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3 ひと皮むけて
廣瀬と水谷
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愛莉が原稿用紙とにらめっこしたまま固まっている。
反省文か。
反省しなければいけないのは、わたしだ。
「里見先生、原稿用紙ちょっと頂戴」
「はい。何枚?」
「とりあえず5枚」
愛莉が寮生の付き添いで病院に行ったのは、初めてなんだから。わたしがもっと、フォローしなければいけなかったのだ。
「廣瀬先生、なんでわたし、電話するの忘れたんだと思います?」
「そんなのわかるわけないじゃない」
何を聞くかと思いきや。
「慌てていたから、って言ったら、そうでしょうかって」
「水谷先生に言われたの?」
「はい」
だとしたら。
「たぶん、ヒントならあげられる」
「なんですか」
「愛莉が来るまでに、水谷先生は、主任と授業のことで相談して、指導案を主任の分コピーして、説明して。で、どっちがどのクラスに入るか決めて、授業して。ってやってたね」
「えっ。それがヒント?」
「そ。あとは自分で考えな」
わたしの失敗は、愛莉が電話しててもしてなくても、主任や水谷先生に愛莉の不在を伝えなかったこと。
付きっきりでなくても良いときには、学校に経過報告の電話を入れることを、病院に行かせる前に指導しなかったこと。
非番スタッフに看病の手配をもっと早くすべきだったこと。
愛莉が笹生さんの体調の悪さに誰よりも早く気付いたのは、普段から笹生さんをよく見ていたからだ。そこは素晴らしいと思っている。
いろいろ不手際はあったけど、良いところもあった。よね。
自分の反省文をまとめて、立ち上がると、愛莉が絞り出すように言う。
「廣瀬先生、わたし、早く帰りたいのに。ちゃんと書けるまで何回でも書き直してもらうって言われてて」
半泣き。さすがにかわいそうになってくる。
「ね、寮に電話して、笹生さんの様子聞いてみたら?」
「あ。そうします」
早速電話に飛びついている。心配だよね。早く帰って自分の目で様子、見たいよね。
「熱下がったそうです」
「それは良かった」
水谷先生はいない。たぶん図書室。自分が書いた反省文を持って、水谷先生を探しに行く。
「水谷先生、反省文持ってきました」
「廣瀬先生が?」
図書室で本を探していた水谷先生に、反省文を提出する。
「本日の件は、わたしに非がありました。反省しています。申し訳ありませんでした」
無言で、困ったな、とでもいうような顔でわたしを見ている。
「里見先生に、教師としての責任感を持ってほしいんですよね、水谷先生は」
「ええ」
教師は生徒ひとりにかかりきりになっていてはいけない。熱を出した寮生に付き添っていては、授業が出来ないなら、どうするのか。影響が大きくならないうちに、善後策を練らなければならないのだ。
「すぐに非番スタッフを呼び出せば良かったんです。そうしていれば、里見先生に病院に行かせたとしても、早めに交代することだって出来たはずです。すみません。わたしのミスです」
水谷先生に頭を下げる。その静かな目で見られると、ちょっと落ち着かない気持ちになってくる。
「廣瀬先生、今日、里見先生のかわりに早く帰っていただくことは出来ますか」
「はい」
「教師の本分はなんといっても授業です。教壇に立てないなら、生徒への影響が最小限になるように他の教師でサポートしなければならない。その、サポートをよりよい形で受けるためには、必要な手順があります。それを理解してもらえていなかったのは。わたしの指導が至らなかったせいですね」
水谷先生は、小さくため息をついて、いつものニッコリをわたしに向ける。
「僕も、反省文書きます」
わたしの反省文は受け取らずに、職員室に向かう。教師は生徒とともに成長する。新人指導においても。
反省文か。
反省しなければいけないのは、わたしだ。
「里見先生、原稿用紙ちょっと頂戴」
「はい。何枚?」
「とりあえず5枚」
愛莉が寮生の付き添いで病院に行ったのは、初めてなんだから。わたしがもっと、フォローしなければいけなかったのだ。
「廣瀬先生、なんでわたし、電話するの忘れたんだと思います?」
「そんなのわかるわけないじゃない」
何を聞くかと思いきや。
「慌てていたから、って言ったら、そうでしょうかって」
「水谷先生に言われたの?」
「はい」
だとしたら。
「たぶん、ヒントならあげられる」
「なんですか」
「愛莉が来るまでに、水谷先生は、主任と授業のことで相談して、指導案を主任の分コピーして、説明して。で、どっちがどのクラスに入るか決めて、授業して。ってやってたね」
「えっ。それがヒント?」
「そ。あとは自分で考えな」
わたしの失敗は、愛莉が電話しててもしてなくても、主任や水谷先生に愛莉の不在を伝えなかったこと。
付きっきりでなくても良いときには、学校に経過報告の電話を入れることを、病院に行かせる前に指導しなかったこと。
非番スタッフに看病の手配をもっと早くすべきだったこと。
愛莉が笹生さんの体調の悪さに誰よりも早く気付いたのは、普段から笹生さんをよく見ていたからだ。そこは素晴らしいと思っている。
いろいろ不手際はあったけど、良いところもあった。よね。
自分の反省文をまとめて、立ち上がると、愛莉が絞り出すように言う。
「廣瀬先生、わたし、早く帰りたいのに。ちゃんと書けるまで何回でも書き直してもらうって言われてて」
半泣き。さすがにかわいそうになってくる。
「ね、寮に電話して、笹生さんの様子聞いてみたら?」
「あ。そうします」
早速電話に飛びついている。心配だよね。早く帰って自分の目で様子、見たいよね。
「熱下がったそうです」
「それは良かった」
水谷先生はいない。たぶん図書室。自分が書いた反省文を持って、水谷先生を探しに行く。
「水谷先生、反省文持ってきました」
「廣瀬先生が?」
図書室で本を探していた水谷先生に、反省文を提出する。
「本日の件は、わたしに非がありました。反省しています。申し訳ありませんでした」
無言で、困ったな、とでもいうような顔でわたしを見ている。
「里見先生に、教師としての責任感を持ってほしいんですよね、水谷先生は」
「ええ」
教師は生徒ひとりにかかりきりになっていてはいけない。熱を出した寮生に付き添っていては、授業が出来ないなら、どうするのか。影響が大きくならないうちに、善後策を練らなければならないのだ。
「すぐに非番スタッフを呼び出せば良かったんです。そうしていれば、里見先生に病院に行かせたとしても、早めに交代することだって出来たはずです。すみません。わたしのミスです」
水谷先生に頭を下げる。その静かな目で見られると、ちょっと落ち着かない気持ちになってくる。
「廣瀬先生、今日、里見先生のかわりに早く帰っていただくことは出来ますか」
「はい」
「教師の本分はなんといっても授業です。教壇に立てないなら、生徒への影響が最小限になるように他の教師でサポートしなければならない。その、サポートをよりよい形で受けるためには、必要な手順があります。それを理解してもらえていなかったのは。わたしの指導が至らなかったせいですね」
水谷先生は、小さくため息をついて、いつものニッコリをわたしに向ける。
「僕も、反省文書きます」
わたしの反省文は受け取らずに、職員室に向かう。教師は生徒とともに成長する。新人指導においても。
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