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2025年2月1日より
トランプ関税
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表面的に見れば時折トランプ大統領は
「経済音痴なのではないか?」
と思われることもある。
しかし彼は根っからのビジネスマンであり少なくともバイデン前大統領よりは
経済的感覚は鋭い。
しかし超マクロ的な経済的概念はしばしば無いのか?と思われることも確か
である。
勿論今回発動した「カナダ・メキシコへ25%関税、中国に10%の関税措置」
のことである。
時折経済音痴な人は
「国の経済が苦しいならジャンジャン一万円札を刷って国庫の資金に充てれば
いいじゃん」
ということを言う。
そんな小学生でも簡単に思いつきそうなことは近現代ならず、近世以前のまだ
貨幣経済が明治以降ほど発展してなかった日本でも行っている。
例えば江戸時代の元禄時代、五代将軍徳川綱吉は学問を重んじ、朝廷などへ
の忠節として寺社の修築や母桂昌院へ高い官位を賜れるように献金などをして
きた結果、初代将軍家康と二代将軍秀忠までは豊臣秀吉を凌駕するくらい金銀
を貯め込んでいたがそれを大きく吐き出して幕府の財政は苦しくなっていった。
その際に勘定奉行荻原重秀の意見を取り入れて金貨に大きく銀を混ぜることで
金かの質を落とす代わりにその出目で金貨を多く流通させた。
しかし質の落とした金貨の信用度は低くなり、人々はインフレに苦しめられた。
因みにこの荻原を激しく憎んだ新井白石は六代将軍徳川家宣に何度も荻原の
罪を言上しついに彼を失墜させると金貨を元の良質な金貨に戻した(しかしこの
極端な戻しも有効な策ではなかった)。
トランプの関税を大幅に引き上げる策はこれとよく似ている。
「アメリカの巨大な貿易赤字を解消するならアメリカに多く輸出してくる国とか
アメリカから儲けている国から高い関税取って自国の利益にすればいいじゃん」
という単純な発想である。
まあ、それで通るならどこの国も我先にと関税を釣り上げていくわけだが実際
そうならずに一時は世界各地の近隣国や地域同士で寧ろ高い関税をかけないこと、
自由貿易協定を結ぶ動きがトレンドであり、国際化社会に寄与したのだ。
トランプの政策は「反グローバル社会」であり、他国に不利を強いてでもアメ
リカに頼らなければ彼らも困るであろう、と足元を見ているつもりのアメリカ
ファースト政策の基本であり、自信を持っているだろう(まあ、意図的にはった
りかましておいて様子見てみようというのが真実に近いだろうが)。
他国からアメリカの輸入品に高い関税をかけたらどうなるか?
例えばトヨタ車に高い関税がつけられ、今までは2万ドルで買えた新車が、関税
のせいで3万ドルになってしまったとする。一方自国の自動車会社のフォードの
新車はライバルトヨタ車の同レベルと比べて2万2000ドルで買えたとする。
アメリカ国民は当然、トヨタ車を買いにくくなり代わりにフォードの車を買おう
とするであろう。
「じゃあ、やっぱりトランプの政策でアメリカに良くなるじゃないか?」
と思われるかもしれないが、当然他国も対抗策としてアメリカからの輸入品に高い
関税を付ける。
そうすると今度はアメリカの輸出企業の成績が悪化していくことになる。
また時間が経てばアメリカの内需向けの製品を創ったりやサービスを行う企業も
海外からの高い輸入品を原料にして製品を製造せねばならなくなりいずれは国内
産業の自国民向けの製品やサービスも値上げされていくしかない。
企業は製造コストが高くなればそれを売って利益を上げて従業員の給与に報いる
ならば価格を上げるしか殆ど術はない。日本企業のように
「お客様は神様。だから値上げしたら嫌われて売れなくなる」
という精神は欧米にはそれほどない(なくもない)。
結局はトランプ関税は時間が経てば国内のインフレが進む形で子民生活を苦しめ
る可能性が高くなる。
そんなことを知らないトランプか?いやそんなことはあるまい。
高い関税を付けると脅して、実際口だけでないところも見せておいてカナダや
メキシコらが「参った」と降参して譲歩するのを待つビジネス交渉術のつもりな
のであるよ。
だから私はこのトランプ関税が25%かけられたまま、そしてそのうち日本やドイ
ツなどにも多くの品目で25%の関税がかけられていき半永久的(少なくともトラン
プ任期中の約4年)はこのままということは考えにくい。
ただトランプは個人的に好きな「ビジネスマンとしての交渉」を楽しんでいる
以外にも国民に向けて支持率を維持、又は上げるためのパフォーマンスでもある。
だから言葉を選びながら
「我がアメリカの正当で公平な理論にカナダやメキシコも屈服し要求を受け入れた
から関税を下げる(もしくは戻す)」
とどこかで落としどころを考えているだろう。
日本に対しても対アメリカでは輸出超過になっているため、近いうちに自動車や
鉄鋼などの分野で難癖付けてきて何かを要求するだろう。
具体的には農産物の保護主義を止めてコメや肉類、小麦粉などもっと買え、など
というか、半導体関連は中国などとは取引をしないでアメリカから優遇しろとか
アメリカ軍基地の負担を日本がもっとしろ、とかアメリカの武器や航空機を買えと
か宇宙開発とかを日本の企業の協力でもっと貢献しろとかetc
因みに石破さんが下手に日米地位協定を変更したいだのアジア版NATOを構想する
などアメリカに言ったら日本降ろしが厳しくなるでしょうね。
ま、石破さんは自民党のアウトローだった時代は無責任にあれこれ言えたけど
首相になったら地位を維持することに躍起で過激なこと発言してその地位を失う
口実にされたくないと今は必死でしょうからね。
トランプ関税、2月から5月くらいまでは世界経済を混乱させて今の株価より
10~20%くらい下げる要因になる可能性もあります。
<完>
「経済音痴なのではないか?」
と思われることもある。
しかし彼は根っからのビジネスマンであり少なくともバイデン前大統領よりは
経済的感覚は鋭い。
しかし超マクロ的な経済的概念はしばしば無いのか?と思われることも確か
である。
勿論今回発動した「カナダ・メキシコへ25%関税、中国に10%の関税措置」
のことである。
時折経済音痴な人は
「国の経済が苦しいならジャンジャン一万円札を刷って国庫の資金に充てれば
いいじゃん」
ということを言う。
そんな小学生でも簡単に思いつきそうなことは近現代ならず、近世以前のまだ
貨幣経済が明治以降ほど発展してなかった日本でも行っている。
例えば江戸時代の元禄時代、五代将軍徳川綱吉は学問を重んじ、朝廷などへ
の忠節として寺社の修築や母桂昌院へ高い官位を賜れるように献金などをして
きた結果、初代将軍家康と二代将軍秀忠までは豊臣秀吉を凌駕するくらい金銀
を貯め込んでいたがそれを大きく吐き出して幕府の財政は苦しくなっていった。
その際に勘定奉行荻原重秀の意見を取り入れて金貨に大きく銀を混ぜることで
金かの質を落とす代わりにその出目で金貨を多く流通させた。
しかし質の落とした金貨の信用度は低くなり、人々はインフレに苦しめられた。
因みにこの荻原を激しく憎んだ新井白石は六代将軍徳川家宣に何度も荻原の
罪を言上しついに彼を失墜させると金貨を元の良質な金貨に戻した(しかしこの
極端な戻しも有効な策ではなかった)。
トランプの関税を大幅に引き上げる策はこれとよく似ている。
「アメリカの巨大な貿易赤字を解消するならアメリカに多く輸出してくる国とか
アメリカから儲けている国から高い関税取って自国の利益にすればいいじゃん」
という単純な発想である。
まあ、それで通るならどこの国も我先にと関税を釣り上げていくわけだが実際
そうならずに一時は世界各地の近隣国や地域同士で寧ろ高い関税をかけないこと、
自由貿易協定を結ぶ動きがトレンドであり、国際化社会に寄与したのだ。
トランプの政策は「反グローバル社会」であり、他国に不利を強いてでもアメ
リカに頼らなければ彼らも困るであろう、と足元を見ているつもりのアメリカ
ファースト政策の基本であり、自信を持っているだろう(まあ、意図的にはった
りかましておいて様子見てみようというのが真実に近いだろうが)。
他国からアメリカの輸入品に高い関税をかけたらどうなるか?
例えばトヨタ車に高い関税がつけられ、今までは2万ドルで買えた新車が、関税
のせいで3万ドルになってしまったとする。一方自国の自動車会社のフォードの
新車はライバルトヨタ車の同レベルと比べて2万2000ドルで買えたとする。
アメリカ国民は当然、トヨタ車を買いにくくなり代わりにフォードの車を買おう
とするであろう。
「じゃあ、やっぱりトランプの政策でアメリカに良くなるじゃないか?」
と思われるかもしれないが、当然他国も対抗策としてアメリカからの輸入品に高い
関税を付ける。
そうすると今度はアメリカの輸出企業の成績が悪化していくことになる。
また時間が経てばアメリカの内需向けの製品を創ったりやサービスを行う企業も
海外からの高い輸入品を原料にして製品を製造せねばならなくなりいずれは国内
産業の自国民向けの製品やサービスも値上げされていくしかない。
企業は製造コストが高くなればそれを売って利益を上げて従業員の給与に報いる
ならば価格を上げるしか殆ど術はない。日本企業のように
「お客様は神様。だから値上げしたら嫌われて売れなくなる」
という精神は欧米にはそれほどない(なくもない)。
結局はトランプ関税は時間が経てば国内のインフレが進む形で子民生活を苦しめ
る可能性が高くなる。
そんなことを知らないトランプか?いやそんなことはあるまい。
高い関税を付けると脅して、実際口だけでないところも見せておいてカナダや
メキシコらが「参った」と降参して譲歩するのを待つビジネス交渉術のつもりな
のであるよ。
だから私はこのトランプ関税が25%かけられたまま、そしてそのうち日本やドイ
ツなどにも多くの品目で25%の関税がかけられていき半永久的(少なくともトラン
プ任期中の約4年)はこのままということは考えにくい。
ただトランプは個人的に好きな「ビジネスマンとしての交渉」を楽しんでいる
以外にも国民に向けて支持率を維持、又は上げるためのパフォーマンスでもある。
だから言葉を選びながら
「我がアメリカの正当で公平な理論にカナダやメキシコも屈服し要求を受け入れた
から関税を下げる(もしくは戻す)」
とどこかで落としどころを考えているだろう。
日本に対しても対アメリカでは輸出超過になっているため、近いうちに自動車や
鉄鋼などの分野で難癖付けてきて何かを要求するだろう。
具体的には農産物の保護主義を止めてコメや肉類、小麦粉などもっと買え、など
というか、半導体関連は中国などとは取引をしないでアメリカから優遇しろとか
アメリカ軍基地の負担を日本がもっとしろ、とかアメリカの武器や航空機を買えと
か宇宙開発とかを日本の企業の協力でもっと貢献しろとかetc
因みに石破さんが下手に日米地位協定を変更したいだのアジア版NATOを構想する
などアメリカに言ったら日本降ろしが厳しくなるでしょうね。
ま、石破さんは自民党のアウトローだった時代は無責任にあれこれ言えたけど
首相になったら地位を維持することに躍起で過激なこと発言してその地位を失う
口実にされたくないと今は必死でしょうからね。
トランプ関税、2月から5月くらいまでは世界経済を混乱させて今の株価より
10~20%くらい下げる要因になる可能性もあります。
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