【2月書籍化】伸ばしたこの手を掴むのは〜愛されない俺は番の道具〜

にゃーつ

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楓君が退院して2ヶ月が経った。
優の学校も始まり朝早く起きて朝ごはんを作って、優の帰りをいつも楽しみにしている様子は幸せそうで微笑ましい。

義姉さんはあのあと即逮捕となり執行猶予も取り消され傷害罪の裁判の真っ只中だ。

義姉さんのことを兄さんに報告に行ったが

「そうか。」

それしか言わなかった。俺は不思議だった楓君のことに関しても兄さんは全ての罪を認めて取り調べでも全て話したと聞いた。

だが裁判で楓君に謝罪の気持ちはあるのかと問われた際、

「過去に戻ったとしても同じことをする。」

そう発言した。兄さんはそこまで義姉さんとの子供が欲しかったのだろうか。跡取り問題?確かに、義姉さんの実家は柊がまだ手を伸ばせていない業界や国にも顔が効く。それもあっての政略結婚だった。

俺には兄さんの気持ちは全く分からなかった。

そして俺自身は今、兄さんの代わりに柊を継ぐようにと言われている。もちろん却下をしているが、本家の役員はかなりしつこい。俺は自分の会社をもっと大きくしたいし今の従業員も大切にしたい。それに一度柊を出て起業した身だ。今更戻りたいとも思わない。

---プルルルっ

ん?か、か、楓君!?

「も、もしもしっ!楓君どうしたの?なんかあった?」

「あ、いや・・・その、優から今日が理玖さんの誕生日だって聞いたので。おめでとうございますを言いたくて。あと、理玖さんがよろしければ今日夕飯食べにきませんか?」

「えっ!いいの?嬉しいよ!!寂しい誕生日かと思ってたんだ。7時ぐらいになると思うんだけど大丈夫?」

「はい!何か食べたいもののリクエストありますか?」

「俺、唐揚げが好きなんだけどリクエストしてもいい?」

「もちろんです!美味しいの作って待ってます!!」

電話の切れた携帯を手から離すこともなく今の幸せな会話を思い出して少しニヤついた。

「社長、今日18時から会議ですけど。19時に帰るなんて不可能に近いですよ。」

「んー?大丈夫。俺が本気で終わらせるから。」

楓君が俺の誕生日祝ってくれるんだから仕事なんてどれだけでも頑張れる。・・・唐揚げか、楽しみだ。

俺はその発言通り20分で会議を終わらせて会社近くの洋菓子店でお土産に焼き菓子を買って楓君の家へと急いだ。

---ピンポーン

「はーい!!あ、理玖おじさん!いらっしゃい!!誕生日おめでとう!!」

「優、ありがとうな!!」

「ママのご飯もうできてるよ!!はやく!!」

リビングに入るといい匂いと共に楓君が現れた。

「理玖さん、いらっしゃい。お誕生日おめでとうございます。さ、ご飯できてるんでどうぞ!」

退院したばかりの頃よりも歩くスピードが速くなっているし表情もかなり明るくなったな。

「楓君、ありがとう。ありがたくいただくね。わ、唐揚げだけじゃなくてご馳走じゃないか!」

唐揚げにグラタンに海藻サラダにポテトサラダが食卓に並んでいてとても美味しそうだった。

「優のリクエストも聞いたらたくさんになっちゃいました。」

「いただきます。」

「いただきます!」

「はい、召し上がれ。」

初めて食べる楓君の手料理。頻繁に会ってはいたが食事をすることはなかった。優からはいつもママの料理が美味しいんだと自慢されていたから内心めちゃくちゃ羨ましかったんだ。

「ん!楓君、美味しいよ!料理上手なんだね。」

「まだまだ失敗する時もあるけど、だいぶ慣れました。優には栄養のあるご飯食べて欲しいし、喜んでくれる顔見たら嬉しくて嬉しくてもっと頑張ろうって思えるんですよ。」

「優は幸せだな、料理上手なママがいて。」

「うん!!あ、おじさん、来週末ねママと柊の家に行こうと思ってるんだ。一緒に行こう?」

「柊の家に?」

「はい、日和と陽介に会いに行こうかと思いまして。柊の家の方たちに伝えといていただきたくて・・・」

「分かりました、言っておくよ。」

日和はあれからあの時のお兄ちゃんに会いたい。あの人がママなの?と楓君のことが気になっているようだった。

俺が思っていたよりも日和と楓君の距離が縮まるのははやいかもしれない。

「日和と陽介はアレルギーとかありますか?クッキー作っていこうかなって思ってるんですけど。」

「2人ともアレルギーはないから大丈夫だよ。きっと2人とも喜ぶよ。」

4人が家族としてここで暮らせる日が待ち遠しい。

・・・俺のこの気持ちは伝えないほうがいい。

そう強く思った。
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