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2 新年度スタート
笹生の事情
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ウザい。ほんとウザい。
門限破ったわけでもないのに、困ってることあるかとか、マジでウザい。
ウザいけど、うるさいなあとか言うわけにもいかないし。今日は、絡んでこないと良いんだけど。里見先生。
ずっと家から出たかった。二歳下の妹と母親の顔が見えないところで暮らしたかった。
妹の優子が産まれたときのことは、もう覚えてない。気がついたら妹は、わたしと一緒にバレエとピアノを習っていて、わたしはもらったことがないトロフィーやら賞状やらをいっぱいもらう、地元のちょっとしたスターになってた。
優子、今度のコンクールで優勝するかもしれないから、お姉ちゃん、優子にピアノ、使わせてね。
バレエの衣装も、初めはわたしのおさがりを着ていたのに、コンクールに出るから、と優子はオーダーメイド。わたしは、バレエ教室の他の子からのおさがり。
我が家は優子を中心に回っていた。
優子みたいに、愛子にも頑張ってほしいんだけどねー。
母親が他の子たちのママにそんな話をしているのも、何度も聞いた。
わたしはわたし。優子と比べて劣るお姉ちゃんとして生きるのはもう、うんざりだった。
中学生になって、初めての試験。学年で5位の成績を見た母親が、
「すごいね、愛子。こんなに勉強できるんだね」
はじめてわたしを見てくれた。嬉しかったのに。
「愛子で5位なら、優子は、1位がとれるよね」
わたしは、絶対に家を出る。決断した瞬間だった。
それからわたしは県外で寮生活ができて、でも学費はそこまで高くない学校を探した。寮のある学費が安い学校なんてものはそもそも数が少なくて、学費が安いのと反比例して、偏差値はべらぼうに高かった。
聖白雪学院は、校舎の雰囲気、ホームページに載ってた在校生の写真に惹かれた。学費が私立なのにそんなに高くなかったことにも惹かれた。そして、法則通り偏差値は高い。
ここなら親を、少なくとも父親は説得できる。そう信じて、猛勉強した。
父親には、母親と優子から離れて暮らしたい、と正直に打ち明けて、受験と進学を承諾してもらった。
「お姉ちゃんと離れるなんて寂しい」
優子は泣いたが、もうどうでもよかった。衣類と小学校のときから使ってる、お気に入りのペンケース、そのほかのこまごまとした日用品を宅配便で送り、3月末から寮生活。泣いていたくせに、優子からは一度もLINEもメールも手紙も来ない。
白雪の寮は、1年生と2年生がペアで二人部屋。3年生になると、個室がもらえる。
同部屋の相澤先輩が、わたしは苦手だ。
「なんでも聞いてね」
「お菓子食べない?」
ほっといて欲しいのに、あれこれ構ってくるのがウザい。2日目でわたしは、この寮を選んだことを後悔した。独り暮らし可、の高校をこそ選ぶべきだったのだ。
相澤先輩も帰宅部だ、とわかってから、とにかく学校に出来るだけ残ることにした。図書室が主な居場所。宿題をしていれば、時間は自然に潰せる。
それで2ヶ月なんてことなかったのに、里見先生が、わたしのことを心配してるとか。ウザい。とにかくほっといて欲しい。
今日も図書室で17時20分まで宿題をして、寮に40分には入る。閉門当番は一週間同じだから、今日も里見先生だ。
「あのね、笹生さん」
きた。だからあんた、ウザいんだって。
いいたい気持ちをぐっと抑える。
「なにか」
「わたしは、笹生さんがあまり寮にいたくないのかなって思って、それなら、寮が笹生さんにとって少しでも居心地がいい環境になればなって思ってるの」
はあ。
「でも、笹生さんが、じゃなくて」
・・・
「わたしは、少しでも笹生さんと話がしたいので、もし、もし気が向いたら、話に来てください」
なに顔赤くなってんの?
「わかりました」
今のところ、話に行く気はない。けど、昨日より嫌な感じはなかった。夕食まで、宿題の続きやろっと。
門限破ったわけでもないのに、困ってることあるかとか、マジでウザい。
ウザいけど、うるさいなあとか言うわけにもいかないし。今日は、絡んでこないと良いんだけど。里見先生。
ずっと家から出たかった。二歳下の妹と母親の顔が見えないところで暮らしたかった。
妹の優子が産まれたときのことは、もう覚えてない。気がついたら妹は、わたしと一緒にバレエとピアノを習っていて、わたしはもらったことがないトロフィーやら賞状やらをいっぱいもらう、地元のちょっとしたスターになってた。
優子、今度のコンクールで優勝するかもしれないから、お姉ちゃん、優子にピアノ、使わせてね。
バレエの衣装も、初めはわたしのおさがりを着ていたのに、コンクールに出るから、と優子はオーダーメイド。わたしは、バレエ教室の他の子からのおさがり。
我が家は優子を中心に回っていた。
優子みたいに、愛子にも頑張ってほしいんだけどねー。
母親が他の子たちのママにそんな話をしているのも、何度も聞いた。
わたしはわたし。優子と比べて劣るお姉ちゃんとして生きるのはもう、うんざりだった。
中学生になって、初めての試験。学年で5位の成績を見た母親が、
「すごいね、愛子。こんなに勉強できるんだね」
はじめてわたしを見てくれた。嬉しかったのに。
「愛子で5位なら、優子は、1位がとれるよね」
わたしは、絶対に家を出る。決断した瞬間だった。
それからわたしは県外で寮生活ができて、でも学費はそこまで高くない学校を探した。寮のある学費が安い学校なんてものはそもそも数が少なくて、学費が安いのと反比例して、偏差値はべらぼうに高かった。
聖白雪学院は、校舎の雰囲気、ホームページに載ってた在校生の写真に惹かれた。学費が私立なのにそんなに高くなかったことにも惹かれた。そして、法則通り偏差値は高い。
ここなら親を、少なくとも父親は説得できる。そう信じて、猛勉強した。
父親には、母親と優子から離れて暮らしたい、と正直に打ち明けて、受験と進学を承諾してもらった。
「お姉ちゃんと離れるなんて寂しい」
優子は泣いたが、もうどうでもよかった。衣類と小学校のときから使ってる、お気に入りのペンケース、そのほかのこまごまとした日用品を宅配便で送り、3月末から寮生活。泣いていたくせに、優子からは一度もLINEもメールも手紙も来ない。
白雪の寮は、1年生と2年生がペアで二人部屋。3年生になると、個室がもらえる。
同部屋の相澤先輩が、わたしは苦手だ。
「なんでも聞いてね」
「お菓子食べない?」
ほっといて欲しいのに、あれこれ構ってくるのがウザい。2日目でわたしは、この寮を選んだことを後悔した。独り暮らし可、の高校をこそ選ぶべきだったのだ。
相澤先輩も帰宅部だ、とわかってから、とにかく学校に出来るだけ残ることにした。図書室が主な居場所。宿題をしていれば、時間は自然に潰せる。
それで2ヶ月なんてことなかったのに、里見先生が、わたしのことを心配してるとか。ウザい。とにかくほっといて欲しい。
今日も図書室で17時20分まで宿題をして、寮に40分には入る。閉門当番は一週間同じだから、今日も里見先生だ。
「あのね、笹生さん」
きた。だからあんた、ウザいんだって。
いいたい気持ちをぐっと抑える。
「なにか」
「わたしは、笹生さんがあまり寮にいたくないのかなって思って、それなら、寮が笹生さんにとって少しでも居心地がいい環境になればなって思ってるの」
はあ。
「でも、笹生さんが、じゃなくて」
・・・
「わたしは、少しでも笹生さんと話がしたいので、もし、もし気が向いたら、話に来てください」
なに顔赤くなってんの?
「わかりました」
今のところ、話に行く気はない。けど、昨日より嫌な感じはなかった。夕食まで、宿題の続きやろっと。
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