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温もり
しおりを挟む周りからの視線とか、今の状況とか、何も考えずに言ってしまった。
僕、辛いって思わないようにしてただけで、本当は辛くて仕方なかったんだな。
どんどん溢れ出てくる涙がそれを物語る。
「周、こんな奴らのことなんて忘れようね。」
れおんがそう言って抱きしめてくれた。
気を張り詰めて立っていたのに力が抜けていく。
「周、帰るよ。無理して出てきたから熱も出てるし、急にたくさん歩いたから足もしんどいでしょ。」
そう言ってれおんが抱きかかえてくれた。
あの人たちを背にれおんと僕は去っていく。もう、振り向かない。
「村重、苅田さん家に呼んで。周が熱出してる。」
「かしこまりました。急いで帰宅します。周様、ご立派でしたよ。」
村重さん、ありがとうございます。
そう言いたいけど体は限界みたいだ。
僕のために、れおんはいっぱい怒ってくれた。ありがとう。
そんな意味を込めてれおんにぎゅっと抱きつく。
「・・周、よくがんばったね。俺1人で解決しようと思ってたけど、周が言いたいこと言えてよかった。黙っててごめんね?」
フルフルと横に首を振る。
れおんが謝ることなんて、ない。
僕のためにいっぱい手回ししてくれたんだろうし。
この人のことが、もっと好きになった。
僕の顔を不安そうに見ているこの人が。
「れおん、ありがとう、大好き。」
僕をがんじがらめに縛っていたものがなくなったような気がして、心も体も軽くなった気分だ。
「っ、ちょ、え、、ぇ、周、?急に、そんなの、、困る、、なんで返したら、、その、俺も、大好き、、っっ」
さっきまであんなにクールな感じでかっこよかったのに、僕が好きって言っただけで照れて顔真っ赤にしちゃうんだ。
僕あの時、なんで助けたんだよって。あのまま死ねたのにって思ったけど、今は生きててよかったって心の底から思えるし、お母さんのところへ行くのはまだまだ先になりそうだ。
「周、家ついたからね。すぐ医者にもきてもらうから。」
少し意識が朦朧としてきた時、れおんに包まれて運ばれるのはわかった。
多分熱は上がっているし、足も少し痛いや。
ベッドに降ろされた途端にトトとココが枕元にやってきた。
家出る時に相当鳴いてたもんな。
ごめんな置いて行って。
お前たちの仇はれおんがとってくれたからな。捕まって当分は出てこれないみたいだし。
「周、お水飲める?」
僕が体調悪いとれおんはすごく心配そうな顔をする。
そのれおんの心配そうな顔を見たところで僕の意識は途切れてしまった。
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