2 / 24
第二話
しおりを挟む
あれから数刻歩いただろうか。
後ろから馬車の音が聞こえてくる。 想定よりも遅いな。
「貴様がユーグスだな。 我らが騎士団の子息を傷付け逃亡した罪を償ってもらう。 大人しく連行されるが良い」
「俺は無実の罪で捕縛される謂れは無いんだけど?」
「罪人は皆そう言う。 致し方ないな、多少は手荒にしても構わん! かかれ!」
大人数の武装した敵勢力相手は初だ。 手が震える。
緊張か? 恐怖か? 悦びか?
先ずは動け!
相手は真剣、こちらは木剣…更には体格の差もある為まともに打ち合えば確実に負ける。
ならば!
駆けて駆けて敵を動かす。
敵同士が密集した所で一旦隙を作る。
大きな隙に対して横凪に振りかぶる騎士、きっと新人なんだろう。 あの騎士の甲冑の肩の留め具の擦れる音で横に凪ぐ事は最初から分かっていた。
だから敵を一か所に寄せた。
結果は同士討ち。
頭を使わない剣士なんて子供の遊戯以下だ。
それすらも出来ないで騎士を名乗るなど言語道断だな。
ここで退いてくれれば俺もこれ以上戦う必要は無いのだが。 早く別の街で身分証を作り宿をとらねばいけないから…。
「き、貴様! 貴様が認めて、捕まっていれば十分な証拠になる! 貴様が無実であろうがなかろうが関係は無いのだ!!!」
そう言う事か。
最初からそのつもりであったか。
ならば俺も全力で相手をするしか!
「話は全て聞かせて貰った。 聞けば無実の少年を捕縛しようとしたそうだな」
「なんだ貴様は!」
追っ手の騎士団が吠える。
「ほう、不正を働きながらも自分よりも階級の高い騎士に対してその態度を取れるのか。 流石だな。 ルーヴァルト家の騎士団にはここで消えて貰うのも良いか」
「消える…だと!? 貴様一人で何が出来…」
俺には分かった。
馬と一心同体になり、舞う様な剣技…もはや剣舞ともいえる其れで先ほどから偉そうな口調で話している奴以外の四肢を落として行く。
「武闘派のルーヴァルト家がこのザマでは私はいつまで経っても隠居出来ないではないか…」
そうぼやいたのもはっきりと聞こえた。
この人は本気では無いのだ。
実力者なんて言う簡単な言葉で済む人間ではない。
何者なのだろうか…。
「ルーヴァルト家騎士団の副団長で相違ないな?」
「は、はい…」
先程までの威勢はどこへ行ったのだろう。
「殺すのは容易だが、処理も面倒だ。 それに子供の前だ。 主の前に連れて行くこととする。 そこで全て洗いざらい吐いて貰う。 そうすれば命だけは助かるやもしれんな?」
「ははぁ!」
俺は威圧感に自分が震えている事に気が付く。
「少年よ、怖がらせてしまったか?」
「大丈夫です」
「強いな。 先ほどの立ち回りも良かった。 目が見えないのだろう? 普通の者なら気付けない程に様々な感覚が鋭いのだな。 このゴミを主の所に届けるついでだ。 街まで送ろう。 馬の背に乗るのは初めてだろう?」
「はい!」
行商人が引いている馬の足音を遠巻きに聞いていたくらいだったのでとても気分が高まっていくのが分かってしまった。
我ながら子供っぽくて恥ずかしい…。
「ははは。 子供らしくていいではないか。 街に着いたら冒険者ギルドと良い宿を教えよう。 不届き者を捕まえる手伝いをしてくれた礼だ少しの金は出させてくれ」
「で、ですが!」
「大人からの好意は受け取っておきなさい?」
「はい…」
初めて人のちゃんと温かみに触れられた気がした瞬間だったのかもしれない。
後ろから馬車の音が聞こえてくる。 想定よりも遅いな。
「貴様がユーグスだな。 我らが騎士団の子息を傷付け逃亡した罪を償ってもらう。 大人しく連行されるが良い」
「俺は無実の罪で捕縛される謂れは無いんだけど?」
「罪人は皆そう言う。 致し方ないな、多少は手荒にしても構わん! かかれ!」
大人数の武装した敵勢力相手は初だ。 手が震える。
緊張か? 恐怖か? 悦びか?
先ずは動け!
相手は真剣、こちらは木剣…更には体格の差もある為まともに打ち合えば確実に負ける。
ならば!
駆けて駆けて敵を動かす。
敵同士が密集した所で一旦隙を作る。
大きな隙に対して横凪に振りかぶる騎士、きっと新人なんだろう。 あの騎士の甲冑の肩の留め具の擦れる音で横に凪ぐ事は最初から分かっていた。
だから敵を一か所に寄せた。
結果は同士討ち。
頭を使わない剣士なんて子供の遊戯以下だ。
それすらも出来ないで騎士を名乗るなど言語道断だな。
ここで退いてくれれば俺もこれ以上戦う必要は無いのだが。 早く別の街で身分証を作り宿をとらねばいけないから…。
「き、貴様! 貴様が認めて、捕まっていれば十分な証拠になる! 貴様が無実であろうがなかろうが関係は無いのだ!!!」
そう言う事か。
最初からそのつもりであったか。
ならば俺も全力で相手をするしか!
「話は全て聞かせて貰った。 聞けば無実の少年を捕縛しようとしたそうだな」
「なんだ貴様は!」
追っ手の騎士団が吠える。
「ほう、不正を働きながらも自分よりも階級の高い騎士に対してその態度を取れるのか。 流石だな。 ルーヴァルト家の騎士団にはここで消えて貰うのも良いか」
「消える…だと!? 貴様一人で何が出来…」
俺には分かった。
馬と一心同体になり、舞う様な剣技…もはや剣舞ともいえる其れで先ほどから偉そうな口調で話している奴以外の四肢を落として行く。
「武闘派のルーヴァルト家がこのザマでは私はいつまで経っても隠居出来ないではないか…」
そうぼやいたのもはっきりと聞こえた。
この人は本気では無いのだ。
実力者なんて言う簡単な言葉で済む人間ではない。
何者なのだろうか…。
「ルーヴァルト家騎士団の副団長で相違ないな?」
「は、はい…」
先程までの威勢はどこへ行ったのだろう。
「殺すのは容易だが、処理も面倒だ。 それに子供の前だ。 主の前に連れて行くこととする。 そこで全て洗いざらい吐いて貰う。 そうすれば命だけは助かるやもしれんな?」
「ははぁ!」
俺は威圧感に自分が震えている事に気が付く。
「少年よ、怖がらせてしまったか?」
「大丈夫です」
「強いな。 先ほどの立ち回りも良かった。 目が見えないのだろう? 普通の者なら気付けない程に様々な感覚が鋭いのだな。 このゴミを主の所に届けるついでだ。 街まで送ろう。 馬の背に乗るのは初めてだろう?」
「はい!」
行商人が引いている馬の足音を遠巻きに聞いていたくらいだったのでとても気分が高まっていくのが分かってしまった。
我ながら子供っぽくて恥ずかしい…。
「ははは。 子供らしくていいではないか。 街に着いたら冒険者ギルドと良い宿を教えよう。 不届き者を捕まえる手伝いをしてくれた礼だ少しの金は出させてくれ」
「で、ですが!」
「大人からの好意は受け取っておきなさい?」
「はい…」
初めて人のちゃんと温かみに触れられた気がした瞬間だったのかもしれない。
0
あなたにおすすめの小説
冤罪で辺境に幽閉された第4王子
satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。
「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。
辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。
転生したら名家の次男になりましたが、俺は汚点らしいです
NEXTブレイブ
ファンタジー
ただの人間、野上良は名家であるグリモワール家の次男に転生したが、その次男には名家の人間でありながら、汚点であるが、兄、姉、母からは愛されていたが、父親からは嫌われていた
勇者パーティーを追放されました。国から莫大な契約違反金を請求されると思いますが、払えますよね?
猿喰 森繁
ファンタジー
「パーティーを抜けてほしい」
「え?なんて?」
私がパーティーメンバーにいることが国の条件のはず。
彼らは、そんなことも忘れてしまったようだ。
私が聖女であることが、どれほど重要なことか。
聖女という存在が、どれほど多くの国にとって貴重なものか。
―まぁ、賠償金を支払う羽目になっても、私には関係ないんだけど…。
前の話はテンポが悪かったので、全文書き直しました。
悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる
竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。
評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。
身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。
没落ルートの悪役貴族に転生した俺が【鑑定】と【人心掌握】のWスキルで順風満帆な勝ち組ハーレムルートを歩むまで
六志麻あさ
ファンタジー
才能Sランクの逸材たちよ、俺のもとに集え――。
乙女ゲーム『花乙女の誓約』の悪役令息ディオンに転生した俺。
ゲーム内では必ず没落する運命のディオンだが、俺はゲーム知識に加え二つのスキル【鑑定】と【人心掌握】を駆使して領地改革に乗り出す。
有能な人材を発掘・登用し、ヒロインたちとの絆を深めてハーレムを築きつつ領主としても有能ムーブを連発して、領地をみるみる発展させていく。
前世ではロクな思い出がない俺だけど、これからは全てが報われる勝ち組人生が待っている――。
ゲームの悪役パパに転生したけど、勇者になる息子が親離れしないので完全に詰んでる
街風
ファンタジー
「お前を追放する!」
ゲームの悪役貴族に転生したルドルフは、シナリオ通りに息子のハイネ(後に世界を救う勇者)を追放した。
しかし、前世では子煩悩な父親だったルドルフのこれまでの人生は、ゲームのシナリオに大きく影響を与えていた。旅にでるはずだった勇者は旅に出ず、悪人になる人は善人になっていた。勇者でもないただの中年ルドルフは魔人から世界を救えるのか。
魔法が使えない落ちこぼれ貴族の三男は、天才錬金術師のたまごでした
茜カナコ
ファンタジー
魔法使いよりも錬金術士の方が少ない世界。
貴族は生まれつき魔力を持っていることが多いが錬金術を使えるものは、ほとんどいない。
母も魔力が弱く、父から「できそこないの妻」と馬鹿にされ、こき使われている。
バレット男爵家の三男として生まれた僕は、魔力がなく、家でおちこぼれとしてぞんざいに扱われている。
しかし、僕には錬金術の才能があることに気づき、この家を出ると決めた。
地味な薬草師だった俺が、実は村の生命線でした
有賀冬馬
ファンタジー
恋人に裏切られ、村を追い出された青年エド。彼の地味な仕事は誰にも評価されず、ただの「役立たず」として切り捨てられた。だが、それは間違いだった。旅の魔術師エリーゼと出会った彼は、自分の能力が秘めていた真の価値を知る。魔術と薬草を組み合わせた彼の秘薬は、やがて王国を救うほどの力となり、エドは英雄として名を馳せていく。そして、彼が去った村は、彼がいた頃には気づかなかった「地味な薬」の恩恵を失い、静かに破滅へと向かっていくのだった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる