旅の果てに、終焉を臨む 〜転生した竜と孤独な魔女の異世界旅行記〜

ラム猫

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第1章 魔女と仲間達

第18話 天使との出会い

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 ギルドからの依頼を達成してから二日が経った。レオンさんとの約束の日は残り五日に迫っている。ちなみにほしいものは、何も思いついていない。

 昨日は悪性魔力の影響が残っていないかフェロスに行ったが、今日は街を歩くことにした。買い物がメインである。

『ラーシェ、この服可愛いよ! ラーシェに似合いそう!』
『これは……やめておこうかな。服に着せられそうだ』

 今は服を調達しようとしているところである。私は白いローブに紺色のワンピースを着ている。基本ローブを上から羽織るので、買うのは下に着るワンピースになる。自然とローブに合うワンピースを選ぶことになるので、落ち着いた色のものに目が移るのだ。

『じゃあ、これは? ピンク色のワンピース』
『うーん……。ピンクか。私は髪の色がこれだし、ワンピースが目立つんだよね。紺か黒か、あたりがいいかな』
『ちぇー。ラーシェに似合うと思ったのに』

 リュビアは楽しそうに服を見ている。私は着るものにこだわりがないので目立たない地味な服を選びたくなるが、彼女はそうではないらしい。彼女が人型になった時には、好きなように服を買ってあげよう。

 最終的に買ったワンピースは、今よりも少し明るい青色のものだ。私は黒にしようと思ったのだが、リュビアに勧められてこれに決めた。所々に施された小さなビーズが、水面のきらめきを映し出しているように光っており綺麗である。おしゃれなので、レオンさんと会う時にはローブを着ずにこれだけを着ていくのもいいかもしれない。




 服を買い終えたら、旅に必要なものを集めるべく別の店に向かう。通りには人々が絶えず行き交い、熱気と喧騒に包まれている。通りの両脇には様々な店が軒を連ねており、それぞれの個性的な店が客を呼び込んでいる。通りを歩く人々も多様だ。

『賑わっているね。まるでお祭りみたい!』

 リュビアの声は上擦っている。気分が高揚しているのだろう。彼女に食べ歩きができる食べ物でも買おうかと考えていると、楽しそうに話している獣人の冒険者二人とすれ違った。

「なあ、聞いたか? どっかの路地裏に、隠された名店があるんだってよ」
「見つけられるもんにしか見つけられないっていうやつだろ? とにかく飯が美味くて最高らしいじゃん。俺も行きてーなー!」
『とにかく飯が美味い隠された名店、ですって?』

 リュビアが食いついた。彼らは歩いて行ったが、リュビアはその後も彼らが話していた店のことが気になってしかたがないようだ。あまりに彼女が興味津々なので、その店を探してみることにした。賑やかな大通りから抜けて路地裏に入ると、途端に喧騒が遠ざかる。昔はこのように人気のない場所では犯罪が多く起こっていたものだが、今はどうなのだろう。安全ではないことは、今も事実だろう。

 適当に歩いていると、不思議な気配がしたのでそちらに向かう。隠された名店とやらの気配かと思ったが、全く見当違いだった。六歳くらいの少年が道端でうずくまっている。

『あの子は……天使族?』

 リュビアが言う通り、少年の背には翼が生えている。泥や砂で汚れてしまったのか、色は少しくすんでいるが、白色の翼は天使族の象徴だ。

『どうしたのだろう。迷子になっちゃったのかな』

 子どもを放っておくわけにはいかないので、声をかけてみることにした。はぐれているのであれば、親を探さなくてはいけない。

「どうしたの?」

 膝を折って少年と目を合わせるように話しかける。彼はびくりと体を震わせ、ゆっくりと顔を上げた。宝石のようなサファイアブルーの瞳だ。顔は煤汚れていて髪も所々はねているが、顔立ちは整っていてかなり美少年であることが伺える。

「迷子になったの? こんなところに一人でいたら、危ないよ」

 怖がらせないように気を付けたつもりだったが、彼は怯えたような表情をしている。

「私は通りすがりの旅人だよ。あなたに危ないことは一切しないから大丈夫、安心して。……私の言葉は、分かる?」

 できるだけ優しく微笑むことを意識しながら言葉を重ねる。もしかしたら言葉を解すことができないかもしれないという可能性も考えたが、彼は私の言葉にこくりと頷いた。

「あなたはどうしてここにいるの?」

 首を傾げて問いかけると、彼は表情を暗くして俯いてしまった。それがあまりにも悲しそうな顔で、彼は何か訳ありだと確信する。子どもが一人でこんな場所にいるなんて、可能性として考えられるのは、迷い込んだか捨て子かのどちらかだろう。もしかしたらこの子は、後者なのかもしれない。

「嫌なことかもしれないけど、聞かせてほしい。あなたのお父さんとお母さんは、一緒にいるの?」
「…………」

 少年は俯き無言のまま、小さく首を振った。彼の小さな体は今にも消えてしまいそうで頼りない。このまま彼がここにいたら、人攫いに捕まってしまう危険がある。天使族というのはただでさえ珍しいのに、見目が麗しい彼は狙われやすいだろう。

『ねえ、ラーシェ。この子、放っておけないよ』
『私も同じことを考えていたよ。一旦、彼を宿屋に連れて行って、詳しい事情を聞いてみようと思う』

 心配したように声をかけたリュビアに答えながら、少年の顔をじっと見る。彼の服や体の汚れから、彼は数日間一人でいたのだということが分かる。とても辛かっただろう。

「もしあなたが良かったら、私についてきてくれない? 一緒に、ごはんを食べよう。大丈夫、私は絶対にあなたを傷つけないから」

 優しい声を意識して笑いかけ、手を差し出す。少年は瞳を動揺で揺らしながらも、恐る恐る私の手に小さな手を重ねた。冷たいその手を、温めるように包み込む。彼の手を引いて立ち上がったが、彼は歩き出そうとしなかった。どうしたのかを問いかけても、彼は俯いて繋いだ私の手をぎゅっと強く握るだけだ。

 彼は、ここから動きたくないのだろうか。その理由として考えられるのは、人に会いたくないから、かもしれない。天使族の少年が一人で歩いているだけで、人目につく。その中には友好的なものではなく、気分が悪いものも多かったことだろう。私を怖がっていたから、人が怖いのかもしれない。

 私は彼の手を放して、肩に乗っているリュビアを今だけ頭に移動させ、ローブを脱いだ。彼の目はリュビアをじっと見ている。私は脱いだローブを彼の翼を隠すように羽織らせ、丈が長いので調整し、フードを被せた。

「これがあれば、安心だよ」

 彼が頷いたのを確認して、彼の手を再び握る。ちなみに、リュビアは自分で肩に移動していた。
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