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1986年秋「特急しおさい3号」
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私は自分でも言うのもなんだが勉強系はよくできる。
スポーツ系はまあ中の上だが勉強は何でもどんどん覚えられる。
小2にして割り算まではでき四桁の足し算位なら暗算でもでき、それにわりかし
好奇心旺盛で体も精神面も小4くらいにあったと思う。
そんな息子を信頼してか小2の9月下旬、千葉は銚子に出かけようとなったが、父は私に
「お前ひとりで特急列車に乗ってみるか?」
と言ってきた。
しょうゆ工場の見物と漁港を見て犬吠埼の灯台を見て、外川に行って、美味しい魚を食べ
ようというのだ。
なかなかいいコースだ。
後で知ったのだが、その年か前年か放送していたNHKの連続テレビ小説に影響され、一度
銚子に父は行ってみたかったらしい。
で、小2で一人で特急列車に乗るというのもなかなか凄いものだ。
私は即座に
「イエス!」
と言った。
当日は一応一人で暇しないように漫画を三冊くらいカバンに入れた。
また昼ご飯はサンドイッチと水筒を持たされ、確かポッキーか何かお菓子を一つ忍ばせた。
途中の買い食いだけは禁止。
だがそんなのはどうでもいい。
千葉方面の電車に乗るのは記憶の限り初めてだ。
京浜東北線で東京まで行き、総武線の地下ホームに向かうがなんかやたら深い。
当時は地下鉄でも最も深いところだったらしい。
そして東京発銚子行特急「しおさい3号」が10時半にはもう停車していて、俺が座席に
着くのを見届けてから母親は離れていった。
一人になって不安を少しでも感じたかと言うと記憶にないからワクワク感のほうがあった
のだろう。
銚子駅に着けば改札口に父が待っている予定だ。
10時45分だったかな?定刻通りに特急しおさいが発車する。
隣のホームには外房線直通の特急「わかしお」も停車していたが、車体は「しおさい」と
同じ183系の国鉄特急型でクリーム色に赤いラインが入る代表的な国鉄特急の象徴の一つだ。
すぐ地上に出て錦糸町駅に止まる。
そこから次の千葉までは比較的距離があるせいか、車内放送で停車駅と到着時刻がアナウ
ンスされる。
気になったのは複々線を走りながらあんまり早く走っているように感じないことだ。
それでも新小岩・市川、そして千葉県第二の都市「船橋」駅や津田沼などの主要駅を
かっ飛ばす姿は爽快だ。
稲毛を通過してしばらくすると
「間もなく千葉に到着です。内房線五井・木更津方面、外房線大網・茂原・勝浦方面はお乗り
換えです。千葉を出ますと次は佐倉に停車します」
という放送が入った。
左手には大きな学校のようなものが見えた。
後日「千葉大学」だということがわかった。
千葉駅の前で線路が色々分かれていき、「しおさい3号」は8番線に入線した。
千葉では少々客の入れ替えがあった。
乗車率は70%くらいだったろうか?
千葉を出ると内房線・外房線が分かれていくのを見ながら線路は複線になる。
またノロノロ動いてる感じだったが次の東千葉を通過すると加速していく。
四街道を過ぎるとそれまでは住宅地ばっかりだったのが急に田園風景になった。
一気に田舎ぽくなっていく。
佐倉に到着すると同時に上りホームを特急が通過していくのが見えた。
あちらも183系だが鹿島線・成田線を走る「あやめ」号であった。
佐倉駅は当時「しおさい」は停車するが「あやめ」は通過であったようだ。
佐倉は駅構内に機関車みたいのが見えてホームではアイスクリームの立ち売りしてるのが
窓から見えた。
(アイスクリーム食べたい・・・)
と思ったが許されない。
水筒の麦茶で我慢したのを覚えている。
列車は佐倉を出ると再び田舎風景を進むが、ここで成田線と別れる。
しかし「総武本線」が単線で「成田線」が複線なので「本線」の名が泣きそうだ。
そしてしばらく並走したが、しおさい号は山の草むらに突入するかのように単線を進み、
次の停車駅八街を目指す。
スピードは明らかに特急にしては遅い。
特に風景にも真新しい者はなくなったので漫画を読みだす。
ただ成東では東金線の分岐が見たくて注目。
単線だけあって何と次の松尾駅(時刻表では通過扱い)に停車。
普通列車相手ならスレ違いは特急優先のはずだが特急同士なら上りのほうが優先らしい。
それにしても海が全く見えねー!!
田園風景と平地のありふれた風景で特に面白みはない。
ただ旭駅をでるとしばらくして山の中を走ってる感じになってちょっと「お?」と感じ
たくらいだ。
そしてまた平地に出ると左手のほうから線路が見えてきた。
佐倉で分岐した成田線と再合流だ。
加速して松岸駅を通過し、間もなく終点の銚子についた。
ホームの先端には銚子電鉄の小さな車両が見える上に何となく醤油の香りがした気がした。
改札口には父親がいたが、母がいない。
そういえば東京駅まで一緒にいてどうしたんだ?
と疑問に思うと、ニコニコして母が隣に立った。
やはり小2一人で何かあっては、と母は次の車両に乗っていたらしい。
なんだ詰まんないの!
<完>
スポーツ系はまあ中の上だが勉強は何でもどんどん覚えられる。
小2にして割り算まではでき四桁の足し算位なら暗算でもでき、それにわりかし
好奇心旺盛で体も精神面も小4くらいにあったと思う。
そんな息子を信頼してか小2の9月下旬、千葉は銚子に出かけようとなったが、父は私に
「お前ひとりで特急列車に乗ってみるか?」
と言ってきた。
しょうゆ工場の見物と漁港を見て犬吠埼の灯台を見て、外川に行って、美味しい魚を食べ
ようというのだ。
なかなかいいコースだ。
後で知ったのだが、その年か前年か放送していたNHKの連続テレビ小説に影響され、一度
銚子に父は行ってみたかったらしい。
で、小2で一人で特急列車に乗るというのもなかなか凄いものだ。
私は即座に
「イエス!」
と言った。
当日は一応一人で暇しないように漫画を三冊くらいカバンに入れた。
また昼ご飯はサンドイッチと水筒を持たされ、確かポッキーか何かお菓子を一つ忍ばせた。
途中の買い食いだけは禁止。
だがそんなのはどうでもいい。
千葉方面の電車に乗るのは記憶の限り初めてだ。
京浜東北線で東京まで行き、総武線の地下ホームに向かうがなんかやたら深い。
当時は地下鉄でも最も深いところだったらしい。
そして東京発銚子行特急「しおさい3号」が10時半にはもう停車していて、俺が座席に
着くのを見届けてから母親は離れていった。
一人になって不安を少しでも感じたかと言うと記憶にないからワクワク感のほうがあった
のだろう。
銚子駅に着けば改札口に父が待っている予定だ。
10時45分だったかな?定刻通りに特急しおさいが発車する。
隣のホームには外房線直通の特急「わかしお」も停車していたが、車体は「しおさい」と
同じ183系の国鉄特急型でクリーム色に赤いラインが入る代表的な国鉄特急の象徴の一つだ。
すぐ地上に出て錦糸町駅に止まる。
そこから次の千葉までは比較的距離があるせいか、車内放送で停車駅と到着時刻がアナウ
ンスされる。
気になったのは複々線を走りながらあんまり早く走っているように感じないことだ。
それでも新小岩・市川、そして千葉県第二の都市「船橋」駅や津田沼などの主要駅を
かっ飛ばす姿は爽快だ。
稲毛を通過してしばらくすると
「間もなく千葉に到着です。内房線五井・木更津方面、外房線大網・茂原・勝浦方面はお乗り
換えです。千葉を出ますと次は佐倉に停車します」
という放送が入った。
左手には大きな学校のようなものが見えた。
後日「千葉大学」だということがわかった。
千葉駅の前で線路が色々分かれていき、「しおさい3号」は8番線に入線した。
千葉では少々客の入れ替えがあった。
乗車率は70%くらいだったろうか?
千葉を出ると内房線・外房線が分かれていくのを見ながら線路は複線になる。
またノロノロ動いてる感じだったが次の東千葉を通過すると加速していく。
四街道を過ぎるとそれまでは住宅地ばっかりだったのが急に田園風景になった。
一気に田舎ぽくなっていく。
佐倉に到着すると同時に上りホームを特急が通過していくのが見えた。
あちらも183系だが鹿島線・成田線を走る「あやめ」号であった。
佐倉駅は当時「しおさい」は停車するが「あやめ」は通過であったようだ。
佐倉は駅構内に機関車みたいのが見えてホームではアイスクリームの立ち売りしてるのが
窓から見えた。
(アイスクリーム食べたい・・・)
と思ったが許されない。
水筒の麦茶で我慢したのを覚えている。
列車は佐倉を出ると再び田舎風景を進むが、ここで成田線と別れる。
しかし「総武本線」が単線で「成田線」が複線なので「本線」の名が泣きそうだ。
そしてしばらく並走したが、しおさい号は山の草むらに突入するかのように単線を進み、
次の停車駅八街を目指す。
スピードは明らかに特急にしては遅い。
特に風景にも真新しい者はなくなったので漫画を読みだす。
ただ成東では東金線の分岐が見たくて注目。
単線だけあって何と次の松尾駅(時刻表では通過扱い)に停車。
普通列車相手ならスレ違いは特急優先のはずだが特急同士なら上りのほうが優先らしい。
それにしても海が全く見えねー!!
田園風景と平地のありふれた風景で特に面白みはない。
ただ旭駅をでるとしばらくして山の中を走ってる感じになってちょっと「お?」と感じ
たくらいだ。
そしてまた平地に出ると左手のほうから線路が見えてきた。
佐倉で分岐した成田線と再合流だ。
加速して松岸駅を通過し、間もなく終点の銚子についた。
ホームの先端には銚子電鉄の小さな車両が見える上に何となく醤油の香りがした気がした。
改札口には父親がいたが、母がいない。
そういえば東京駅まで一緒にいてどうしたんだ?
と疑問に思うと、ニコニコして母が隣に立った。
やはり小2一人で何かあっては、と母は次の車両に乗っていたらしい。
なんだ詰まんないの!
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