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2 新年度スタート
ワークライフバランス
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昼休み。俺は前から気になってたことを榊先生にやっと聞いた。
「あの、ここって、飲み会とかあんまないんすね」
「あー、でもほら、歓迎会はしたじゃない」
「ていうか俺、社会人になったら、上司とか先輩とかに、『おい、今日飲みに行くぞ』みたく連れてかれる、みたいなイメージあったんすよ。鈴木先生とか、普段オラオラ系だし、特にそういうことやりそうなのに、しねーし」
「つまり、俺を誘えと」
「いや、それはちがくて、なんか、ホッとしたけど、拍子抜けみたいな」
「鈴木先生はね、基本家に早く帰りたい人だから。子どもさん小さいし、家でやることいっぱいあるみたいで」
「え?鈴木先生子どもいるんすか?」
ちょっと大きい声出しちゃったかな、と思ったら
「言ってなかったか?天使のようにかわいい小学生の娘と幼稚園児の息子がいるんだ」
授業を終えた鈴木先生が職員室に戻ってきた。
「で?なんの話?」
「平井先生が、ここはあんまり飲みに行かないんだなって言うんで」
「なんだ、そういうときは素直に、連れてってくださいって言えば良いんだぞ」
「あー、いや、そういうんじゃなくて」
「遠慮すんな。なんか聞いてほしい話でもあんのか」
「マジでそういうんじゃなくて」
俺は、さっきまで榊先生と話していたことを鈴木先生にも伝える。
「連れ回すとか、お前ほんとは、昭和生まれか」
ひとしきり笑った後、
「真面目に返事するとだな。俺らの仕事って、良い授業をすることだと思うんだ。夜は、やっぱり授業準備に使いたい。それに、お前は自分の研究も続けてるんだから、自分の時間出来るだけたくさん欲しいだろう?それを邪魔したくはない。それにだな、酒が入らないと言えないような話なんて、実は大したことなくて、本当に大事で人に聞いてもらわないといけない話は、学校でもできるはずだと思ってる」
鈴木先生の答えが意外すぎて言葉が出ない。藤原先輩とのルームシェアの条件、俺も研究を続けること。これを実は結構キツいけど、守ってること、信じてくれてたなんて、思ってなかった。
「それにだな、やっぱさっさと家帰って、娘たちと風呂入りたいじゃん」
なんか、ついジーンと来ちゃって、なんも言えなくなる。
「おいおい。シーンとすんなよ。じゃ、平井先生、榊先生、一回飲みに行きますか?」
「あ、それだったら、水谷先生誘いましょうよ。水谷先生こそストレス溜め込んでそうで」
榊先生が明るく言う。え、結局行くの?
「日程調整してきまーす」
榊先生がカレンダー片手に水谷先生の席に行ってしまう。
「あの、研究続けてること・・・」
「お前言ってたじゃん。研究の時間が取れそうだから、教師になったって。俺もそうだったから」
これまた意外だ。
「でもな、俺の場合、修士2年で妻が妊娠しちゃって、学生結婚したからさ。もう、とにかく金は稼がにゃならんわ、家事育児はせにゃならんわ、学校じゃやっぱり新人は雑用係だしさ。結局、研究続けるなんて夢物語でしかなかったわけよ。お前はさ、少なくとも子どもができちゃったわけじゃないんだから、少しでも研究しろよ」
ちょ、泣かされる、俺。
「水谷先生、水曜日以外でお願いします、だそうです」
「よし、じゃ、金曜日な。金曜日二人とも開けとけ。俺、水谷ちゃんとこ行ってくる」
ふわんふわん。擬音をつけるなら、ふわんふわんって感じの歩き方で、鈴木先生は水谷先生の席に向かう。
すげー軽そうなのに、実はめちゃくちゃしっかりした土台がある人なんだ。
なんか俺、マジこの人にはかなわねえんだ、ってわかった。
「あの、ここって、飲み会とかあんまないんすね」
「あー、でもほら、歓迎会はしたじゃない」
「ていうか俺、社会人になったら、上司とか先輩とかに、『おい、今日飲みに行くぞ』みたく連れてかれる、みたいなイメージあったんすよ。鈴木先生とか、普段オラオラ系だし、特にそういうことやりそうなのに、しねーし」
「つまり、俺を誘えと」
「いや、それはちがくて、なんか、ホッとしたけど、拍子抜けみたいな」
「鈴木先生はね、基本家に早く帰りたい人だから。子どもさん小さいし、家でやることいっぱいあるみたいで」
「え?鈴木先生子どもいるんすか?」
ちょっと大きい声出しちゃったかな、と思ったら
「言ってなかったか?天使のようにかわいい小学生の娘と幼稚園児の息子がいるんだ」
授業を終えた鈴木先生が職員室に戻ってきた。
「で?なんの話?」
「平井先生が、ここはあんまり飲みに行かないんだなって言うんで」
「なんだ、そういうときは素直に、連れてってくださいって言えば良いんだぞ」
「あー、いや、そういうんじゃなくて」
「遠慮すんな。なんか聞いてほしい話でもあんのか」
「マジでそういうんじゃなくて」
俺は、さっきまで榊先生と話していたことを鈴木先生にも伝える。
「連れ回すとか、お前ほんとは、昭和生まれか」
ひとしきり笑った後、
「真面目に返事するとだな。俺らの仕事って、良い授業をすることだと思うんだ。夜は、やっぱり授業準備に使いたい。それに、お前は自分の研究も続けてるんだから、自分の時間出来るだけたくさん欲しいだろう?それを邪魔したくはない。それにだな、酒が入らないと言えないような話なんて、実は大したことなくて、本当に大事で人に聞いてもらわないといけない話は、学校でもできるはずだと思ってる」
鈴木先生の答えが意外すぎて言葉が出ない。藤原先輩とのルームシェアの条件、俺も研究を続けること。これを実は結構キツいけど、守ってること、信じてくれてたなんて、思ってなかった。
「それにだな、やっぱさっさと家帰って、娘たちと風呂入りたいじゃん」
なんか、ついジーンと来ちゃって、なんも言えなくなる。
「おいおい。シーンとすんなよ。じゃ、平井先生、榊先生、一回飲みに行きますか?」
「あ、それだったら、水谷先生誘いましょうよ。水谷先生こそストレス溜め込んでそうで」
榊先生が明るく言う。え、結局行くの?
「日程調整してきまーす」
榊先生がカレンダー片手に水谷先生の席に行ってしまう。
「あの、研究続けてること・・・」
「お前言ってたじゃん。研究の時間が取れそうだから、教師になったって。俺もそうだったから」
これまた意外だ。
「でもな、俺の場合、修士2年で妻が妊娠しちゃって、学生結婚したからさ。もう、とにかく金は稼がにゃならんわ、家事育児はせにゃならんわ、学校じゃやっぱり新人は雑用係だしさ。結局、研究続けるなんて夢物語でしかなかったわけよ。お前はさ、少なくとも子どもができちゃったわけじゃないんだから、少しでも研究しろよ」
ちょ、泣かされる、俺。
「水谷先生、水曜日以外でお願いします、だそうです」
「よし、じゃ、金曜日な。金曜日二人とも開けとけ。俺、水谷ちゃんとこ行ってくる」
ふわんふわん。擬音をつけるなら、ふわんふわんって感じの歩き方で、鈴木先生は水谷先生の席に向かう。
すげー軽そうなのに、実はめちゃくちゃしっかりした土台がある人なんだ。
なんか俺、マジこの人にはかなわねえんだ、ってわかった。
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