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1993年夏、「気になる分岐駅」への旅
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この年は中3の私には「高校受験」が控えているが、勉強はかなりの自信があって
やるべきことは自分の中では最低限こなしていて、今でも首都圏内では有名な某
進学塾でも、
「今でいうなら県立湘南・千葉・浦和高校、都立日比谷高校クラス」でも合格率
70%以上は模試で安定で叩きだしていたし、別に大学受験が勝負だから最悪それ
らの一個下(今なら都立戸山・県立柏陽・多摩・大宮・船橋)クラスでも全然
構わないという、中3夏にしてよく言えばわかっていて大局的に見ている、悪く
言えば舐めてる奴だったので夏休み、部活も引退すると
「三日くらいは電車の小旅行をしよう」
と決めていた。
勿論真面目に塾の宿題とかも考えていた時期だから(笑)、あくまで日帰りで行ける
小旅行限定であった。
そこでテーマは
「心惹かれる分岐駅」
であった。
昔から時刻表を見ると、普通列車しか停車しないようだが、大きな線が二つか三つ
分かれている交通の要衝みたいな駅に興味があった。
具体的には、安積永盛、越前花堂、近江塩津、辰野、備中神代、佃、夜明など。
しかし東北や九州などに行く時間も金もない。
そこで首都圏近辺で見ていると、「蘇我」はもうすでに大きい駅であるようだから
興味湧かず、意外に時刻表見ていても「これは」という分岐駅はない。
さらに紐解くと
「上菅谷」「宝積寺」「香取」「松岸」まで絞られていった。
悩んだ挙句、今回は「香取」に決定した。
比較的近いので何かあっても戻ってこられるだろうという安直な考えだ。
当時はインターネットで事前に調べるとか便利なものはまだない。
去年「特別快速エアポート成田」に乗った慣れも手伝って、とりあえず、横浜駅
から「快速成田空港行」に乗って成田駅で後ろの「鹿島神宮行」に乗り換える。
去年は乗った、新線の「成田線」が右に曲がって直進するのを見ながら、今度は
「佐原・銚子・潮来・鹿島神宮方面」の成田線を進む。
実に田園風景と下総台地を走っている感じで単調に進む感じだ。
「久住」「滑河」といかにもローカルで一時間に一本しか電車が来ない風景の駅
を見ながら初めて若干不安をよぎった。
(そういえば香取駅って何が周辺にあるんだろう?)
自分の予定ではこの電車で香取に着いたら降りて、駅周辺のどっか喫茶店か何か
で二時間以上時間潰してから、
「香取始発」になっている電車で夜に横浜に戻るつもりであった。
佐原駅に着いたときややホッとした。
駅も大きく見えて、駅前の様子も地方都市ながら活気がある駅に見えて次が目的
の香取駅だからだ。
香取はその名の通り有名な香取神宮にも近い(徒歩30分かかるとは後で知ったが)。
だが佐原を出た電車はしばらく街中を進むとすぐ田園風景を走った。
佐原から離れるごとにもろにローカル感が溢れる。
「次は香取です。成田線の小見川・笹川・銚子方面は乗り換えです」
とアナウンスが出るがどう見ても周りはさっきの佐原駅とは違う。
香取駅に着いた。
(何だ?ここは??)
香取駅は二面三線の形だけ見れば折り返し設備や、待ち合わせ・退避も出来る駅
だが、ホームは屋根もなく、エスカレーターとかそういうものももちろんなく、
自動販売機すらない!
そしてふざけたことに駅舎何て立派なものは・・・・なく、何と貨車を改造した
だけの安直なものであった。
勿論無人駅である。
乗車証明を出すオレンジ色の何か機械がある。
押してみると、ピッピガガガー、と音がして一枚切符くらいの大きさの紙が出て
きた。
駅前は・・・勿論何もない(笑)。
ロータリーぽいものがあるが周囲に営業しているような店は、個人商店で何を売っ
てるんだかよく分からない店が一軒で後は何もなく、住宅がポツリポツリあり、
自転車が数台止まっていて、タクシーは停留してないが駅前にタクシーを呼ぶ電話
番号と会社名が添えてあった。
降りた人は俺以外地元客二名でその方たちはさっさと行ってしまう(当たり前だが)。
喫茶店どころか、マクドナルドも松屋もセブンイレブンも本屋も何もないw。
こんなところに二時間もいられんわ。
と思いながら駅の時刻表を見ると、次の上り電車まで余裕で50分以上もある。
そこで少し散歩して探検してみた。
下り方面に移動すると、踏切が一つあり、そこで目を凝らすと鹿島線と成田線の
分岐地点が良く見える。
こういう田舎のローカル線だけど実はそこそこ大きい路線が分岐している風景は
好きだ。
持ってきた愛用の一眼レフでシャッターを切る。
もう一度駅に行って跨線橋を上ると二度びっくりした。
まずは遠目にさっきの分岐地点辺りを見るとかすかに、だがはっきりと分岐線が
見えたが時刻表では上り下りとも旅客電車は来る予定がないのに踏切の警報機が
鳴った。
驚いて暫く下り方面を見ていると(下り側の警報機が先になったから下り側から
何か接近すると予想)、鹿島線側から貨物列車が走ってきて、香取駅に侵入すると
いったん停車した。
上りのほうは大迷惑なことに警報機が鳴りっぱなしである。
やがて1分ほど停車したのちに貨物列車は佐原方面に動き出し走っていった。
(こんなローカル線に貨物列車来るんだな)
と思ったが、もともと鹿島(神宮)は住友金属はじめ、鹿島臨海工業地域で
あり、貨物需要が多いんだなと気付いた。
そして次に驚いたのはその直後、まもなく成田線方面からくる上り電車で帰宅
するために跨線橋を降りようとすると、カブトムシがいたことだ。
しかも立派な角のオス。
もう時刻的夕方で陰が差している場所で幾らか涼しくなってる場所とはいえ、
普通にカブトムシがいるのにびっくりした。
どうせ短い命でかわいそうだからそっとしておいたが、流石田舎のローカル駅は
横浜駅や戸塚とは訳が違う。
これらの駅で見た虫と言えば、蛾とかゴキブリ位だw。
さて、汗だくで駅前に一台あった自動販売機で買った冷たい(もう温くなったが)
コーラだけが命綱でほうほうのていで帰宅したのだった。
でもやっぱり田舎の分岐駅っていいよな。
私は大人になって更に自分で金を使って自由に色んな所に行けると、近江塩津、
夜明、津幡、篠ノ井、宝積寺などの分岐駅途中下車を敢行するのであった。
<完>
やるべきことは自分の中では最低限こなしていて、今でも首都圏内では有名な某
進学塾でも、
「今でいうなら県立湘南・千葉・浦和高校、都立日比谷高校クラス」でも合格率
70%以上は模試で安定で叩きだしていたし、別に大学受験が勝負だから最悪それ
らの一個下(今なら都立戸山・県立柏陽・多摩・大宮・船橋)クラスでも全然
構わないという、中3夏にしてよく言えばわかっていて大局的に見ている、悪く
言えば舐めてる奴だったので夏休み、部活も引退すると
「三日くらいは電車の小旅行をしよう」
と決めていた。
勿論真面目に塾の宿題とかも考えていた時期だから(笑)、あくまで日帰りで行ける
小旅行限定であった。
そこでテーマは
「心惹かれる分岐駅」
であった。
昔から時刻表を見ると、普通列車しか停車しないようだが、大きな線が二つか三つ
分かれている交通の要衝みたいな駅に興味があった。
具体的には、安積永盛、越前花堂、近江塩津、辰野、備中神代、佃、夜明など。
しかし東北や九州などに行く時間も金もない。
そこで首都圏近辺で見ていると、「蘇我」はもうすでに大きい駅であるようだから
興味湧かず、意外に時刻表見ていても「これは」という分岐駅はない。
さらに紐解くと
「上菅谷」「宝積寺」「香取」「松岸」まで絞られていった。
悩んだ挙句、今回は「香取」に決定した。
比較的近いので何かあっても戻ってこられるだろうという安直な考えだ。
当時はインターネットで事前に調べるとか便利なものはまだない。
去年「特別快速エアポート成田」に乗った慣れも手伝って、とりあえず、横浜駅
から「快速成田空港行」に乗って成田駅で後ろの「鹿島神宮行」に乗り換える。
去年は乗った、新線の「成田線」が右に曲がって直進するのを見ながら、今度は
「佐原・銚子・潮来・鹿島神宮方面」の成田線を進む。
実に田園風景と下総台地を走っている感じで単調に進む感じだ。
「久住」「滑河」といかにもローカルで一時間に一本しか電車が来ない風景の駅
を見ながら初めて若干不安をよぎった。
(そういえば香取駅って何が周辺にあるんだろう?)
自分の予定ではこの電車で香取に着いたら降りて、駅周辺のどっか喫茶店か何か
で二時間以上時間潰してから、
「香取始発」になっている電車で夜に横浜に戻るつもりであった。
佐原駅に着いたときややホッとした。
駅も大きく見えて、駅前の様子も地方都市ながら活気がある駅に見えて次が目的
の香取駅だからだ。
香取はその名の通り有名な香取神宮にも近い(徒歩30分かかるとは後で知ったが)。
だが佐原を出た電車はしばらく街中を進むとすぐ田園風景を走った。
佐原から離れるごとにもろにローカル感が溢れる。
「次は香取です。成田線の小見川・笹川・銚子方面は乗り換えです」
とアナウンスが出るがどう見ても周りはさっきの佐原駅とは違う。
香取駅に着いた。
(何だ?ここは??)
香取駅は二面三線の形だけ見れば折り返し設備や、待ち合わせ・退避も出来る駅
だが、ホームは屋根もなく、エスカレーターとかそういうものももちろんなく、
自動販売機すらない!
そしてふざけたことに駅舎何て立派なものは・・・・なく、何と貨車を改造した
だけの安直なものであった。
勿論無人駅である。
乗車証明を出すオレンジ色の何か機械がある。
押してみると、ピッピガガガー、と音がして一枚切符くらいの大きさの紙が出て
きた。
駅前は・・・勿論何もない(笑)。
ロータリーぽいものがあるが周囲に営業しているような店は、個人商店で何を売っ
てるんだかよく分からない店が一軒で後は何もなく、住宅がポツリポツリあり、
自転車が数台止まっていて、タクシーは停留してないが駅前にタクシーを呼ぶ電話
番号と会社名が添えてあった。
降りた人は俺以外地元客二名でその方たちはさっさと行ってしまう(当たり前だが)。
喫茶店どころか、マクドナルドも松屋もセブンイレブンも本屋も何もないw。
こんなところに二時間もいられんわ。
と思いながら駅の時刻表を見ると、次の上り電車まで余裕で50分以上もある。
そこで少し散歩して探検してみた。
下り方面に移動すると、踏切が一つあり、そこで目を凝らすと鹿島線と成田線の
分岐地点が良く見える。
こういう田舎のローカル線だけど実はそこそこ大きい路線が分岐している風景は
好きだ。
持ってきた愛用の一眼レフでシャッターを切る。
もう一度駅に行って跨線橋を上ると二度びっくりした。
まずは遠目にさっきの分岐地点辺りを見るとかすかに、だがはっきりと分岐線が
見えたが時刻表では上り下りとも旅客電車は来る予定がないのに踏切の警報機が
鳴った。
驚いて暫く下り方面を見ていると(下り側の警報機が先になったから下り側から
何か接近すると予想)、鹿島線側から貨物列車が走ってきて、香取駅に侵入すると
いったん停車した。
上りのほうは大迷惑なことに警報機が鳴りっぱなしである。
やがて1分ほど停車したのちに貨物列車は佐原方面に動き出し走っていった。
(こんなローカル線に貨物列車来るんだな)
と思ったが、もともと鹿島(神宮)は住友金属はじめ、鹿島臨海工業地域で
あり、貨物需要が多いんだなと気付いた。
そして次に驚いたのはその直後、まもなく成田線方面からくる上り電車で帰宅
するために跨線橋を降りようとすると、カブトムシがいたことだ。
しかも立派な角のオス。
もう時刻的夕方で陰が差している場所で幾らか涼しくなってる場所とはいえ、
普通にカブトムシがいるのにびっくりした。
どうせ短い命でかわいそうだからそっとしておいたが、流石田舎のローカル駅は
横浜駅や戸塚とは訳が違う。
これらの駅で見た虫と言えば、蛾とかゴキブリ位だw。
さて、汗だくで駅前に一台あった自動販売機で買った冷たい(もう温くなったが)
コーラだけが命綱でほうほうのていで帰宅したのだった。
でもやっぱり田舎の分岐駅っていいよな。
私は大人になって更に自分で金を使って自由に色んな所に行けると、近江塩津、
夜明、津幡、篠ノ井、宝積寺などの分岐駅途中下車を敢行するのであった。
<完>
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