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78 マリクside
しおりを挟む泣きじゃくる私を祖母は馬車に乗せ、気づくとルーチェの国境を越えサベルクに入っていた。
そこからはサベルクでの生活が始まった。この国にはルーチェから逃げてくる人がいるらしく、国が働き口が見つかり生活が安定するまで補助金を出してくれた。祖母は高齢だったため、働き口が見つかった後も補助を続けてくれた。
私は訳がわからないまま毎日を過ごしていた。なぜ母は死んでしまったのか。なぜ父は死んでしまったのか。なぜ祖母はサベルクへ私を連れてきたのか。
何もかもがわからなかった。
その疑問は私が10歳の時に全ての真実を知ることにより解消された。恨みを伴って。
10歳の時に祖母が病に倒れた。医者に診てもらったがもう長くはないと言われ、毎日のように私は1人にしないでくれと言い続けた。
初めは大丈夫、1人になんてしない。すぐに元気になると言っていた祖母が2週間ほど経った日に
「大切な話がある。」
そう言って私の出生について話してくれた。
私の本当の父親はルーチェ国王スピナ・レスト。
私がずっと髪と瞳を隠し続ける理由は王族の証である栗色の髪と金色の瞳を持っているからだった。
母は城で働いていたときに、王と親密になり子を授かった。だが、平民と結婚などできる訳がなく、王が結婚したら側室とするという約束となった。私を産んだ母は出産の最中に私の髪色を黒とし瞳の色を茶色とする魔法をかけた。母が魔法を使えることは誰も知らなかったのでその場にいる全員を騙すことができた。
ルーチェでは初子が男だと不幸を招くと言われている。女だとしても平民の母が産んだ子であれば後々命を狙われるかもしれないと母は私に魔法をかけてくれたのだ。
男であり、さらに王族の証を持たずに生まれたので母は城から出ることが出来た。暮らしに困らないほどの手切れ金をもらい城を追い出されたとも言えると祖母は言った。
それからずっと、王から何かアクションが起こることもなく平和な日々が続いていたが王が結婚するというニュースを聞いた時に母と祖母は最悪の状況を考えたそうだ。サベルクへ早めに逃げることも考えていたそうだが父には私の出生の秘密を言っていなかったため判断が遅れた。そして、あの日の事件が起きたのだ。
あの日倒れた母と祖母がした会話を教えてもらった。
あの日、母と父を殺したのは国王軍。結婚が決まり、王の本当の初子が男であっては困るからと。その事実を知っている母と母が伝えたかもしれない父は殺されたのだ。もちろん、祖母と私も狙われていたのだろう。だが、すぐにサベルクに逃げ込んだため追ってこれなかったのだと祖母は言った。
母が、何をしたと言うんだ。父が、何をしたと言うんだ。
私の実の父親は、鬼のような男だと思った。幸せに暮らしていた。母も父も大好きだった。贅沢な暮らしなんて望んでいなかった。3人で仲良く暮らして、時々怒られて、笑って。私も母も父も願ったのはただそれだけだ。
母は私に幸せになれと言った。
だが、私にはもう幸せになどなれない。
母と父と過ごした日々が幸せだったのだから。
祖母は私にこの秘密を話してから3日後に息を引き取った。
最後の言葉は
「マリク、母の分も父の分も生きて幸せになりなさい。」
だった。
祖母には申し訳ないが、私にはもう幸せが分からなかった。話を聞いた日から私はルーチェの国王に復讐すると心に決めていた。
母が大好きだと言ってくれたこの瞳と髪が憎くて仕方ない男が父親だという何よりの証となった。そしてこれを見るたびに復讐心を思い出した。
だが当時の私では力などないに等しかった。なので、12歳になるまで待って騎士団の見習いになった。
がむしゃらに頑張る私は周りから見ても危なっかしかっただろう。この頃に1人、私の頑張りを認めて私の笑顔を引き出してくれる人物と出会った。高貴なお方だったが、どうすれば復讐を果たせるのかもまだ分からない闇の中無我夢中で走る子供の私を少し休憩させてくれるそんなお方だった。その時が来るまではこの方に全力でお仕えしようと思えた。
19歳になった頃、私は騎士団の中でも第3騎士団の2軍副隊長になっていた。年齢の割に異例の出世だった。
そんな中で敵国スカナへの潜入員の募集が第3騎士団にかかった。
スカナは何年も前からルーチェの土地を狙っている国。このサベルクにいるよりもチャンスがあると思った。なので自ら立候補し、潜入した。
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