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12話 ご挨拶はしっかり
しおりを挟む魔界の中心に在る巨大な城。とんっでもなく広い城のなかで最も大きな一室。中央ホールと呼ばれるこの部屋ではばか騒ぎが現在進行形で行われていた。
巨人、鬼、人、獣人、機械人間、ドワーフ、神族、淫魔、妖精、などなどいかにもファンタジーな種族が一同に介していた。
「おい、聞いているのかクソガキ!てめぇ俺の娘にてを出そうってなら俺が直々にぶち殺してやるぞゴラァ!!」
玉座から最も近くで話しているグループ。三人の男と幼女が一人。
かきあげた黒髪に鋭く光る赤い眼を持つ男が極々普通の青年に啖呵を切っている。
世界を滅ぼした狼と憐れな子羊。それくらいの違いを感じる。
「と、父様?私は大丈夫よ?怜はいい人だし、私のことを大切に思ってくれてるし……」
「リリスよ。俺のことは昔のようにパパと呼んでくれ。そして気を付けろ……油断したところで襲いかかってくるぞ!」
この男エアル・アスフィール。鋭く赤く光る眼光に、リリスやサキュと同じように生えた二本の角。黒いスーツにも似た服を着ているが、それもはち切れるのではないかと思うほどに体格が良い。
そんな誰もが威圧しそうな男が自分よりも明らかに格下に見える男に対してチンピラのような暴言を吐きまくっている。
しかし、ただの親バカだと思うなかれ。10人いる悪魔王の幹部のなかの頂点悪魔王の側近を勤める魔界の重鎮なのだ。その実力は折り紙つきで魔界に住む者からは武帝と呼ばれているほど強い。
だが、今は一人の親。というか親バカ。部下からは寡黙だが、熱い上司だと思われているのだが、今はこんな有り様だ。ちらほら『あれが…武帝?』と首をかしげる者もいる。
「エアル……落ち着け。少年はもう既に気絶しているぞ…」
「ハッ!弱いガキだな。貴様のような雑魚はリリスと釣り合わん。リリスよ今すぐ契約を破棄してパパのところへかえっておいで」
「嫌よ。父様は…なんか嫌よ。それに私の契約者を悪く言う父様はもっと嫌い!行こっ!怜!」
立ちながら気絶した怜を引きずりながら父親から距離をとる。逃げる際に怜が邪魔だと思ったのかその場に捨てて、一人食事を取りに向かう。捨てられて床にベターンと張り付く怜はかなり、惨めだ。
「あぁ……リリス……。パパをおいていかないでくれ!!パパはリリスやサキュに捨てられたら何を生き甲斐にすればいいと言うのだ!」
「……妻のサティスは?」
「……サティスはいつでも俺についてきてくれる。愛してるから…サティスっ!」
武帝と話しているもう片方の男。目立たないので今まで触れていなかったのだが、魔界で知らないものはいない巨人。
長く力強い角を持つ魔界最強の男、悪魔王である。巨人と言っても小さくなれるので今はエアルよりも小柄な普通の男性だが、もとの姿は三メートル超のれっきとした巨人である。
側近であり親友のエアルのキャラが濃すぎるので悪魔王アルマディア・レクシスは陰が薄く感じるのだ。
悪魔王は四つん這いになって泣きながら娘と妻への愛を叫び続ける親友にあきれ口調で話しかける。
「もう、いいだろ。お前はいい加減に娘離れをしろ。彼女たちももう立派な大人だ。自分のことくらいは自分でできる」
「我が娘が立派すぎて辛い……。俺はこの悲しみをどこにぶつければいいのだ……」
涙でカーペットが汚れるのではないかとくだらないことを考えていた悪魔王は手を叩いて
「それなら今年の舞踏祭にでも出たらどうだ?久々に暴れてみてもいいんじゃないか?」
と思いついた解決策を親友に問う。
それと同時に先程まで談笑していた出席者は皆一斉に二人を見る。
出席者からは「まじかよ…」だとか、「楽しくなってきたな」「燃えてくるねぇ!」だとかその話題で盛り上がった声が聞こえてくる。
武帝は泣くのを止め、親友の悪魔王を見る。
「いいんだな?この機会だ俺は本気を出すぞ?」
「構わんよ。今回は俺も出るしな。それに客の結界については情報王と経済王が協力してくれるらしい。過去一の舞踏祭になるだろうから」
「ふっ。いいだろう。本気の本気だ。憂さ晴らしのためではあるが全員ぶちのめしてくれるわ!!」
「……よし。皆のもの!今聞いた通りだ!今年の舞踏祭は俺も、エアルも出る!今回だけ特別で第一戦前に受付を済ませれば事前予約無しでだしてやる!!悪魔も!精霊も!神霊も!恩恵保持者も大歓迎だ!腕に自信のあるものは参加していくといい!!!」
悪魔王は中央ホールの隅まで聞こえるように声を張り上げて舞踏祭の要項を説明していく。
言い終わったときには大きな歓声と拍手がホールを包む。
「へぇ…面白そうじゃん。僕も参加させて貰おうかな……」
出入り扉の付近を陣取るごく普通な人間の青年は事も無げにそう呟き、その受付とやらに向かう。
「ほほぅ。今日は祝うためだけに来るつもりじゃったがあの二人が出るのなら今年もでなければならんのぉ…」
次々と強者が参加しようと受け付けに動き始めたわけだが、相も変わらず怜はへばっている。
「舞踏祭まではまだ時間がある!組み合わせも今から決めるゆえ多少時間が前後するかもせんが許せ!それまでの間はうちの自慢のシェフ達が作った料理を堪能してくれ!」
舞踏祭受付はてんやわんやだが、中央ホールには楽しそうな雰囲気が漂っていた。
それと同時に多くのものは『今年の舞踏祭は荒れるな』と楽しみながらこれから起こる熱い戦いを楽しみにしていた。
『参加証明書
参加者No.169番 人族
大庭怜
この者を舞踏祭参加者として認める。』
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