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第五章
第五章 ⑦
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それから猫ばあさんは、僕たちの疑問について、語ってくれた。
実は、猫ばあさんは犬吉さんのことが好きだった。でも、犬吉さんより一つ年上なので、一緒にはダイヴできない。悲しい事実だ。でも、どうしても一緒にダイヴしたかった。それは犬吉さんも一緒だった。
だから、昨年の「間引き」から猫ばあさんは逃れ、一年間、隠れて生活してきた。それが廃屋の猫ばあさんの噂話だ。
猫ばあさんは猫を食べる化け物だ、みたいな噂を流していたのは犬吉さんだった。誰も廃屋に近寄せないようにしていたのだ。
猫ばあさんの驚異的な走るスピードや空中に浮かび上がった仕掛けも、信良の「火事場の馬鹿力推理」の通りだった。
所定の位置にいる数人の猫ばあさんが、ときおり木々の間から順番に姿を見せて、もの凄いスピードで走っているように見せかけ、滑車とロープを使って空中に浮かんでいるように見せる。滑車とロープの仕掛けは、犬吉さんが作ったらしい。
「数人の猫ばあさんねえ」冴子がなるほどとつぶやく。「それって、もしかして」
「そうさ。あたしと同じような気持ちの人間は、他にもいるのさ。だけど、それを悟られてしまっては元も子もない。それを防ぐために、全員で同じ格好をし、同じ髪型をして、森にいるのは猫ばあさん一人だけだと思わせていたのさ」
「複数の猫ばあさんの中で、空中に浮かぶのを担当したのはあたしだけどね。でも、それについては、犬吉さんに苦情を言いたいんだよ。ロープが細すぎて皮膚に食い込んでしまうんだ。痛くてかなわんわい。見てみな、脇の下が赤く腫れ上がっとるだろ」
そう良いながら、猫ばあさんは服を脱ごうとした。
「脱がなくていい、脱がなくて」信良が必死に止める。
「でも、廃屋じゃあ、猫、食べていたでしょお。あれ、どういうことよお。花江、怖かったよお」と花江が情けない顔をする。
「あはは。まさか猫なんて食べるわけないでしょうが。食べていたのは鶏肉。投げ捨てたのは、猫のヌイグルミさ。まさかのときに備えて用意しておいたものだよ」
「犬吉さんが、あたしをだましたあ」花江が泣きそうになる。「花江、本気で怖かったのにい。嘘つきい」
「なんで、わしが」と驚き焦る犬吉さん。「ああそうか、知っているのに教えなかったからか。そりゃすまなかったなあ」
「ああ、こりゃひどいや。女の子を泣かすなんて、ひどい大人がいたもんだ。どうすんだよ、犬吉さんよう」信良が冗談交じりに詰め寄る。
「あは、あははは」頭を掻く犬吉さん。よく見ると鼻が垂れている。
犬吉さんが猫ばあさんに助けを求めた。「なんとか言ってくれよう」
「鼻水を拭くまで、こっちへ来てはいかん」猫ばあさんが両手を上げて言う。すぐに笑いながら、冗談だよ、と猫ばあさん。ハンカチを犬吉さんに差し出した。
「もう少しの辛抱だね」と、猫ばあさんが犬吉さんに寄り添った。僕は犬吉さんが赤くなるのを初めて見た。
実は、猫ばあさんは犬吉さんのことが好きだった。でも、犬吉さんより一つ年上なので、一緒にはダイヴできない。悲しい事実だ。でも、どうしても一緒にダイヴしたかった。それは犬吉さんも一緒だった。
だから、昨年の「間引き」から猫ばあさんは逃れ、一年間、隠れて生活してきた。それが廃屋の猫ばあさんの噂話だ。
猫ばあさんは猫を食べる化け物だ、みたいな噂を流していたのは犬吉さんだった。誰も廃屋に近寄せないようにしていたのだ。
猫ばあさんの驚異的な走るスピードや空中に浮かび上がった仕掛けも、信良の「火事場の馬鹿力推理」の通りだった。
所定の位置にいる数人の猫ばあさんが、ときおり木々の間から順番に姿を見せて、もの凄いスピードで走っているように見せかけ、滑車とロープを使って空中に浮かんでいるように見せる。滑車とロープの仕掛けは、犬吉さんが作ったらしい。
「数人の猫ばあさんねえ」冴子がなるほどとつぶやく。「それって、もしかして」
「そうさ。あたしと同じような気持ちの人間は、他にもいるのさ。だけど、それを悟られてしまっては元も子もない。それを防ぐために、全員で同じ格好をし、同じ髪型をして、森にいるのは猫ばあさん一人だけだと思わせていたのさ」
「複数の猫ばあさんの中で、空中に浮かぶのを担当したのはあたしだけどね。でも、それについては、犬吉さんに苦情を言いたいんだよ。ロープが細すぎて皮膚に食い込んでしまうんだ。痛くてかなわんわい。見てみな、脇の下が赤く腫れ上がっとるだろ」
そう良いながら、猫ばあさんは服を脱ごうとした。
「脱がなくていい、脱がなくて」信良が必死に止める。
「でも、廃屋じゃあ、猫、食べていたでしょお。あれ、どういうことよお。花江、怖かったよお」と花江が情けない顔をする。
「あはは。まさか猫なんて食べるわけないでしょうが。食べていたのは鶏肉。投げ捨てたのは、猫のヌイグルミさ。まさかのときに備えて用意しておいたものだよ」
「犬吉さんが、あたしをだましたあ」花江が泣きそうになる。「花江、本気で怖かったのにい。嘘つきい」
「なんで、わしが」と驚き焦る犬吉さん。「ああそうか、知っているのに教えなかったからか。そりゃすまなかったなあ」
「ああ、こりゃひどいや。女の子を泣かすなんて、ひどい大人がいたもんだ。どうすんだよ、犬吉さんよう」信良が冗談交じりに詰め寄る。
「あは、あははは」頭を掻く犬吉さん。よく見ると鼻が垂れている。
犬吉さんが猫ばあさんに助けを求めた。「なんとか言ってくれよう」
「鼻水を拭くまで、こっちへ来てはいかん」猫ばあさんが両手を上げて言う。すぐに笑いながら、冗談だよ、と猫ばあさん。ハンカチを犬吉さんに差し出した。
「もう少しの辛抱だね」と、猫ばあさんが犬吉さんに寄り添った。僕は犬吉さんが赤くなるのを初めて見た。
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