魔導士、幼女の手に転生する

りょう改

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ナルヤとの邂逅③

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顔を覆っていた手を戻すとほぼその顔は笑っていた。 
「凄い!独自にガード破壊の魔術を作るなんて。僕はまだ先生には勝てないな。」
拘束魔法を解くと、ナルヤは勝手に僕の体を持ち上げた。
それに抵抗が出来ないほどにエネルギーが底をつきかけていたのだが。
ナルヤは僕を下に戻した後、服を整えながら何か言いたそうな目で僕を見つめて来た。
「いや、僕は完全にログ=マルニエじゃないんだ。転生で…」
「ううん、君が本当に先生ではなくても、僕は君を先生と呼ぶよ。僕はマルニエ先生にしか負けたことがない。」
「そ、そうなのか。でもなんでナルヤが500年も生きているんだ。」
「君が転生魔術を使って一年経った時、僕は不老不死の魔術を仲間と作った。」
「不老不死?それこそ禁忌になりそうだが。」
「転生のように、過去改変になるかもしれない魔術は禁忌扱いになるんだ。不老不死は僕が勝手に作ったのを使ったのもあって、叱られる程度だったんだけどね。あと、今は認可された人しか使えなくなっている。」
不老不死の魔術が発明されるなんて、魔術を作った時には考えられなかった。それを作ったのは自分の弟子だなんて。
しかし、少し変化があるようだが。
「でも、少しずつ年はとっていてね。50年かけて1年経っているんだ。なかなか計測は難しいんだけど。」
「だから、顔は少し大人びているように見えたのか。」
「そう思われているのならそうなのかもね。」
ナルヤと2人の時間がとても懐かしく感じられた。転生する前は精神的にキツく。1人で研究することが多かった。
「そういえば、500年で多くの事が変わったよ。ナルヤが出した魔法とか。」
「でも、たった500年さ。あまり変わっていない。」
ナルヤにとってはたった500年かもしれない。ナルヤの出したガードは僕の解析できない領域になっていた。きっと他の魔導士も僕よりずっと先にいるのだろう。
「こういう話す時間も良いけど、時間はあっというまに過ぎる。500年過ごしてそう思うようになったよ。本当に君が先生なら話したい事があった。」
「転生とは過去か未来か何かになる魔法。
だから、その魔法は結果が不明瞭であるから禁忌とされた。過去を変えるかもしれないからね。しかし先生がどんな罰でも、神罰さえも受け入れ、魔術の書き換えで、細かい時間、行き先も決められるとしたら?」
ナルヤは僕を試すように言う。500年前、転生の実験をしているのを見られ、ナルヤに止められたのを思い出した。
「もちろん過去に行くさ。ナルヤには分からないかもしれないが、エレーヌ様を助けたいんだ。たとえ、行き先などが分からなくてもね。」
ナルヤは深く息を吸う。
「そうか。じゃあ、僕は先生を手伝う。」
その言葉に驚いた。また、止められると思っていた。
「エレーヌ様が死んでから、先生はその後の魔術に希望を見出せなかった。それは、弟子の僕にも責任がある。」
エレーヌ様が殺されたのは剣によってではなく、魔術だった。そこから魔術の僕のイメージが人殺しの道具として変わっていった。
ナルヤの言うように魔術に希望を見出せなくなったのだろう。
「先生、僕が準備をしておくから2週間後またここに来てほしい。今の魔術と僕がずっと研究している転生魔術について教えたい事がある。」
「転生魔術を研究していいのか?」
「秘密裏にね。先生が最後に作った転生魔術を五百年間研究し続けたんだ。」
僕は分からないまま転生魔術を使い未来にきた。しかし、500年も研究をされていればナルヤの言う通り行き先の指定もできるようになっているのかもしれない。
「本当にありがとう。ナルヤ。」
「いや、何か僕にできる事があったら何でもいって欲しい。先生を手伝いたいから。」
「じゃあ、ちょっとお願いがあるんだけど。またベットを借りて良いか?この身体はエネルギー消費が激しいんだ。」








「魔導士さん!大変だよ。気づいたらパパの職場に来ているなんて!」
目が覚めるとまたメリーの手に戻っていた。ナルヤからベットを借りて、寝に来たのは覚えているが、寝ている間に入れ替わっていたのだろう。
「それは、この前ドラゴンを倒した後、気絶してここまで運ばれたんだ。」
「随分と寝てたんだね。」
窓の外はもう暗くなっていた。まだ、メリーに入れ替わりのことは話せていない。
勢いよく扉が開けられる。
「メリー!大丈夫だったか?疲れて寝てしまったと聞いたよ。」
「こんなの全然大丈夫だよ!お、お父さんは何してたの?」
「この前メリーが弱らせてくれたドラゴンを倒して来たんだ。」
「やっぱり倒せてなかったんだ。」
「あぁ、いやもうヘロヘロですぐ倒せたね。」
ドラゴンは氷漬けにされていても100日は生き残れる生命力を持つ。むしろ体力を回復をしていたはずだ。そのドラゴンを数時間で倒すとはメリーの父はよっぽどの手練れだろう。
「でも、私も1人でドラゴンを倒せるぐらいになりたいな。」
「きっとなれるさ。」
メリーの父はメリーの頭を撫でる。メリーは嬉しそうに顔を綻ばせる。メリーはまだ幼い。3ヶ月ぶりに父と会えてとても嬉しいのだろう。
「まだメリーと居たいんだが、まだ仕事が残っていてな。また数日後に家に帰るよ。」
メリーの父は名残惜しそうに笑う。
「分かった!おばあちゃんにも伝えておくね。」
「そうしてくれ。」

メリーの父が施設の外まで案内をする。
「ここは広いだろう。」
「うん。私、毎日迷っちゃいそう。」
出口に近づいた頃、後ろから「メリー=リナーヴ!」と呼ぶ声が聞こえた。
この声はナルヤだろう。
「先生、また会えてとても嬉しかった。2週間後ここの応接室に会いに来てくれ。さっきの話の続きをしたい。帰りは乗り物を準備した。良ければ乗って欲しい。」
メリーは口ごもりながら「う、うん。」と言う。
「また1週間後に、先生。」
ナルヤはそう言って肩に付いているマントをひるがえしながら、軍の中に戻って行った。
「ナ、ナルヤいつもカッコつけやがって…」メリーの父は悔しそうにしている。
「お父さん、あのナルヤさん?って誰?」
「え?あぁ、この軍の司令官で且つ魔導士の統率者の1人だよ。何歳かわからないんだが、異常にモテてなんか気に食わないんだよな。」
確かにナルヤは500年前からその雰囲気と甘い顔からとてもモテていた。
「素敵だった…」
「「!?」」
まさかメリーはナルヤに惚れたと言うのか。
「…」メリーの父も驚いて放心状態だ。今ならメリーの父の気持ちがよくわかる。
「お父さん!また1週間後ね!」
「え、メリーちょっと待ってくれ!」
メリーは嬉しそうに乗り物に乗り込んでいった。
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