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2 新年度スタート
思春期女子は難しい
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結局、どうしたら良かったのか、どうすればいいのか。グルグル考えていたら一晩、寝たんだか寝てないんだか。気がついたら朝になってしまった。
今日も授業あるのに、こんな寝不足。とにかく着替えて顔を洗い、朝の健康観察のため、食堂に向かう。
「おはようございまーす」
にっこり笑いながら元気よく入ってくる子。
「おはようございます」
どこかまだ眠そうな目をしてる子。
寮生たちが次々食堂に入ってくる。みんなもう制服姿だ。
笹生さんも入ってきた。廣瀬先生におはようございますを言っている。表情はいつもと変わらず無表情。他の寮生から話し掛けられても、あまり変わらない。
寮長先生が入ってきた。気になることがある日だけ、朝食前に寮に入ってくる。昨日、話は聞けませんでした、と報告しているから、様子を見に来たんだろう。
登校時間が来て、学校にみんなで向かう。笹生さんは、すごく歩くのが速い。みんなの列から離れてズンズン学校に向かって進んでいく。
寝不足かつ昨日からのモヤモヤを抱えたままの状態で職員室に入る。
「おはようございます。昨日何かありましたね」
やっぱり。絶対水谷先生には見抜かれると思ってた。昨日の笹生さんとのことを手短に報告する。
「切り換えを覚えてください。ひとつの気になることのために、体調不良を起こしていては、授業を受ける生徒に失礼です」
耳が痛い。おっしゃるとおりです。おっしゃるとおり過ぎてもう。穴掘ってうずくまりたいくらいです。
「一時間目は開いてるんですね、カウンセリングルーム、行ってみませんか?」
今日は水曜日。非常勤のスクールカウンセラーが出勤する日だ。スクールカウンセラーは、近くの大学病院に勤務する臨床心理士。時間さえあえば、生徒だけでなく、教職員もカウンセリングを受けることができる。でも、そこまでわたし、病んでるわけではないので。
「いや、そこまでではないかなって」
「梶さんは、生徒の心理に詳しいので、アドバイスがもらえるんじゃないかと思ったのですが。里見先生になにか作戦があるなら、試してみてからでも良いとは思いますけど」
カウンセラーからアドバイスをもらう、か。
内線電話でアポを取って、一時間目に面談の時間を割いてもらう。水谷先生が、カウンセラーの名前「梶さん」を知ってたことに少し驚く。
白雪のカウンセリングルームは、教室棟の1階の真ん中、玄関から続く廊下の突き当たりにある。図書室と隣り合っていて、生徒が教室に向かう途中に利用できるためか、他校より利用率が高いらしい。また、図書室の奥にもカウンセリングルームへの扉があって、カウンセリングルームに入っていく姿を他の生徒に見られたくない生徒が出入りするのに使っているそうだ。
「失礼しまーす」
引き戸を開けると、ピンクのワンピースの女性が立ち上がって笑顔を見せる。
「おはようございます。カウンセラーの梶です。里見先生、はじめまして」
「あ、はじめまして。よろしくお願いします」
「じゃ、お話聞かせてくださいね」
ふんわりとしたワンピースと同じ雰囲気の女性だ。見た感じ、水谷先生と同じくらい、30代前半ってところ?
「さっき、お電話でも少し伺いましたけれど、もう一度うかがっていいですか?」
先々週の当番のとき、今週おととい、昨日。笹生さんが門限前の帰寮であることが気になること。門限破りではないが、帰宅部の他の子たちと一緒になるのを避けているように見えたこと。昨日の夕食後、少し話をする時間をとったが、何も話してくれなかったこと。今朝も無表情で、生徒たちの列から離れて登校していたということ。
笹生さんについて、わたしが見たこと、感じていることを話していく。梶さんは、メモを取りながら、それで?とか、避けているように見えたのですねー、とか、こっちが話しやすいタイミングで相槌をうってくれる。
「里見先生は、どうしたいですか?」
わたしがどうしたいか。
梶さんに聞かれて考える。どうしたかったんだろう、わたしは、どうしたいんだろう。
「笹生さんから、話を聞き出したい、ですかね」
にっこり笑いながら頷いて、
「過去と他人は変えられない。という事実があります。変えられるのは、未来と自分だけです。笹生さんが話してくれるかどうかは、笹生さん次第なので、先生に決められることではないです。先生自身が、自分でできることのなかで。どうしたいですか?」
何も答えられない。わたしは一体何がしたかったんだろう。
「里見先生、もしもう一度笹生さんと話をするなら、一つ心掛けてみたら良いかな、と思うことがあります。」
梶さんが立ち上がって、ホワイトボードに
「わたしメッセージ」
と書く。
「笹生さんに話すときに、すべて主語を『わたしは』にするんです」
わたしは、で話す。
「例えば、『わたしは、笹生さんのことを心配しています』とか。あ、例えば『わたしは、笹生さんにこうしてほしい』ってのもありです」
「わたしは、笹生さんと仲良くなりたい、も?」
「そうそれ。簡単でしょ?」
にこっ。
「わたしメッセージで話す、これだけ、チャレンジしてみてください」
ここでチャイムが鳴る。一時間目終わり。
「ありがとうございました」
「ちょっとからだ動かすと、寝不足に効きますよ」
梶さん。ふわっとしてかわいい雰囲気になんか心地よい時間だった。
肩をグルグル回しながら職員室に戻る。
よし。次は授業だ。
今日も授業あるのに、こんな寝不足。とにかく着替えて顔を洗い、朝の健康観察のため、食堂に向かう。
「おはようございまーす」
にっこり笑いながら元気よく入ってくる子。
「おはようございます」
どこかまだ眠そうな目をしてる子。
寮生たちが次々食堂に入ってくる。みんなもう制服姿だ。
笹生さんも入ってきた。廣瀬先生におはようございますを言っている。表情はいつもと変わらず無表情。他の寮生から話し掛けられても、あまり変わらない。
寮長先生が入ってきた。気になることがある日だけ、朝食前に寮に入ってくる。昨日、話は聞けませんでした、と報告しているから、様子を見に来たんだろう。
登校時間が来て、学校にみんなで向かう。笹生さんは、すごく歩くのが速い。みんなの列から離れてズンズン学校に向かって進んでいく。
寝不足かつ昨日からのモヤモヤを抱えたままの状態で職員室に入る。
「おはようございます。昨日何かありましたね」
やっぱり。絶対水谷先生には見抜かれると思ってた。昨日の笹生さんとのことを手短に報告する。
「切り換えを覚えてください。ひとつの気になることのために、体調不良を起こしていては、授業を受ける生徒に失礼です」
耳が痛い。おっしゃるとおりです。おっしゃるとおり過ぎてもう。穴掘ってうずくまりたいくらいです。
「一時間目は開いてるんですね、カウンセリングルーム、行ってみませんか?」
今日は水曜日。非常勤のスクールカウンセラーが出勤する日だ。スクールカウンセラーは、近くの大学病院に勤務する臨床心理士。時間さえあえば、生徒だけでなく、教職員もカウンセリングを受けることができる。でも、そこまでわたし、病んでるわけではないので。
「いや、そこまでではないかなって」
「梶さんは、生徒の心理に詳しいので、アドバイスがもらえるんじゃないかと思ったのですが。里見先生になにか作戦があるなら、試してみてからでも良いとは思いますけど」
カウンセラーからアドバイスをもらう、か。
内線電話でアポを取って、一時間目に面談の時間を割いてもらう。水谷先生が、カウンセラーの名前「梶さん」を知ってたことに少し驚く。
白雪のカウンセリングルームは、教室棟の1階の真ん中、玄関から続く廊下の突き当たりにある。図書室と隣り合っていて、生徒が教室に向かう途中に利用できるためか、他校より利用率が高いらしい。また、図書室の奥にもカウンセリングルームへの扉があって、カウンセリングルームに入っていく姿を他の生徒に見られたくない生徒が出入りするのに使っているそうだ。
「失礼しまーす」
引き戸を開けると、ピンクのワンピースの女性が立ち上がって笑顔を見せる。
「おはようございます。カウンセラーの梶です。里見先生、はじめまして」
「あ、はじめまして。よろしくお願いします」
「じゃ、お話聞かせてくださいね」
ふんわりとしたワンピースと同じ雰囲気の女性だ。見た感じ、水谷先生と同じくらい、30代前半ってところ?
「さっき、お電話でも少し伺いましたけれど、もう一度うかがっていいですか?」
先々週の当番のとき、今週おととい、昨日。笹生さんが門限前の帰寮であることが気になること。門限破りではないが、帰宅部の他の子たちと一緒になるのを避けているように見えたこと。昨日の夕食後、少し話をする時間をとったが、何も話してくれなかったこと。今朝も無表情で、生徒たちの列から離れて登校していたということ。
笹生さんについて、わたしが見たこと、感じていることを話していく。梶さんは、メモを取りながら、それで?とか、避けているように見えたのですねー、とか、こっちが話しやすいタイミングで相槌をうってくれる。
「里見先生は、どうしたいですか?」
わたしがどうしたいか。
梶さんに聞かれて考える。どうしたかったんだろう、わたしは、どうしたいんだろう。
「笹生さんから、話を聞き出したい、ですかね」
にっこり笑いながら頷いて、
「過去と他人は変えられない。という事実があります。変えられるのは、未来と自分だけです。笹生さんが話してくれるかどうかは、笹生さん次第なので、先生に決められることではないです。先生自身が、自分でできることのなかで。どうしたいですか?」
何も答えられない。わたしは一体何がしたかったんだろう。
「里見先生、もしもう一度笹生さんと話をするなら、一つ心掛けてみたら良いかな、と思うことがあります。」
梶さんが立ち上がって、ホワイトボードに
「わたしメッセージ」
と書く。
「笹生さんに話すときに、すべて主語を『わたしは』にするんです」
わたしは、で話す。
「例えば、『わたしは、笹生さんのことを心配しています』とか。あ、例えば『わたしは、笹生さんにこうしてほしい』ってのもありです」
「わたしは、笹生さんと仲良くなりたい、も?」
「そうそれ。簡単でしょ?」
にこっ。
「わたしメッセージで話す、これだけ、チャレンジしてみてください」
ここでチャイムが鳴る。一時間目終わり。
「ありがとうございました」
「ちょっとからだ動かすと、寝不足に効きますよ」
梶さん。ふわっとしてかわいい雰囲気になんか心地よい時間だった。
肩をグルグル回しながら職員室に戻る。
よし。次は授業だ。
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