旅の果てに、終焉を臨む 〜転生した竜と孤独な魔女の異世界旅行記〜

ラム猫

文字の大きさ
9 / 39
第1章 魔女と仲間達

第9話 魔女、お金を得る

しおりを挟む

『お金、お金~いくらになるのかな~』

 リュビアは上機嫌に鼻歌を歌っている。受付の女性の反応から、これらの素材はかなり高額で売れるかもしれない。

 私は換金所の列に並んでいる。素材を渡す場所とお金を貰える場所は別のようだ。交換する場所は広く数人体制で鑑定をしているようなので、順番はすぐに回ってきた。

「次の方、どうぞ」

 前に並ぶ人がいなくなって、私の番になった。カウンターに寄って、持っていた即席かばんをその上に置いた。

「こ、れは……」

 カウンターにいた女性が、私が置いたかばんを見て目を見開いた。

「少々お時間をいただきます。そちらに座ってお待ちください」

 私は頷いて、ソファーに腰かけた。私の即席かばんはカウンターの奥の机に運ばれ、素材が並べられていく。

『そういえば、この世界のお金事情はどんな感じなの? ファンタジー世界だったら、金貨と銀貨とかありそう!』

 リュビアに問いかけられたので、私は横目で肩に乗った小鳥姿の彼女を見た。

『その通り。あるのは金貨、銀貨、銅貨の三つだよ。銅貨百枚で銀貨一枚、銀貨百枚で金貨一枚と同価値になる。指標として、銅貨五枚パン一つ、銀貨十枚で片手剣が買えるくらいだよ。……私がまだ街にいた時のことだから、最近のことは分からないけどね』
『百枚! じゃらじゃらしてかさばりそう』
『かなりかさばるけどそれほど重くはないよ。金貨は重いけど、金貨を大量に持つことはないだろうし』

 旅をする時には金貨も数枚持っておきたいが、そのためにはいくつ依頼をこなさなくてはいけないのだろう。一気に大金を稼げる仕事があればいいのだけど……。

『銅貨一枚で百円だと仮定すると、銀貨一枚が一万円、金貨が百万円! わぁ、金貨を一枚持っているだけでお金持ちだ!』

 リュビアの話を聞いたり時折質問に答えたりしながら待っていると、女性が私の前まできて呼びに来てくれた。立ち上がって、彼女の後に着いていくと、ベテラン鑑定士と思われる男の人が待っていた。

「これらの素材は全てあなた一人で集められたのですか?」

 男の人に聞かれ、私は頷く。

「全て、上級魔物の素材です。質も最上だ。あなたは冒険者なのですか?」
「私は……旅人ですよ」
「そうなのですか……。こちらが、換金したものになります。全部で、銀貨五枚です」

 銀貨五枚。上々だ。リュビアのために、調理器具をいくつか買うこともできるかもしれない。

「この入れ物は、どこかで購入されたものですか?」

 彼は作った即席かばんを指さす。受付嬢の人にも聞かれたが、このかばんには何かあるのだろうか。

「いいえ。私が適当に作ったものになります」
「この素材は、どうされたのですか?」
「そこら辺に落ちていたものを使いました。……これ、何の魔物のものなのですか?」

 ここまできたら、このかばんが目に付けられる理由も察する。使っている素材が、珍しい魔物のものなのだろう。大きな蛇型魔物だろうとは思っていたが、具体的に何なのかは分からなかった。私の目はそこまで肥えていない。受付の女性は、一目見ただけで気づいたということだろうか。

「ヒュドラの抜け殻です」
「……ヒュドラ?」

 男の人の言葉に、私は思わず目を瞬いた。

『ヒュドラって、わたしも聞いたことあるよ。頭がたくさんある蛇でしょ?』

 リュビアがそう呟いた。ヒュドラとは、上級魔物よりも強力で危険度が高い魔物の区分である特級魔物である。特級魔物が街に現れたら最後、間違いなく街が壊滅するだろう。そのくらい、危険な存在である。討伐した者は、初級冒険者であっても一気に上級冒険者になれるとも言われている。

 ヒュドラの抜け殻があったということは、私が転移した場所の近くにいたということになる。フェロスにヒュドラがいることはあるかもしれないが、ヒュドラがいるかもしれないところで私は無防備に眠っていたということになる。

「どのあたりで見つけたのですか? 街に近い場所だと、大変なことになる……」
「フェロスの奥地です。詳しく理由は話せませんが、この街に近い場所ではないかなり遠くの場所ですから安心してください」

 どうしてフェロスの奥地にいたのかと問われたら、答えるのに困る。だが、嘘をついて下手なことを言う方が怪しまれる。

「ヒュドラの皮、貴重品ですよね。このかばん、お渡ししましょうか?」
「ええっ!?」

 私が提案すると、男の人と女性にとても驚かれた。

「ボンの実で接着してるので価値は下がると思いますが、多少は使えるでしょう。あ、もちろんただで、ではありませんよ。適正価格との交換でお願いします」
『ラーシェ、ちゃっかりしてる』

 リュビアがそう言っているが、ここは稼ぎどころだろう。入れ物は別に調達すればいいし、私が持っているよりも他に詳しい人の手に渡る方が、役に立つ。

「勿論、勿論でございます!! 銀貨三十枚でいかがでしょう!」

 おお。思っていたよりも高額だ。だが、こういう時は交渉が大事だと聞いたことがある。

「銀貨三十枚、ですか……」
「ご、五十枚! 五十枚は!?」

 食い気味に男の人がそう言ってくる。私は少し迷う様子を見せただが、気が変わって別のところに持っていかれるかと思われたのだろうか。交渉はそこまで得意じゃないので、ありがたいことだ。

「それでお願いします」
『銀貨五十枚。一気にお金持ちだ!』

 リュビアが喜んでいる。彼女が見つけてくれたものがこんなにも高価格で売れるとは……。料理器具一式をそろえて、いくつか調味料を集めてみてもいいかもしれない。

 換金所の人達が慌ただしく動いている姿を見ていると、周囲の冒険者達の視線を感じた。会話が聞こえていたのだろう。お金を貰ってからも、盗まれないように注意しておく必要がありそうだ。

『入れ物がなくなっちゃったら、お金はどこに入れるの?』
『うーん……。簡易の袋だけもらって、すぐにを買いに行こうか』

 銀貨がたくさん入っているであろう小袋を差し出され、私は感謝の言葉を告げながらそれを受け取った。銀貨では不都合なこともあるので、一つの袋は銅貨百枚にしてもらっている。

「あの、もしよろしければ、あなたのお名前を教えていただけませんか?」

 男の人に問いかけられ、私は軽く微笑んで言った。

「ラーシェリアです」
『肩に乗っているのは、相棒の竜リュビアです』

 リュビアの声は、当然彼らに聞こえてはいない。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

『異世界ごはん、はじめました!』 ~料理研究家は転生先でも胃袋から世界を救う~

チャチャ
ファンタジー
味のない異世界に転生したのは、料理研究家の 私!? 魔法効果つきの“ごはん”で人を癒やし、王子を 虜に、ついには王宮キッチンまで! 心と身体を温める“スキル付き料理が、世界を 変えていく-- 美味しい笑顔があふれる、異世界グルメファン タジー!

神々の愛し子って何したらいいの?とりあえずのんびり過ごします

夜明シスカ
ファンタジー
アリュールという世界の中にある一国。 アール国で国の端っこの海に面した田舎領地に神々の寵愛を受けし者として生を受けた子。 いわゆる"神々の愛し子"というもの。 神々の寵愛を受けているというからには、大事にしましょうね。 そういうことだ。 そう、大事にしていれば国も繁栄するだけ。 簡単でしょう? えぇ、なんなら周りも巻き込んでみーんな幸せになりませんか?? −−−−−− 新連載始まりました。 私としては初の挑戦になる内容のため、至らぬところもあると思いますが、温めで見守って下さいませ。 会話の「」前に人物の名称入れてみることにしました。 余計読みにくいかなぁ?と思いつつ。 会話がわからない!となるよりは・・ 試みですね。 誤字・脱字・文章修正 随時行います。 短編タグが長編に変更になることがございます。 *タイトルの「神々の寵愛者」→「神々の愛し子」に変更しました。

転生してチートを手に入れました!!生まれた時から精霊王に囲まれてます…やだ

如月花恋
ファンタジー
…目の前がめっちゃ明るくなったと思ったら今度は…真っ白? 「え~…大丈夫?」 …大丈夫じゃないです というかあなた誰? 「神。ごめんね~?合コンしてたら死んじゃってた~」 …合…コン 私の死因…神様の合コン… …かない 「てことで…好きな所に転生していいよ!!」 好きな所…転生 じゃ異世界で 「異世界ってそんな子供みたいな…」 子供だし 小2 「まっいっか。分かった。知り合いのところ送るね」 よろです 魔法使えるところがいいな 「更に注文!?」 …神様のせいで死んだのに… 「あぁ!!分かりました!!」 やたね 「君…結構策士だな」 そう? 作戦とかは楽しいけど… 「う~ん…だったらあそこでも大丈夫かな。ちょうど人が足りないって言ってたし」 …あそこ? 「…うん。君ならやれるよ。頑張って」 …んな他人事みたいな… 「あ。爵位は結構高めだからね」 しゃくい…? 「じゃ!!」 え? ちょ…しゃくいの説明ぃぃぃぃ!!

【完結】憧れのスローライフを異世界で?

さくらもち
ファンタジー
アラフォー独身女子 雪菜は最近ではネット小説しか楽しみが無い寂しく会社と自宅を往復するだけの生活をしていたが、仕事中に突然目眩がして気がつくと転生したようで幼女だった。 日々成長しつつネット小説テンプレキターと転生先でのんびりスローライフをするための地盤堅めに邁進する。

3歳で捨てられた件

玲羅
恋愛
前世の記憶を持つ者が1000人に1人は居る時代。 それゆえに変わった子供扱いをされ、疎まれて捨てられた少女、キャプシーヌ。拾ったのは宰相を務めるフェルナー侯爵。 キャプシーヌの運命が再度変わったのは貴族学院入学後だった。

英雄将軍の隠し子は、軍学校で『普通』に暮らしたい。~でも前世の戦術知識がチートすぎて、気付けば帝国の影の支配者になっていました~

ヒミヤデリュージョン
ファンタジー
帝国辺境でただ静かに生き延びたいだけの少年・ヴァン。 彼に正義感はない。あるのは、母が遺したノートに記された、物理法則を応用した「高圧魔力」の理論と、徹底した費用対効果至上主義だけだ。 敵国三千の精鋭が灰燼城に迫る絶望的状況。ヴァンは剣を振るわず、心理戦と補給線攪乱だけで、たった三日で敵軍を撤退させる。 この効率的すぎる勝利は帝国の中枢に届き、彼は最高峰の帝国軍事学院への招待状を手に入れる。 「英雄になりたいわけじゃない。ただ、母の死の真相と父の秘密を知るため、生き残らなきゃならないだけだ」 無口最強の仮面メイド・シンカク、命を取引に差し出した狼耳少女・アイリ。彼は常にコスパの高い道を選び、母の遺したノートの謎、そして生まれて一度も会ったことのない父・帝国大元帥のいる帝都の闇へと踏み込んでいく。 正義も英雄も、損をするなら意味がない。合理主義が英雄譚を侵食していく、反英雄ミリタリー学園ファンタジー。

記憶喪失の私はギルマス(強面)に拾われました【バレンタインSS投下】

かのこkanoko
恋愛
記憶喪失の私が強面のギルドマスターに拾われました。 名前も年齢も住んでた町も覚えてません。 ただ、ギルマスは何だか私のストライクゾーンな気がするんですが。 プロット無しで始める異世界ゆるゆるラブコメになる予定の話です。 小説家になろう様にも公開してます。

不倫されて離婚した社畜OLが幼女転生して聖女になりましたが、王国が揉めてて大事にしてもらえないので好きに生きます

天田れおぽん
ファンタジー
 ブラック企業に勤める社畜OL沙羅(サラ)は、結婚したものの不倫されて離婚した。スッキリした気分で明るい未来に期待を馳せるも、公園から飛び出てきた子どもを助けたことで、弱っていた心臓が止まってしまい死亡。同情した女神が、黒髪黒目中肉中背バツイチの沙羅を、銀髪碧眼3歳児の聖女として異世界へと転生させてくれた。  ところが王国内で聖女の処遇で揉めていて、転生先は草原だった。  サラは女神がくれた山盛りてんこ盛りのスキルを使い、異世界で知り合ったモフモフたちと暮らし始める―――― ※第16話 あつまれ聖獣の森 6 が抜けていましたので2025/07/30に追加しました。

処理中です...