12 / 15
逃の章
第11話 6月12日(逃亡生活十日目)
しおりを挟む参考資料
甫庵太閤記 秀吉書状金井文書 1582年度日本年報
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
6月12日、秀吉は京都の西、勝竜寺城に向かい進軍する。これを受け明智(影武者)は男山の軍勢を撤収させると男山北部にある天王山に陣を張ろうと東から迂回し進軍した。
だが光秀より先に、秀吉の配下武将に天王山を押さえられてしまう。明智は仕方なく天王山手前の勝竜寺城にて態勢を整え直す。
明智光秀より情報を手に入れた信長達もまた、明智光秀と共に天王山へと向かう。
うん、たぶん向かっている……ハズ。
「おばちゃーん、おかわり!」
「私もでございますー」
御飯屋で大飯を食らう信長と影武者。
「アンタ達ホントに良く食べるわねー」
店の女将はその食べっぷりに感心していた。
「はぁ、またこれか」
ため息をつく成利。
その二人の食べっぷりを見て明智は
「信長様、よくそんなにご飯が喉を通りますな。私なんかこれからの事が心配で心配で……」
と、言う。
その言葉とは裏腹に明智は酒を嗜んでいた。
「いや、アンタはなんで酒飲んでるのよ!」
成利は三本目の酒に手を付けようとした明智をきつく叱る。
「いやはや、しばらく落ち着いて酒を飲む機会がなかったものでして、自分にご褒美と言うか……ははは」
成利はおでこに手を当て、下を向き「ふぅー」と、またも深いため息をついた。
「また、問題児が増えた」
「あれ? 明智ちゃん、お酒ダメだったんじゃないの?」
信長は明智に問い質した。
「下戸は私の影武者の方でございます。実のところ私は三度の飯より酒が好きでございます」
と言い、明智はまた酒を飲む。
「だから、飲むのやめなさい!」
成利は明智の頭をはたいた。
「蘭ちゃん、頭は刺激しちゃダメだよ」
と、信長は明智の頭皮を心配した。
成利「……」
「もう十分休憩されたでしょう、そろそろ行きますよ! 戦を止めるんでしょう?」
成利は皆に活を入れ、御飯屋を出る。
それぞれは馬に跨り、目指すは天王山。
これより戦に巻き込まれる可能性を考慮し念のため信長も刀を持つ。欲を言えば甲冑も調達できればよかったのだが、この戦国時代の真っ只中で、どこの馬の骨とも分からない者に甲冑を売ってくれるような行商はいなかった。
「さあ、ここからは何が起こるか分かりません。皆さん、気を引き締めて行きましょう!」
いつの間にかリーダーの様な存在になっている成利。
「オォーー!」
妙に息の合うお気楽三人衆。
「信長様、本当は信長様に指揮を取って頂きたいのですが……」
と、成利は言う。
「えーー、じゃあ……オホン」
信長は皆に指示を出した。
「皆、蘭ちゃんの言う事を守るように! よろしくね」
「オォーー!」
「……」
成利はこれ以上は何も言うまいと心の中で呟いたのだった。
1582年6月13日、その日は雨が降っていた。
早朝、明智軍は勝竜寺城より出陣。その数およそ16000、中備えに斎藤利三・柴田勝定、そして近江衆が加勢する。左翼に津田信春、右翼に伊勢貞興ら、山の手に松田政近と並河易家を配置した。
対する秀吉軍の先手隊は約30000。明智軍にとって完全に不利な状況にあった。
早朝より天王山に鉄砲隊を配備したい松田政近とそれを阻止しようと堀尾吉晴が交戦をする。
天下をかけた「山崎の戦い」の始まりである。
その頃秀吉は、淀川越えをする織田信孝を出迎えるため、山崎から11kmほど南西の富田にいた。
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
明智光秀は下戸だったとの説があります。下戸が原因で信長に怒られたりからまれたりしたとか……。
※下戸 お酒が飲めない又は体質的に酒に弱い人
明智光秀が本能寺の変を起こした理由は、誰かにそそのかされたとか信長に無碍にされたとか、信長の中国進出を阻みたかったなどの様々な憶測があります。
0
あなたにおすすめの小説
同じアパートに住む年上未亡人美女は甘すぎる。
ピコサイクス
青春
大学生の翔太は、一人暮らしを始めたばかり。
真下の階に住むのは、落ち着いた色気と優しさを併せ持つ大人の女性・水無瀬紗夜。
引っ越しの挨拶で出会った瞬間、翔太は心を奪われてしまう。
偶然にもアルバイト先のスーパーで再会した彼女は、翔太をすぐに採用し、温かく仕事を教えてくれる存在だった。
ある日の仕事帰り、ふたりで過ごす時間が増えていき――そして気づけば紗夜の部屋でご飯をご馳走になるほど親密に。
優しくて穏やかで――その色気に触れるたび、翔太の心は揺れていく。
大人の女性と大学生、甘くちょっぴり刺激的な同居生活(?)がはじまる。
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
そのほかに外伝も綴りました。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
還暦の性 若い彼との恋愛模様
MisakiNonagase
恋愛
還暦を迎えた和子。保持する資格の更新講習で二十代後半の青年、健太に出会った。何気なくてLINE交換してメッセージをやりとりするうちに、胸が高鳴りはじめ、長年忘れていた恋心に花が咲く。
そんな還暦女性と二十代の青年の恋模様。
その後、結婚、そして永遠の別れまでを描いたストーリーです。
全7話
【時代小説】 黄昏夫婦
蔵屋
歴史・時代
江戸時代、東北地方の秋田藩は貧かった。
そんな中、真面目なひとりの武士がいた。同僚からは馬鹿にされていたが真面目な男であった。俸禄は低く貧しい。娘二人と実母との4人暮らし。
秋田藩での仕事は勘定方である。
仕事が終わると真っ直ぐ帰宅する。
ただひたすら日中は城中では勘定方の仕事をまじめにして、帰宅すれば論語を読んで知識を習得する。
そんな毎日であった。彼の名前は立花清左衛門。年齢は35歳。
娘は二人いて、一人はとめ15歳。もう一人は梅、8歳。
さて|黄昏《たそがれ》は、一日のうち日没直後、雲のない西の空に夕焼けの名残りの「赤さ」が残る時間帯のことを言う。「|黄昏時《たそがれどき)」。 「黄昏れる《たそがれる》」という動詞形もある。
「たそがれ」は、江戸時代になるまでは「たそかれ」といい、「たそかれどき」の略でよく知られていた。夕暮れの人の顔の識別がつかない暗さになると誰かれとなく、「そこにいるのは誰ですか」「誰そ彼(誰ですかあなたは)」とたずねる頃合いという意味で日常会話でよく使われた。
今回の私の小説のテーマはこの黄昏である。
この風習は広く日本で行われている。
「おはようさんです」「これからですか」「お晩でございます。いまお帰りですか」と尋ねられれば相手も答えざるを得ず、互いに誰であるかチェックすることでヨソ者を排除する意図があったとされている。
「たそかれ」という言葉は『万葉集』に
誰そ彼と われをな問ひそ 九月の 露に濡れつつ 君待つわれそ」
— 『万葉集』第10巻2240番
と登場するが、これは文字通り「誰ですかあなたは」という意味である。
「平安時代には『うつほ物語』に「たそかれどき」の用例が現れ、さらに『源氏物語』に
「寄りてこそ それかとも見め たそかれに ほのぼの見つる 夕顔の花」
— 『源氏物語』「夕顔」光源氏
と、現在のように「たそかれ」で時間帯を表す用例が現れる。
なおこの歌は、帖と登場人物の名「夕顔」の由来になった夕顔の歌への返歌である。
またこの言葉の比喩として、「最盛期は過ぎたが、多少は余力があり、滅亡するにはまだ早い状態」をという語句の用い方をする。
漢語「|黄昏《コウコン》」は日没後のまだ完全に暗くなっていない時刻を指す。「初昏」とも呼んでいた。十二時辰では「戌時」(午後7時から9時)に相当する。
「たそがれ」の動詞化の用法。日暮れの薄暗くなり始めるころを指して「空が黄昏れる」や、人生の盛りを過ぎ衰えるさまを表現して「黄昏た人」などのように使用されることがある。
この物語はフィクションです。登場人物、団体等実際に同じであっても一切関係ありません。
それでは、小説「黄昏夫婦」をお楽しみ下さい。
読者の皆様の何かにお役に立てれば幸いです。
作家 蔵屋日唱
if 大坂夏の陣 〜勝ってはならぬ闘い〜
かまぼこのもと
歴史・時代
1615年5月。
徳川家康の天下統一は最終局面に入っていた。
堅固な大坂城を無力化させ、内部崩壊を煽り、ほぼ勝利を手中に入れる……
豊臣家に味方する者はいない。
西国無双と呼ばれた立花宗茂も徳川家康の配下となった。
しかし、ほんの少しの違いにより戦局は全く違うものとなっていくのであった。
全5話……と思ってましたが、終わりそうにないので10話ほどになりそうなので、マルチバース豊臣家と別に連載することにしました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる