母校に就職したら指導教官が大好きだった先生でした

風花鳴海

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4 それぞれの。

教頭と水谷

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里見は二度目、小西は初めての赤点。
里見は国語は学年1位だが、数学がクラス最下位。小西は数学は学年トップなのに国語がクラス最下位。2人の良いところだけ足せたら、無敵なのだが。
「水谷先生、ちょっと」
教頭に呼ばれる。国語科の僕が担任しているクラスで国語の赤点が出る。これは、かなりマズい事態だ。
「先生のクラスの小西さんですが、期末試験の点、ひどかったわね」
「はい。申し訳ありません」
頭を下げる。生徒の試験の出来が悪い原因は、教える側の指導力不足。それはわかっているのだが、教頭に呼ばれて注意を受けるほどのことだろうか。少しだけ納得いかない。
「で、どう指導する予定ですか?」
「個人面談で、学習量を増やすよう指導しようかと」
「それだけなの?」
それだけ、とは。結局のところ、勉強は数をこなすしかないと思う。読書百編は伊達ではないと。
「分析は?」
分析。はっとする。小西の答案をどこまで読み込んだのか。何に躓いて、点が伸びなかったのか。以前は答案返却の前に、各問題ごとの正解率を出したり、点数が悪い生徒の誤答を読み込んで、なぜそのような解答になってしまったかを考えたりしていた。すべて、指導教官である教頭の教えだ。
しかし、年数を重ねるごとに、それを採点しながらなんとなくではあるが把握出来るようになってきて、丁寧に読み込むことをしなくなってきた。
赤点を取られるようなことになったのは、僕自身が手を抜くようになっていたから。
「申し訳ありません。分析していません」
「何のために試験があるのか、答えなさい」
「生徒が授業をどこまで理解したかをはかるためです」
「あなたは何をはかったというの」
答えられない。手抜きだ。小西の成績が悪い原因は、僕の手抜きにある。
「反省文を提出しなさい。以上」
もう一度頭を下げて席に戻る。反省文を書く前に、やることがある。
職員室を出て、昼休みの教室に向かう。
ここの生徒は基礎学力がついている。つまり、基本的に読解力があるため、国語の試験で赤点を取る生徒はめったにいない。
小西も点は良くないながらも、赤点をとったのは初めてだ。今回の試験のどこが弱点か。全体的に誤答が多いとしか、記憶していない。
「小西さん、ちょっといいですか」
「はい」
廊下に呼び出す。
「期末試験の国語の答案、持っていますか」
返却したのはおととい。家に置いてきていても仕方ないが、万一にかけて聞いてみる。
「持ってます」
「貸してもらえませんか?」
「はい」
席に戻ってすぐに答案を渡してくれる。ありがたい。
「申し訳ありませんが、少しお借りします」
「先生、個人面談はいつですか?」
そうか。個人面談に使うと思って、持ってきていたのか。
「すみません。また声をかけます」
「はい」
小西に答案を借り、今さらながら、誤答を読み直す。現代文は小説が、古典は漢文が全滅。漢字の書き取りでかろうじて零点を逃れた、というところ。
「反省文です」
「はい」
教頭席の前に立ったまま待つ。
「甘い。再提出」
「はい」
突き返された原稿用紙を受け取り、頭を下げて席に戻る。僕は、天狗になっていたのか。
隣の席の高野先生が心配そうに、でも遠慮がちにチラッとだけ僕を見て、自分の仕事に戻る。僕がブラザーで、高野先生の心配を僕がする立場なのに。自分がとても情けない。
もう一度提出したいところだが、ショートホームの時間になる。一旦教室に行かなければならない。
小西の答案をコピーして、教室に向かう。里見の個人面談もまだ出来ていない。
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