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第563話 未来に向けて
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「もう一度聞く、このコロニー共和国に神の使徒が現れただと…」
「は…い…」
戦場から部下に連れられ引き上げた後、急いで10の国の首都へ戻ってきました。
「それで将軍であるタタンが戦場で気を失って恥を晒したのだな…」
「マ…マーボ様、雲より高い所から地上へ捨てられたのです。あんな事をされれば誰でも…」
飛んでいる奇跡に驚く間もなく、ものすごい速さで迫る地面に恐怖し、自軍だけではなく敵国にも私の失態を晒してしまったのです。
「え~い、うるさい! 今回の戦は優勢だったはずではなかったのか?」
「そ…それは…」
あのシャルルという者がいなければ、あのまま近隣の村まで押し込めたはず…。
「それで、その使徒とやらはどこへ行ったのだ?」
「部下の話ですと、コミット殿と一緒に5の国の首都へ向かったようだと…」
「馬鹿が…、どうしてこちらへ連れてこなかった。連れ帰ってきたらお前の代わりにしたものを…」
「そ…そんな…」
「マーボ様、使徒様は一見格好良くてたくましくて男性の理想像のような方ですが、恐ろしい方なのです」
あの上空で放された時の顔が忘れられません。
呆れたように冷めた目で私を見ると、ゴミのように振り払われたのです。
しがみ付こうとしましたが、まるで子供の手を払うような力でした。
「馬鹿馬鹿しい…」
「そ…それに見たこともない大きな【火壁】で戦場を分断されたのです」
あんな魔法で攻撃されればマオと紹介された女性の言うように我々は簡単に消滅させられたでしょう。
「……まずいな」
「は…い?」
「5の国の統治者、ヤンマーは『聖なる地』を守ると言う建前で領土拡大を考える傲慢な男だ」
5の国の分際でおこがましい。
何が『聖なる地』を中心にこのコロニー共和国を統一だ…。
そんなもの10の国の私が統一すれば良い事なのだ。
「……あれがそのシャルルという使徒を使ってこちらへ攻めてくるかもしれないぞ」
「そんな事は…」
恐ろしい方ですが争いを好まれない方だということは理解しています。
「5の国との国境は注意しておくように。そのシャルルとやらがどこの国にも属さない内に密かに探し出してこちらへ連れてくるのだ」
5の国より男性の多い10の国に属するのならシャルルという者も納得するだろう。
「ハハッ…」
とにかくあの場で使徒様を見た間者に命令しておくか…。
XX XY
数日掛けて村や町、都市を通り首都に到着しました。
今のローマン帝国と比べるとどこも恐ろしく生活水準が低く、食べ物も美味しくありません。
食料が無いと言う訳ではなく、争いがある為か何もかもが必要最低限な感じだったのです。
それに女性達も艶やかさや瑞々しさがありません。
食事時や就寝時には『シャルルの塔』に帰ろうかと思いましたが、【収納】にはフランが定期的に補充してくれる食べ物がいっぱいあったので、少し我慢してアイとマオだけの三人で旅を楽しむことにしたのです。
(首都はさすがに立派で活気もあるな…)
宿や食事に期待できるかも…。
時間があればゆっくり散策したいところです。
この数日の間にコミットさんから色々教わりました。
男性が魔法を使えることに驚きましたが、それ以上に男性の精子は何回か採取でき、“誕生の儀”が義務化されている事に驚きました。
以前、バルトリア王国でフリーノース領のマーガレットとエリカが攫われる事になった政策がここでは施行されているのです。
精子が複数回採取でき、人口や男女比率が国力となるとすれば、義務であっても異を唱える者はいないのかもしれません。
その政策もあって、女性は男性に求められると卵子の提供をしなければならず、パートナーという概念はローマン帝国などより薄れているようです。
(女性を囲むための首輪も理解できないけれど…)
しかしながら、少しずつ男性の精子が減ってきたり、魔法が弱かったり使えない男性が増えてきているそうです。
魔法が使えない、精子の採れない男性たちは一生肉体労働なのだとか…。
確かに村や町、都市にいる男性達の中には肉体労働をしている者達を見かけました。
この国では女性より男性の方が立場が上のようですが、魔法が使えない、精子も採れないとなると女性より下になるようです。
そう考えると男性は優遇されている分かなり格差があるようで、もしローマン帝国の男性がこちらに来れば寿命は更に短くなるかもしれません。
体力も無いからね…。
いや、むしろ強制労働で体力の向上になるか…?
首都に着くと直接王城に連れてこられましたが、グレイス達のお城より若干小ぶりで豪華さも劣っており、警備の者達が多いためか物々しい雰囲気です。
その警備の者達はほとんど女性で、女性の職業の中では一番優遇されているそうです。
(メイドが優遇されるローマン帝国やバルトリア王国とは大違いだな…)
「シャルル様、こちらです。この中に…」
「あぁ」
(ここは謁見の間か…)
外は女性ばかりでしたが、中に入ると男性ばかりのようです。
目線の先には統治者らしき人物がいるのが分かり、周りには臣下や衛兵と思われる男性達が並んでいます。
(僕なら女性達に側にいてもらいたいな…)
「ヤンマー様、使徒様をお連れしました」
「うむ、報告は聞いているが…、神の使徒とは…な…」
「ヤ…ヤンマー様、間違いありません。10の国のタタン殿が上空から放たれ、死ぬところだったのです」
(コミットさん、殺すつもりなんてなかったよ。見てたでしょ…)
「そうか…」
「……」
ヤンマー様は静かに僕達を眺めていますが何か機嫌が良くなさそうです。
「そなたが、争いを止めてくれたのだな」
「初めまして、シャルルと申します。こちらはアイとマオといいます」
「我はヤンマー。この5の国の統治者だ。それにしても…今までに見たこともないぐらい麗しい女性達だな…」
(ほぉ~、コミットさんが使徒だと紹介した僕を蔑ろにしてアイとマオを見て機嫌を直すとは…)
見た所20代前後か…。
僕からすれば大した事はありませんが、ローマン帝国の同年代男性より力強く感じます。
「ゴホンッ…(こっちを見ろ!)」
「さ…さて、シャルルとやら、どうして争いを止めたのだ?」
「どうして? 女性達が傷付く姿を見たくなかったからです。争いをして何か嬉しいことがあるのですか?」
「10の国の領土を奪える機会だったからな」
「こちらが負けたかもしれませんよ」
実際に5の国内で争っていたと思うけれど…。
「そんな事は無~い!!」
シ―――ン。
ヤンマー様が叫び、謁見の間が静まります。
周りの臣下や衛兵たちは動じず口を閉じています。
叫ぶのは日常茶飯事なのかな?
「では…、そなたの力で10の国の領土を奪って欲しい」
「ヤ、ヤンマー様、何を言って…!?」
ザワザワ…。
「黙れ、コミット。お前もタタン殿が死にかけている内に攻撃を仕掛ければ良かったのだ」
「あの状況でそんな事出来る訳が…。それに使徒様の魔法に抗うことなんて出来る訳がありません」
「そうか、だったらコミット…、お前は首だ!」
「なっ!?」
(ハァ~? 何を言っているんだこいつは…。それにどうしてコミットさんが…?)
ヤンマー様のご乱心か?
謁見の間にいる臣下達もさすがに動揺が隠せないようです。
「どうだ、シャルルとやら、そなたのお節介が迷惑をかけたのだ。協力出来ないのならそちらの女性を我に献上するのだな…」
(こいつ、頭がおかしいな…、うん、クズ決定)
《ご主人様、我慢の限界です》
《マスター、どこかに埋めてきましょうか》
《まぁまぁ、二人とももう少し我慢…》
「これほど艶やかで瑞々しい二人なら、『聖なる国』の統治者でもある我の精子で“誕生の儀”をすればさぞ立派な子供が生まれてくるだろう。次の世代に相応しい!」
「ヤンマー様、冗談はそこまでにしてください。私も怒ることがあるのですよ」
大体、アイとマオは妖精体なので受胎できないのです。
身体を消してもらうかと思いましたがもうしばらく反応を見ます。
「ふんっ、我に逆らうとは…仕方がない。衛兵たち、シャルルという者だけ捕らえて牢へ連れていけ!」
「「「「えっ…ハッ!」」」」
「ヤンマー様、使徒様に馬鹿な真似は…」
「コミットは首だと言ったろ。黙っておけ! お前も牢に入れられたいのか?」
「大体、魔法は凄いかもしれないが使徒なんている訳がないだろう。ここにいる者達で一斉に取り押さえれば抵抗も出来まい」
「そうだ、魔力封じの魔道具を着けておけ」
「……コミットさん、どうしてこの馬鹿が統治者なの?」
「大体、統治者ってどうやって決めているの? 共和国だから国民主権だよね? もしかして継承?」
国民主権であればここまで酷くならないと思うけれど…。
「我を馬鹿だと~! 早く…」
「う・る・さ・い、黙れ…」
さすがに僕も煩わしくなって少し殺気を込めて静かに言い返します。
ヤンマーは大きな玉座に押し潰されそうな体勢で固まり、僕を捕えようとしていた衛兵たちもその場で立ち止まっています。
「こ…この数代は継承ですね。この地にご先祖様たちが現れた時は民が選んだ者が統治していたと聞いています」
(何だかもう共和国でもないな…)
やっぱりローマン帝国から移住してきたんだな…。
「それで、このボケは統治者としてどうなの?」
「ヤンマー様は風属性で統治者の中では強く…」
「ハッハ、シャルルとやら、我を侮ったな…。見えない刃で切り刻んでやろう」
「はぁ~、要するに【風刃】ね…」
僕がそう答えるや否や【風刃】を発動させてきました…が、もちろん身体強化のおかげで防がなくても傷付くことはありません。
あえて手でひらひらと弾くようなそぶりを見せます。
「我の魔法を弾くだと…」
「弱すぎるだろ…。【風刃】はこれくらいじゃないと」
バババッ…バシュッ!
本気になるとミンチになってしまうので着飾った服と背後の玉座だけを細切れにします。
「ヒィ~~~、ァバババ……」
「ハハハ…、小さい男性器だね。統治者としての器も小さいけれど…。まともなのは玉だけか…」
比較的大きめの玉の上にちょこんと親指ほどの男性器が付いています。
やはり男性器の退化は始まっていたんだな…。
「な…何を~、玉が大きい方が精子がたくさん採れるんだぞ」
「はいはい…、まぁどっちみち強さとは関係ないから…」
「聞け、このクズに変わりたった今から5の国の統治者には僕がなる!」
「ヤンマーは強制労働に処す」
「そんなことさせるか~!」
「コミット、そのカスを連行しろ!」
再度【風刃】を放ってきますが痛くもかゆくもありません。
「ハハーッ」
「それに、この場にいる政務官及び衛兵たちにも命ず。まずは女性の私物化は直ちに廃止、魔力封じの首輪の装着は犯罪者に限ることにする。そのカスにも一応付けておけ」
「“誕生の儀”は女性の同意のもととすること。即日施行だ!」
「ハハーッ(×全員)」
「一件落着かな…」
コミット達が出払った謁見の間に僕達三人が取り残されています。
「ご主人様の即断即決は素敵でしたよ」
「でも、“誕生の儀”に女性の同意を求めるとなると、人口減になってしまうのでは…?」
「全ての男性が無理やり卵子を提供させていたとは思いたくはないけれど、いざとなれば報奨ありきで政策を継続させるよ」
すぐに変わることはないかもしれませんが、こちらの女性はローマン帝国などと違って、可能な限り“誕生の儀”が出来る事を理解しているのです。
まずは女性の人権回復が優先です。
「マスター、コロニー共和国自体を統治しないとまずいのでは…」
「はぁ~、やっぱりそうかな…」
もし、他の12の国々もヤンマーと同じような者が統治していたら大変なのは分かります。
「まぁ、他の国を見てからかな…。ゆっくりやるよ」
何でこんな事になっているんだ…。
僕がこのコロニー共和国を統治するにしてもまだまだ先の話でしょう。
この瞬間マーボの運命は確約されました。
シャルルと対峙した時、10の国が5の国に吸収されるのは遠くない未来になったのです。
XX XY
「じゃあ、僕たちはそろそろ帰るよ」
「ど…どちらにですか!? こちらに住まわれるのでは?」
「知っているだろ…」
自分で作った新しい玉座に座りながら右手の人差し指を天に向けます。
そのポーズを見たコミットは改めて何かをつぶやきながら頭を下げるのです。
あの後、居城にあったヤンマーの痕跡を一掃し、パートナーや子供達も当面の金銭を渡して放逐しました。
もちろん彼女たちに罪はありませんが、情けを掛けたり、囲うつもりもありません。
そして首都に緊急の御触れを出させた後、僕が新たな統治者だと国民の前に姿を見せていたのです。
女性達から歓声が沸き、一部で男性から逃れるための反乱が起きたそうですが、僕の命令により罪になることもありませんし、元々女性の方が魔法や体力も強く、人口も多いのですぐに収まったそうです。
女性にかなわなかった男性達はお城に不満を言いに来ているようですが、後はコミット達に任せたいと思います。
《もう完全に使徒様ですね》
《5の国の女性は皆マスターの物です》
《マオ、その考えはあのカスと同じじゃない…》
しかしながら、どのみちこの国でもパートナーは必要になってくるのです。
居城内のむさくるしい男性達もどうにかしたいし…。
ローマン帝国やバルトリア王国では僕の生活圏に男性はいなかったからなぁ~。
漂う男性の臭いに拒否反応が起きそうです。
現在のお城も格好悪いし造り直そうか…、それとも『聖なる山』の近くに遷都しようかな…。
「シャルル様、また来てくださるのですよね?」
「もちろん、時々になるけれど統治者になったからね。それにこの国の生い立ちにも興味があるし…」
この5の国の先祖は、ほぼ“風の谷”の領民だったはずです。
いずれこちらの人間を再び“風の谷”へ戻すことも可能なのです。
「コミット、今後この国は男女平等とする。ヤンマーのような考え方の者や能のない者はそれこそ辞めてもらうからね。有能な女性は政務官や側近にもするからそのつもりで。今のところコミットを将軍兼代理とするけれど、能力が無ければ代えるからね…」
「ハハ―ッ」
戦場で会った時はタタンのようにふてぶてしい態度でしたが、今は借りてきた猫のように従順です。
これくらい言っておけば立場を理解するでしょう。
「【転移門】…」
「なっ、何ですかそれは!?」
「あぁ、飛んで帰ろうかと思ったけれど、こっちの方が楽だから…」
「じゃあ、国中に僕の指示を伝えておくように…。名前と同じでコミットしてね…」
「はい…? シャルル様達が消えた…!?」
大きな扉を開かれると中は黒光りした異質な空間のようで、その中に入って行かれると扉ごと一瞬で消えてしまわれました。
「やはり使徒様なのは間違いないか…(ボソッ)」
使徒様のおかげで将軍としての首も繋がったわけだし、先代のおかげで統治者になった馬鹿なヤンマーもいなくなりました。
私の名前がどうかしたのだろうか…?
とにかく私も急いで女性達の意志を尊重しなければ…。
次にシャルル様が来られるまでに、反抗する有力者達も一掃しておかないといけないでしょう。
争いのない時代が本当に来る…?
この国の未来が変わりそうな予感です。
「は…い…」
戦場から部下に連れられ引き上げた後、急いで10の国の首都へ戻ってきました。
「それで将軍であるタタンが戦場で気を失って恥を晒したのだな…」
「マ…マーボ様、雲より高い所から地上へ捨てられたのです。あんな事をされれば誰でも…」
飛んでいる奇跡に驚く間もなく、ものすごい速さで迫る地面に恐怖し、自軍だけではなく敵国にも私の失態を晒してしまったのです。
「え~い、うるさい! 今回の戦は優勢だったはずではなかったのか?」
「そ…それは…」
あのシャルルという者がいなければ、あのまま近隣の村まで押し込めたはず…。
「それで、その使徒とやらはどこへ行ったのだ?」
「部下の話ですと、コミット殿と一緒に5の国の首都へ向かったようだと…」
「馬鹿が…、どうしてこちらへ連れてこなかった。連れ帰ってきたらお前の代わりにしたものを…」
「そ…そんな…」
「マーボ様、使徒様は一見格好良くてたくましくて男性の理想像のような方ですが、恐ろしい方なのです」
あの上空で放された時の顔が忘れられません。
呆れたように冷めた目で私を見ると、ゴミのように振り払われたのです。
しがみ付こうとしましたが、まるで子供の手を払うような力でした。
「馬鹿馬鹿しい…」
「そ…それに見たこともない大きな【火壁】で戦場を分断されたのです」
あんな魔法で攻撃されればマオと紹介された女性の言うように我々は簡単に消滅させられたでしょう。
「……まずいな」
「は…い?」
「5の国の統治者、ヤンマーは『聖なる地』を守ると言う建前で領土拡大を考える傲慢な男だ」
5の国の分際でおこがましい。
何が『聖なる地』を中心にこのコロニー共和国を統一だ…。
そんなもの10の国の私が統一すれば良い事なのだ。
「……あれがそのシャルルという使徒を使ってこちらへ攻めてくるかもしれないぞ」
「そんな事は…」
恐ろしい方ですが争いを好まれない方だということは理解しています。
「5の国との国境は注意しておくように。そのシャルルとやらがどこの国にも属さない内に密かに探し出してこちらへ連れてくるのだ」
5の国より男性の多い10の国に属するのならシャルルという者も納得するだろう。
「ハハッ…」
とにかくあの場で使徒様を見た間者に命令しておくか…。
XX XY
数日掛けて村や町、都市を通り首都に到着しました。
今のローマン帝国と比べるとどこも恐ろしく生活水準が低く、食べ物も美味しくありません。
食料が無いと言う訳ではなく、争いがある為か何もかもが必要最低限な感じだったのです。
それに女性達も艶やかさや瑞々しさがありません。
食事時や就寝時には『シャルルの塔』に帰ろうかと思いましたが、【収納】にはフランが定期的に補充してくれる食べ物がいっぱいあったので、少し我慢してアイとマオだけの三人で旅を楽しむことにしたのです。
(首都はさすがに立派で活気もあるな…)
宿や食事に期待できるかも…。
時間があればゆっくり散策したいところです。
この数日の間にコミットさんから色々教わりました。
男性が魔法を使えることに驚きましたが、それ以上に男性の精子は何回か採取でき、“誕生の儀”が義務化されている事に驚きました。
以前、バルトリア王国でフリーノース領のマーガレットとエリカが攫われる事になった政策がここでは施行されているのです。
精子が複数回採取でき、人口や男女比率が国力となるとすれば、義務であっても異を唱える者はいないのかもしれません。
その政策もあって、女性は男性に求められると卵子の提供をしなければならず、パートナーという概念はローマン帝国などより薄れているようです。
(女性を囲むための首輪も理解できないけれど…)
しかしながら、少しずつ男性の精子が減ってきたり、魔法が弱かったり使えない男性が増えてきているそうです。
魔法が使えない、精子の採れない男性たちは一生肉体労働なのだとか…。
確かに村や町、都市にいる男性達の中には肉体労働をしている者達を見かけました。
この国では女性より男性の方が立場が上のようですが、魔法が使えない、精子も採れないとなると女性より下になるようです。
そう考えると男性は優遇されている分かなり格差があるようで、もしローマン帝国の男性がこちらに来れば寿命は更に短くなるかもしれません。
体力も無いからね…。
いや、むしろ強制労働で体力の向上になるか…?
首都に着くと直接王城に連れてこられましたが、グレイス達のお城より若干小ぶりで豪華さも劣っており、警備の者達が多いためか物々しい雰囲気です。
その警備の者達はほとんど女性で、女性の職業の中では一番優遇されているそうです。
(メイドが優遇されるローマン帝国やバルトリア王国とは大違いだな…)
「シャルル様、こちらです。この中に…」
「あぁ」
(ここは謁見の間か…)
外は女性ばかりでしたが、中に入ると男性ばかりのようです。
目線の先には統治者らしき人物がいるのが分かり、周りには臣下や衛兵と思われる男性達が並んでいます。
(僕なら女性達に側にいてもらいたいな…)
「ヤンマー様、使徒様をお連れしました」
「うむ、報告は聞いているが…、神の使徒とは…な…」
「ヤ…ヤンマー様、間違いありません。10の国のタタン殿が上空から放たれ、死ぬところだったのです」
(コミットさん、殺すつもりなんてなかったよ。見てたでしょ…)
「そうか…」
「……」
ヤンマー様は静かに僕達を眺めていますが何か機嫌が良くなさそうです。
「そなたが、争いを止めてくれたのだな」
「初めまして、シャルルと申します。こちらはアイとマオといいます」
「我はヤンマー。この5の国の統治者だ。それにしても…今までに見たこともないぐらい麗しい女性達だな…」
(ほぉ~、コミットさんが使徒だと紹介した僕を蔑ろにしてアイとマオを見て機嫌を直すとは…)
見た所20代前後か…。
僕からすれば大した事はありませんが、ローマン帝国の同年代男性より力強く感じます。
「ゴホンッ…(こっちを見ろ!)」
「さ…さて、シャルルとやら、どうして争いを止めたのだ?」
「どうして? 女性達が傷付く姿を見たくなかったからです。争いをして何か嬉しいことがあるのですか?」
「10の国の領土を奪える機会だったからな」
「こちらが負けたかもしれませんよ」
実際に5の国内で争っていたと思うけれど…。
「そんな事は無~い!!」
シ―――ン。
ヤンマー様が叫び、謁見の間が静まります。
周りの臣下や衛兵たちは動じず口を閉じています。
叫ぶのは日常茶飯事なのかな?
「では…、そなたの力で10の国の領土を奪って欲しい」
「ヤ、ヤンマー様、何を言って…!?」
ザワザワ…。
「黙れ、コミット。お前もタタン殿が死にかけている内に攻撃を仕掛ければ良かったのだ」
「あの状況でそんな事出来る訳が…。それに使徒様の魔法に抗うことなんて出来る訳がありません」
「そうか、だったらコミット…、お前は首だ!」
「なっ!?」
(ハァ~? 何を言っているんだこいつは…。それにどうしてコミットさんが…?)
ヤンマー様のご乱心か?
謁見の間にいる臣下達もさすがに動揺が隠せないようです。
「どうだ、シャルルとやら、そなたのお節介が迷惑をかけたのだ。協力出来ないのならそちらの女性を我に献上するのだな…」
(こいつ、頭がおかしいな…、うん、クズ決定)
《ご主人様、我慢の限界です》
《マスター、どこかに埋めてきましょうか》
《まぁまぁ、二人とももう少し我慢…》
「これほど艶やかで瑞々しい二人なら、『聖なる国』の統治者でもある我の精子で“誕生の儀”をすればさぞ立派な子供が生まれてくるだろう。次の世代に相応しい!」
「ヤンマー様、冗談はそこまでにしてください。私も怒ることがあるのですよ」
大体、アイとマオは妖精体なので受胎できないのです。
身体を消してもらうかと思いましたがもうしばらく反応を見ます。
「ふんっ、我に逆らうとは…仕方がない。衛兵たち、シャルルという者だけ捕らえて牢へ連れていけ!」
「「「「えっ…ハッ!」」」」
「ヤンマー様、使徒様に馬鹿な真似は…」
「コミットは首だと言ったろ。黙っておけ! お前も牢に入れられたいのか?」
「大体、魔法は凄いかもしれないが使徒なんている訳がないだろう。ここにいる者達で一斉に取り押さえれば抵抗も出来まい」
「そうだ、魔力封じの魔道具を着けておけ」
「……コミットさん、どうしてこの馬鹿が統治者なの?」
「大体、統治者ってどうやって決めているの? 共和国だから国民主権だよね? もしかして継承?」
国民主権であればここまで酷くならないと思うけれど…。
「我を馬鹿だと~! 早く…」
「う・る・さ・い、黙れ…」
さすがに僕も煩わしくなって少し殺気を込めて静かに言い返します。
ヤンマーは大きな玉座に押し潰されそうな体勢で固まり、僕を捕えようとしていた衛兵たちもその場で立ち止まっています。
「こ…この数代は継承ですね。この地にご先祖様たちが現れた時は民が選んだ者が統治していたと聞いています」
(何だかもう共和国でもないな…)
やっぱりローマン帝国から移住してきたんだな…。
「それで、このボケは統治者としてどうなの?」
「ヤンマー様は風属性で統治者の中では強く…」
「ハッハ、シャルルとやら、我を侮ったな…。見えない刃で切り刻んでやろう」
「はぁ~、要するに【風刃】ね…」
僕がそう答えるや否や【風刃】を発動させてきました…が、もちろん身体強化のおかげで防がなくても傷付くことはありません。
あえて手でひらひらと弾くようなそぶりを見せます。
「我の魔法を弾くだと…」
「弱すぎるだろ…。【風刃】はこれくらいじゃないと」
バババッ…バシュッ!
本気になるとミンチになってしまうので着飾った服と背後の玉座だけを細切れにします。
「ヒィ~~~、ァバババ……」
「ハハハ…、小さい男性器だね。統治者としての器も小さいけれど…。まともなのは玉だけか…」
比較的大きめの玉の上にちょこんと親指ほどの男性器が付いています。
やはり男性器の退化は始まっていたんだな…。
「な…何を~、玉が大きい方が精子がたくさん採れるんだぞ」
「はいはい…、まぁどっちみち強さとは関係ないから…」
「聞け、このクズに変わりたった今から5の国の統治者には僕がなる!」
「ヤンマーは強制労働に処す」
「そんなことさせるか~!」
「コミット、そのカスを連行しろ!」
再度【風刃】を放ってきますが痛くもかゆくもありません。
「ハハーッ」
「それに、この場にいる政務官及び衛兵たちにも命ず。まずは女性の私物化は直ちに廃止、魔力封じの首輪の装着は犯罪者に限ることにする。そのカスにも一応付けておけ」
「“誕生の儀”は女性の同意のもととすること。即日施行だ!」
「ハハーッ(×全員)」
「一件落着かな…」
コミット達が出払った謁見の間に僕達三人が取り残されています。
「ご主人様の即断即決は素敵でしたよ」
「でも、“誕生の儀”に女性の同意を求めるとなると、人口減になってしまうのでは…?」
「全ての男性が無理やり卵子を提供させていたとは思いたくはないけれど、いざとなれば報奨ありきで政策を継続させるよ」
すぐに変わることはないかもしれませんが、こちらの女性はローマン帝国などと違って、可能な限り“誕生の儀”が出来る事を理解しているのです。
まずは女性の人権回復が優先です。
「マスター、コロニー共和国自体を統治しないとまずいのでは…」
「はぁ~、やっぱりそうかな…」
もし、他の12の国々もヤンマーと同じような者が統治していたら大変なのは分かります。
「まぁ、他の国を見てからかな…。ゆっくりやるよ」
何でこんな事になっているんだ…。
僕がこのコロニー共和国を統治するにしてもまだまだ先の話でしょう。
この瞬間マーボの運命は確約されました。
シャルルと対峙した時、10の国が5の国に吸収されるのは遠くない未来になったのです。
XX XY
「じゃあ、僕たちはそろそろ帰るよ」
「ど…どちらにですか!? こちらに住まわれるのでは?」
「知っているだろ…」
自分で作った新しい玉座に座りながら右手の人差し指を天に向けます。
そのポーズを見たコミットは改めて何かをつぶやきながら頭を下げるのです。
あの後、居城にあったヤンマーの痕跡を一掃し、パートナーや子供達も当面の金銭を渡して放逐しました。
もちろん彼女たちに罪はありませんが、情けを掛けたり、囲うつもりもありません。
そして首都に緊急の御触れを出させた後、僕が新たな統治者だと国民の前に姿を見せていたのです。
女性達から歓声が沸き、一部で男性から逃れるための反乱が起きたそうですが、僕の命令により罪になることもありませんし、元々女性の方が魔法や体力も強く、人口も多いのですぐに収まったそうです。
女性にかなわなかった男性達はお城に不満を言いに来ているようですが、後はコミット達に任せたいと思います。
《もう完全に使徒様ですね》
《5の国の女性は皆マスターの物です》
《マオ、その考えはあのカスと同じじゃない…》
しかしながら、どのみちこの国でもパートナーは必要になってくるのです。
居城内のむさくるしい男性達もどうにかしたいし…。
ローマン帝国やバルトリア王国では僕の生活圏に男性はいなかったからなぁ~。
漂う男性の臭いに拒否反応が起きそうです。
現在のお城も格好悪いし造り直そうか…、それとも『聖なる山』の近くに遷都しようかな…。
「シャルル様、また来てくださるのですよね?」
「もちろん、時々になるけれど統治者になったからね。それにこの国の生い立ちにも興味があるし…」
この5の国の先祖は、ほぼ“風の谷”の領民だったはずです。
いずれこちらの人間を再び“風の谷”へ戻すことも可能なのです。
「コミット、今後この国は男女平等とする。ヤンマーのような考え方の者や能のない者はそれこそ辞めてもらうからね。有能な女性は政務官や側近にもするからそのつもりで。今のところコミットを将軍兼代理とするけれど、能力が無ければ代えるからね…」
「ハハ―ッ」
戦場で会った時はタタンのようにふてぶてしい態度でしたが、今は借りてきた猫のように従順です。
これくらい言っておけば立場を理解するでしょう。
「【転移門】…」
「なっ、何ですかそれは!?」
「あぁ、飛んで帰ろうかと思ったけれど、こっちの方が楽だから…」
「じゃあ、国中に僕の指示を伝えておくように…。名前と同じでコミットしてね…」
「はい…? シャルル様達が消えた…!?」
大きな扉を開かれると中は黒光りした異質な空間のようで、その中に入って行かれると扉ごと一瞬で消えてしまわれました。
「やはり使徒様なのは間違いないか…(ボソッ)」
使徒様のおかげで将軍としての首も繋がったわけだし、先代のおかげで統治者になった馬鹿なヤンマーもいなくなりました。
私の名前がどうかしたのだろうか…?
とにかく私も急いで女性達の意志を尊重しなければ…。
次にシャルル様が来られるまでに、反抗する有力者達も一掃しておかないといけないでしょう。
争いのない時代が本当に来る…?
この国の未来が変わりそうな予感です。
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これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。
転生したら王族だった
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異世界に転生した若い男の子レイニーは、王族として生まれ変わり、強力なスキルや魔法を持つ。彼の最大の願望は、人間界で種族を問わずに平和に暮らすこと。前世では得られなかった魔法やスキル、さらに不思議な力が宿るアイテムに強い興味を抱き大喜びの日々を送っていた。
レイニーは異種族の友人たちと出会い、共に育つことで異種族との絆を深めていく。しかし……
知識スキルで異世界らいふ
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転生してから、ステータスを見てみると、風属性と回復属性だけ適性が10もあった。この世界では、5が最大と言われていた。俺の異世界転生は、どうなってしまうんだ。
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