母校に就職したら指導教官が大好きだった先生でした

風花鳴海

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4 それぞれの。

水谷と鈴木

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再々提出でようやく反省文から解放されて、小西の指導案を練る。里見の分も考えなくてはならない。今回は2人に増えたから、面談も2人分。やや気が重い。
「水谷先生、どう?今日あたり同期会」
鈴木先生からお誘いがあるのは、極めて珍しい。
「あ、すみません、さっき反省文通ったばかりなので」
「あー、今日もまたビシバシやられてたねー。でも、そういうときこそ、息抜きしないと」
「はあ」
「ま、教頭先生にさらに怒られたらかわいそうだし、俺が許可とってくるわ」
そういうと、教頭席にズカズカ乗り込んでいってしまった。
鈴木先生と僕は同期採用。向こうは修士課程を出ているから、年は2つ上。同期といっても、人生の先輩だし、実際僕の面倒をよくみてくれる。
「教頭先生、わたしに許可を得る必要はありません、だって。何時なら出れそう?」
「あの、これを片付ければすぐに」
「じゃ、終わったら声かけてよ。一緒に出よう」
小西の指導案と、里見の指導案を一つのクリアフォルダーに入れて、引き出しのなかにしまう。机の上の回覧板にすべて目を通して、隣の席に回す。机上に何もない状態にして、鈴木先生に声をかける。
「お待たせしました」
「ん、じゃ行こうか」
教頭=母も、鈴木先生も、僕のことを何でもお見通し。鈴木先生は特にヘコんでる僕を見逃さない。たいていは、そっと声をかけてくれるだけだが、こんなふうに飲みに誘われるのは、もしかしたら初めてかもしれない。
「何飲む?」
「じゃ、生ビールで」
「生中二つと、」
つまみを適当に注文する。
「で。前から気になってたんだけどさ」
ジョッキを置いて鈴木先生がたずねる。
「水谷ちゃんって、ピーマン嫌いだよね」
そこ?そこですか?
「あー、ちょっと幼少期のトラウマでして」
僕がピーマンを嫌いになったいきさつを話すと、鈴木先生は笑うでもなく、ぽつりと
「教頭ってさ、水谷ちゃん叱るときさ、親みたいだよな」
突然言われて、バレたのかと焦る。
「親ってさ、結局子どものこと、好きじゃん。だから、子どもも自分のことを好きだって信じてるよね。だから、どんなにひどいことしても大丈夫だって勘違いしちゃう」
そう言ってつまみを食べて、ビールを流し込む。
「水谷ちゃんもさ、怒られすぎてつらかったら、言いなよ。俺でよけりゃ愚痴も聞くし、出すとこ出した方がよけりゃ、考えるからさ」
あ。パワハラを心配してくれてるのか。
「あ、あの。僕教頭先生に叱られるのは、パワハラとは思ってないので、大丈夫です」
「そうか?でもさ、見てると、他の先生よりすげー当たりがキツい」
「それは、僕が他の先生よりずっと出来が悪いからですよ」
「んなわけねーよ。水谷ちゃんは、ちゃんとしてるよ。若手の中じゃ一番出来てるよ」
たしかに。研究授業でも、他の研修でも。優秀とされることが多い。でも、それは上辺だけのことで、本質的には、仕事の手を抜くような、ダメなやつなのを、的確に教頭だけが見抜いている。だから、叱られる。それだけのことだ。
「自信持て。お前ほど優秀なのはいねーよ」
「ありがとうございます」
でも、鈴木先生が僕のことを心配してくれて、励ましてくれていることは、素直にありがたいし、嬉しい。


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