信長は生きてました。

ヨルノ チアサ

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逃の章

第11話 6月12日(逃亡生活十日目)

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 参考資料

 甫庵太閤記 秀吉書状金井文書 1582年度日本年報

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 6月12日、秀吉は京都の西、勝竜寺城に向かい進軍する。これを受け明智(影武者)は男山の軍勢を撤収させると男山北部にある天王山に陣を張ろうと東から迂回し進軍した。

 だが光秀より先に、秀吉の配下武将に天王山を押さえられてしまう。明智は仕方なく天王山手前の勝竜寺城にて態勢を整え直す。



 明智光秀より情報を手に入れた信長達もまた、明智光秀と共に天王山へと向かう。
 うん、たぶん向かっている……ハズ。


「おばちゃーん、おかわり!」

「私もでございますー」

 御飯屋で大飯を食らう信長と影武者。

「アンタ達ホントに良く食べるわねー」
 店の女将はその食べっぷりに感心していた。

「はぁ、またこれか」
 ため息をつく成利。

 その二人の食べっぷりを見て明智は
「信長様、よくそんなにご飯が喉を通りますな。私なんかこれからの事が心配で心配で……」
と、言う。

 その言葉とは裏腹に明智は酒を嗜んでいた。

「いや、アンタはなんで酒飲んでるのよ!」
 成利は三本目の酒に手を付けようとした明智をきつく叱る。

「いやはや、しばらく落ち着いて酒を飲む機会がなかったものでして、自分にご褒美と言うか……ははは」

 成利はおでこに手を当て、下を向き「ふぅー」と、またも深いため息をついた。
「また、問題児が増えた」

「あれ? 明智ちゃん、お酒ダメだったんじゃないの?」
 信長は明智に問い質した。

「下戸は私の影武者の方でございます。実のところ私は三度の飯より酒が好きでございます」
と言い、明智はまた酒を飲む。

「だから、飲むのやめなさい!」
 成利は明智の頭をはたいた。

「蘭ちゃん、頭は刺激しちゃダメだよ」
と、信長は明智の頭皮を心配した。


 成利「……」

「もう十分休憩されたでしょう、そろそろ行きますよ! 戦を止めるんでしょう?」
 成利は皆に活を入れ、御飯屋を出る。

 それぞれは馬に跨り、目指すは天王山。

 これより戦に巻き込まれる可能性を考慮し念のため信長も刀を持つ。欲を言えば甲冑も調達できればよかったのだが、この戦国時代の真っ只中で、どこの馬の骨とも分からない者に甲冑を売ってくれるような行商はいなかった。

「さあ、ここからは何が起こるか分かりません。皆さん、気を引き締めて行きましょう!」

 いつの間にかリーダーの様な存在になっている成利。

「オォーー!」
 妙に息の合うお気楽三人衆。

「信長様、本当は信長様に指揮を取って頂きたいのですが……」
と、成利は言う。

「えーー、じゃあ……オホン」

 信長は皆に指示を出した。

「皆、蘭ちゃんの言う事を守るように! よろしくね」

「オォーー!」

「……」

 成利はこれ以上は何も言うまいと心の中で呟いたのだった。

 

 1582年6月13日、その日は雨が降っていた。

 早朝、明智軍は勝竜寺城より出陣。その数およそ16000、中備えに斎藤利三・柴田勝定、そして近江衆が加勢する。左翼に津田信春、右翼に伊勢貞興ら、山の手に松田政近と並河易家を配置した。

 対する秀吉軍の先手隊は約30000。明智軍にとって完全に不利な状況にあった。

 早朝より天王山に鉄砲隊を配備したい松田政近とそれを阻止しようと堀尾吉晴が交戦をする。


 天下をかけた「山崎の戦い」の始まりである。


 その頃秀吉は、淀川越えをする織田信孝を出迎えるため、山崎から11kmほど南西の富田にいた。

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 明智光秀は下戸だったとの説があります。下戸が原因で信長に怒られたりからまれたりしたとか……。

※下戸 お酒が飲めない又は体質的に酒に弱い人
 
 明智光秀が本能寺の変を起こした理由は、誰かにそそのかされたとか信長に無碍にされたとか、信長の中国進出を阻みたかったなどの様々な憶測があります。
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