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第1章 魔女と仲間達
第25話 魔女、街について知る
しおりを挟む「この街は、魔の森フェロスと隣接しています。魔物の脅威から街を守るために、街全体を囲うように壁があるのですよ。あの壁のすべてに魔物除けの魔石が埋め込まれていて、上空からも侵入できないように強力な結界が張られています。あの高い尖った塔が見えますか? あそこからフェロスの監視を行っているのです。フロンティアの中心があそこです」
ロバートさんの話を聞きながら、通りを歩く。彼が指を向けた箇所には、高い塔が。私は個人的に塔というものはあまり好きではないので近寄ろうとはしなかったが、あれはただの観光名所というわけではないらしい。
「この通りは、何世代にもわたって踏み固められた石畳の大通りです。雨が降ると虹色に輝いているように見えて、綺麗なんですよ。この通り沿いに建つ建物は、基本的に二階建て以上で、一階が店舗や工房で、二階以上が住居や倉庫になっていることが多いです」
「フロンティアは王国でも端に位置しているが、フェロスに訪れる冒険者が多く常に人で栄えている。朝から晩まで活気が絶えない。時折、酒で酔った冒険者が暴れることもあり夜は安全とは言い切れないから、気を付けてくれ」
彼らの話を一番熱心に聞いているのは、リュビアだ。彼女は思念会話で常に相槌を打っている。本人達には聞こえないのが残念だ。私も相槌を打って聞いているが、彼女ほどではないだろう。
「もっともっと、見どころを紹介しますよ! ほら、あそこで大通りを少し曲がった先にあるのが、通称『鍛冶通り』です。街道沿いには、大小様々な鍛冶工房が軒を連ねています。高性能の武器を売っていて、通ったら最後、いつも必要のない武器まで買ってしまうのです。運が良ければ、伝説九の武器と出会うこともできます。水路が特殊で、地下の魔力炉から熱が供給されて、鍛冶師たちがいつでも高温の鉄を扱えるように設計されています。夜になると水路がぼんやりと赤く光るので、幻想的で美しいのですよ」
『へぇ。今のわたしの姿じゃ武器なんか扱えないけど、どんな武器があるのか見てみたいな!』
「もう少し歩いたら、石造りの大きな建物が見えてきます。それは図書館で、昼の王国の中では二番目に大きな図書館なのですよ。先端の水晶は魔導灯で、昼間の間に日の光を吸収して、夜になると街を照らす光を放ちます。図書館でありながら、フロンティアの夜光でもあるのです」
『あ、ちょっと見えてきたあれのことかな? 図書館、行ってみたいな。この世界の本は、どんな感じなんだろう』
「落ち着きたい時には、図書館の隣の庭園に行くといいですよ。人口の庭園で、花が綺麗に咲いています。中央には魔力の噴水があって、魔力で空気を循環させているから常に涼しい風が吹き抜けているので居心地は抜群です。ベンチに座って目を閉じたら、喧騒も遠ざかって水と風の音だけが聞こえてきて、疲れを癒すのに最高の場所ですよ」
『いいね! わたしも、そこでゆっくりしたい。お昼寝とかしたら、気持ちいいんだろうな』
興味深い話を沢山聞いた。特に、図書館が気になる。リュビアも興味を持ったようだし、資料を使ってこの世界についての説明も詳しくできるだろうから、また今度訪れてみることにしよう。
「って、俺ばっか話してしまってますね、ごめんなさい」
「いえ。とても楽しいですよ」
彼におすすめの食事処でも聞こうかと思った時、見覚えのある道に来た。以前、孤児院を訪れた時にこの辺りを通ったのだ。そういえば、孤児院はあれからどうなったのだろう。子ども達は、無事だったのだろうか。
「あ。そういえば、孤児院が人攫いと共謀して子ども達を貴族に売っていたみたいなのですよ。それが発覚したのが、一人の白髪の女性のお陰だったって……もしや、貴女のことですか?」
丁度、考えていたことをロバートさんは口にした。彼らは騎士だから、情報が入っていても不思議ではない。逆に、詳しい話を聞けるかもしれない。
「ヴィルが攫われてしまったので、ね。あれから、孤児院はどうなったのですか?」
「院長の罪は全て暴かれて、実刑判決が下されました。汚職も出るわ出るわで、今は教会が直々に孤児院の運営を担当しています。環境は随分と良くなったそうですよ。子ども達が『あの人にお礼を言いたい』と言っていたそうです」
「ラーシェリアさんは、本当にすごいな。本来、俺達騎士が街の治安を守るべきなのに、あなたが解決してくれた」
私はあやふやに笑みを浮かべ、視線をヴィルに向ける。視線を感じたのか、彼も青い瞳を私に向けた。私が孤児院を救うことができたのは、ヴィルのお陰でもある。結果だけの話なので、人攫い達は決して許さないが。
「子ども達を助けられたなら、良かったですよ。……話は変わりますが、ロバートさんのおすすめのお店を教えていただけませんか?」
「勿論です! 俺の一番のおすすめは、巷では『とにかく飯が美味い隠された名店』だと言われている食事処です。ほんっとうに料理が美味くて、酒も進む進む! 最高ですよ!」
『隠された名店! 行きたい、食べたい!!』
以前冒険者の噂を聞いた時のように、また、リュビアが食いついた。隠された名店という割には隠れていないようにも感じるのだが、これもいい味を出しているのだろう。
「それはどれほど美味しいのか、興味があります。また食べに行ってみますね」
「あ、あなたがよければ、俺達と一緒に食べに行かないか? 俺達が、料金を出すから」
レオンさんの申し出に、私は驚いて彼を見る。一番驚いているのはリュビアだった。彼女は飛んでしまうのではないかと思うくらい、翼を動かしている。
『え! 行きたい、食べたい! わたしこんなだけど、絶対に食べるからね!』
「ぜひ、行きたいです。ですが、お金は自分で出しますよ」
「いや。あなたにお礼をするためにお会いしたのだから、俺達に払わせてほしい。このくらいは、させてもらえないだろうか」
そんな風に言われては、断れなくなる。こちらとしても出してもらえることは嬉しいので、甘えさせてもらうことにしよう。
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