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2008年近江塩津駅

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 私は度々書いてきた通り、
「分岐駅」
が好きだ。
 それも大きな駅ではない。
 特急など優等列車は全てかほぼ通過する。
 にもかかわらず時刻表などにはマークとかで着/発などで記されるような駅
である。
 北から言えば、北海道の白石駅、青森の川部駅、福島の安積永盛駅、千葉の
香取駅、栃木の宝積寺駅、神奈川の国府津駅・・・などである。
 西日本側でも木津川駅や伯耆大山や備中神代や夜明(残念ながら日田彦山線
が廃止になったが)などがあげられる。
 そんななかでも滋賀県の近江塩津は是非この目で見てみたい駅であった。
 北陸本線と湖西線という大きな幹線が合流する駅にして滋賀県最北の駅、しか
し敦賀駅と言う大部分の特急が停車する駅が近いせいか特急はすべて通過。
 にもかかわらず当駅発着の列車が数本設定されるところはどんな地元か?
 と気になった。
 2008年夏、一旦敦賀に出て、是非買っておきたかった「鯖街道寿司」弁当を
購入し、新疋田を過ぎ近江塩津駅のホームに降りた。
 山間の間に開けた小さな平野というのかそういうひなびた場所にあった。
 ホームは二面四線。
 ホームの幅はやや狭い。
 しかし敦賀方面を見ると真っすぐ線路が伸びていて、目には見えないがやが
て滋賀と福井の県境の山を越えるトンネルがあろうことは想像がつく。
 日本最大の湖琵琶湖の北端はここよりもう少し南にあるが、ホーム階段から
下に降りて全ての特急通過駅らしい暗めの細い通路を潜り抜け西側の改札口か
ら出ると駅前にはそこそこ大き目な道路が横切っていて、住宅がぽちぽち
とある。
 人は少ない。
 そして改札出て右手に、私の好きそうな立ち食いうどん?の店があった。
 ずいぶん趣がある。
 私は鯖寿司を持っているにも限らず、そこでうどんと稲荷ずしを購入した。
 都会に比べたら全然利用客も少なそうなこの駅で採算採れるのだろうか?
 とか野暮ったいこと考えながらうどんと稲荷ずしを頂く。
 旅情も味を増幅させているのかもしれないが美味しかった。
 大阪・京都方面から来た新快速が停車中で私はこれに乗って米原から新幹線
で帰京する予定だが、その横を湖西線からきた特急サンダーバードが比較的
低速で通過して敦賀方面に向かっていく。
 二度と来ないかもしれない近江塩津駅の風景を目に焼き付けながら米原に
向けて旅立つのであった。
 なお、2023年現在、調べてみるとこの近江塩津駅構内のうどん屋は撤退し
たという情報を見た。
 私の青春の思い出の一つはかなたのものになっていった。

                         <完>
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