳打ちした。
「マナツ様…デートのお誘いですよ!断っちゃダメですよ!」
「え?デートのお誘いなの?」
びっくりして大きな声を出してしまう。グレンさんを振り向けば心なしか頬が赤い。
「ああ、そうだ……俺とデートは嫌か?」
「そんな!嫌じゃないわ」
肩を落とすグレンさんを見て、慌てて首を降る。
「マナツ様、グレンは初デートなのでお手柔らかにお願いしますね」
穏やかそうに微笑むレインさんだけど、瞳の奥には面白そうと書いてあった。
本当にレインさんはグレンさんで遊ぶのが好きよね。
「そうだな…デートなら…」
「グレン、背伸びして普段行かないお洒落な店に行かないで下さいね。直ぐにボロが出ますからね!」
「ぐっ!」
グレンさんはレインさんににっこりと、釘を差されていた。
デートなんだから、着替えましょうと渋る私をノコアちゃんが着替えさせ化粧までしてくれた。
華美過ぎない清楚でシンプルなワンピース。色は綺麗な深緑色。
耳元で揺れる赤ちゃんの小指ほどの大きさの耳飾は薔薇の形。色はグレンさんの瞳の色と同じ紫がかったビロードのような赤。
「実は……つい先ほど、グレンさんからマナツ様に着けてくれって渡されたんですよ」
「グレンさんが……これを?……嬉しいわ」
小さくてさりげない赤が差し色になり、顔が明るく見える。目立ち過ぎなくて好感が持てた。
看護師という仕事がら、大きな装飾品は出来なかった。
離婚前、結婚指輪だけはしていたけど……。しかも自分で買った物。元旦那に後で出すからと買わされたっけ。
ふう。忘れよう……これからデートなんだから。
「前に、グレンさん独断でマナツ様に真っ赤なドレスを贈ろうとしてあっさり断られたので、今回はレインさんに相談したみたいですよ」
「……あれは、悪かったわ」
グレンさんが私にと用意してくれたのは、グレンの髪と同じ、炎のような真紅のドレス。着回すにはバツイチ、アラサーにはハードルが高かった。そして、驚くほど値段も高かったので、丁寧にお断りさせて返品して頂いた。
「この、耳飾りはとても素敵だわ……会ったらグレンさんにお礼を言うわ」
「お礼をするならグレン様の首を噛んで差し上げて下さい!!グレン様泣くほど喜びますよ!」
ゴニョゴニョとノコアちゃんに言われて、おもいっきり赤面した。
甘噛みプレイ?
ノコアちゃんって以外に大胆なのね。
その後、部屋に迎えに来てくれた、グレンさんに頭を下げお礼を言うと、「気に入ってくれたんだな!」と、嬉しそうに、はにかんでくれた。
ノコアちゃんが期待に満ちた顔で私を見つめるけど、グレンさんの首なんて噛まないから。
(泣くほど喜びますよ!)
ノコアちゃんの声が繰り返し再生されて。
グレンさんに喜んでほしくない訳ない……。
町へ向かう道中、ついつい綺麗な首に視線を注いでしまうのは許してほしい。
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