24 / 62
第三章
第三章 ⑬
しおりを挟む
部屋の中には、たぶん患者さんだろう、二十人ほどの老若男女がざわついており、その中でもひときわ賑やかな連中がいた。言わずと知れた生ハム組のメンバーだ。
その声は、こんなざわめきの中にあってさえも、僕のところまではっきりと届いてくる。
「普通、ブルマだろう。俺たちはブルマ世代なんだ、その文化を大切にしなきゃいけないな」ジャックがリリィのショートパンツ姿を指さして言う。
「どうしてあたしがこの年になってまでブルマを穿かなきゃいけないのよ。あんなの、お尻のラインが丸見えじゃない。恥ずかしさの極致だわ」
「あたしのでいいなら、貸してやるよ。何着か持っているでな」お絹さんが杖でリリィのショートパンツを指し示しながら言う。「仲間内だから、タダでいいよ」
「いけない。お絹さん、いくらなんでも、提灯ブルマはいけないよ」ジャックが両手を胸の前に出した。「あれは男の夢を遠慮なく踏みつぶしてくれるシロモノだ」
「バカを言いでないよ。あんな芸術的なものは、そうそうお目にかかれないよ。ほれ」お絹さんがもんぺのようなズボンを脱いだ。「あたしゃ、この通り、穿いてきてるんじゃ。これでいつでも運動ができる」
「悪夢だ。この世の悪夢だ」ゾンビが念仏を唱えだした。
どうでもいいけど、みんなどうして不思議に思わない? 僕はため息をつく。リリィは、なぜ体操服にハイヒールなんだ?
ケンイチは患者の間を縫うようにして走らせているファイアー号を、ゾンビの足に当てて遊んでいた。
もげた足を拾いながら、ゾンビが言う。「私の足をもがないでくれ」
「なんでしょうね、これは。祥一君」信良がかすれた声を出した。
「さあ。少なくとも、椅子に座っての講義じゃないことは確かだね」ぼくは肩をすくめる。「部屋の中だから、蜜柑狩りでもないと思う」
そんなやりとりをしていたら、誰かが大きな声を出した。「おおい、そこの四人。はやく列に並ばんか。もう始まるぞ!」
「え? 四人って、俺たちのことか? なんだよ急に」信良がうろたえる。
「ちょっとヤバい雰囲気ねえ。汗をかかなきゃ、帰してもらえないような気がしてきたわ」冴子が首を振る。
「ちょっといいですかあ」花江が手を上げた。「花江、体操服を持ってきてないんですけどお」
もしもし、花江さん。君はなにを言い出すんだい。僕の顔も引きつっていたかもしれない。
「仕方がない、今日はそのままでいい。次回は忘れるんじゃないぞ。さあ、並んだ並んだ」
僕たちは仕方なく、生ハム組の隣りへ行った。
ジャックが僕たちに気づいてやあ、と手を上げた。
「なんでしょうね、これ。どういう冗談なんでしょう」僕は能面のような顔で尋ねた。
「まあ、いいんじゃない? 今から行うのは、組体操だよ。チームごとに、いくつかの技を披露するんだ」
「組体操、好きだよお」花江が喜ぶ。
もしもし、花江さん。
そんなこんなで、僕たちは本日のレクであるところの組体操に参加させられてしまった。
その声は、こんなざわめきの中にあってさえも、僕のところまではっきりと届いてくる。
「普通、ブルマだろう。俺たちはブルマ世代なんだ、その文化を大切にしなきゃいけないな」ジャックがリリィのショートパンツ姿を指さして言う。
「どうしてあたしがこの年になってまでブルマを穿かなきゃいけないのよ。あんなの、お尻のラインが丸見えじゃない。恥ずかしさの極致だわ」
「あたしのでいいなら、貸してやるよ。何着か持っているでな」お絹さんが杖でリリィのショートパンツを指し示しながら言う。「仲間内だから、タダでいいよ」
「いけない。お絹さん、いくらなんでも、提灯ブルマはいけないよ」ジャックが両手を胸の前に出した。「あれは男の夢を遠慮なく踏みつぶしてくれるシロモノだ」
「バカを言いでないよ。あんな芸術的なものは、そうそうお目にかかれないよ。ほれ」お絹さんがもんぺのようなズボンを脱いだ。「あたしゃ、この通り、穿いてきてるんじゃ。これでいつでも運動ができる」
「悪夢だ。この世の悪夢だ」ゾンビが念仏を唱えだした。
どうでもいいけど、みんなどうして不思議に思わない? 僕はため息をつく。リリィは、なぜ体操服にハイヒールなんだ?
ケンイチは患者の間を縫うようにして走らせているファイアー号を、ゾンビの足に当てて遊んでいた。
もげた足を拾いながら、ゾンビが言う。「私の足をもがないでくれ」
「なんでしょうね、これは。祥一君」信良がかすれた声を出した。
「さあ。少なくとも、椅子に座っての講義じゃないことは確かだね」ぼくは肩をすくめる。「部屋の中だから、蜜柑狩りでもないと思う」
そんなやりとりをしていたら、誰かが大きな声を出した。「おおい、そこの四人。はやく列に並ばんか。もう始まるぞ!」
「え? 四人って、俺たちのことか? なんだよ急に」信良がうろたえる。
「ちょっとヤバい雰囲気ねえ。汗をかかなきゃ、帰してもらえないような気がしてきたわ」冴子が首を振る。
「ちょっといいですかあ」花江が手を上げた。「花江、体操服を持ってきてないんですけどお」
もしもし、花江さん。君はなにを言い出すんだい。僕の顔も引きつっていたかもしれない。
「仕方がない、今日はそのままでいい。次回は忘れるんじゃないぞ。さあ、並んだ並んだ」
僕たちは仕方なく、生ハム組の隣りへ行った。
ジャックが僕たちに気づいてやあ、と手を上げた。
「なんでしょうね、これ。どういう冗談なんでしょう」僕は能面のような顔で尋ねた。
「まあ、いいんじゃない? 今から行うのは、組体操だよ。チームごとに、いくつかの技を披露するんだ」
「組体操、好きだよお」花江が喜ぶ。
もしもし、花江さん。
そんなこんなで、僕たちは本日のレクであるところの組体操に参加させられてしまった。
0
あなたにおすすめの小説
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
上司、快楽に沈むまで
赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。
冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。
だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。
入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。
真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。
ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、
篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」
疲労で僅かに緩んだ榊の表情。
その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。
「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」
指先が榊のネクタイを掴む。
引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。
拒むことも、許すこともできないまま、
彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。
言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。
だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。
そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。
「俺、前から思ってたんです。
あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」
支配する側だったはずの男が、
支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。
上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。
秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。
快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。
――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。
むっつり金持ち高校生、巨乳美少女たちに囲まれて学園ハーレム
ピコサイクス
青春
顔は普通、性格も地味。
けれど実は金持ちな高校一年生――俺、朝倉健斗。
学校では埋もれキャラのはずなのに、なぜか周りは巨乳美女ばかり!?
大学生の家庭教師、年上メイド、同級生ギャルに清楚系美少女……。
真面目な御曹司を演じつつ、内心はむっつりスケベ。
あるフィギュアスケーターの性事情
蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。
しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。
何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。
この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。
そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。
この物語はフィクションです。
実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。
母の下着 タンスと洗濯籠の秘密
MisakiNonagase
青春
この物語は、思春期という複雑で繊細な時期を生きる少年の内面と、彼を取り巻く家族の静かなる絆を描いた作品です。
颯真(そうま)という一人の高校生の、ある「秘密」を通して、私たちは成長の過程で誰もが抱くかもしれない戸惑い、罪悪感、そしてそれらを包み込む家族の無言の理解に触れます。
物語は、現在の颯真と恋人・彩花との関係から、中学時代にさかのぼる形で展開されます。そこで明らかになるのは、彼がかつて母親の下着に対して抱いた抑えがたい好奇心と、それに伴う一連の行為です。それは彼自身が「歪んだ」と感じる過去の断片であり、深い恥ずかしさと自己嫌悪を伴う記憶です。
しかし、この物語の核心は、単なる過去の告白にはありません。むしろ、その行為に「気づいていたはず」の母親が、なぜ一言も問い詰めず、誰にも告げず、ただ静かに見守り続けたのか——という問いにこそあります。そこには、親子という関係を超えた、深い人間理解と、言葉にされない優しさが横たわっています。
センシティブな題材を、露骨な描写や扇情的な表現に頼ることなく、あくまで颯真の内省的な視点から丁寧に紡ぎ出しています。読者は、主人公の痛みと恥ずかしさを共有しながら、同時に、彼を破綻から救った「沈黙の救済」の重みと温かさを感じ取ることでしょう。
これは、一つの過ちと、その赦しについての物語です。また、成長とは時に恥ずかしい過去を背負いながら、他者の無償の寛容さによって初めて前を向けるようになる過程であること、そして家族の愛が最も深く現れるのは、時に何も言わない瞬間であることを、静かにしかし確かに伝える物語です。
どうか、登場人物たちの静かなる心の襞に寄り添いながら、ページをめくってください。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる