異世界最強の武器は私のスマホでした~勇者ダウンロード中~

亜久里遊馬

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第1話:勇者ダウンロード中

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アプリ名:勇者
現在のバージョン:2.0
アプリ内アイテム:100G ~ 9,800G
神的評価:★★★★★
神的レビュー:SSRアイテムがなかなか出ないけど楽しいです
詳細説明:……

→『インストール』

『お使いの端末はこのバージョンに対応していません」


「何故だあ!! 神は私を見放したのか!?」


 私は街のど真ん中で空を見上げて叫んでいた。
 活気のある商店街の空気が一瞬止まり、再び何事もなかったかのように動き始める。
 昨日とは違う風景、違う人種、違う世界。
 そして、昨日と同じ機種のスマホ。

 「神は私を見放したか!?」というのは比喩じゃない。

 ごく普通の高校生である私は、何の前触れもなく、この世界に転移させられていた。
 
 普通だと、神に会って「魔王を倒してきなさい。このチートアイテムをあげるから」という流れになるはずなのに、帰宅中に一瞬で転移した時、手に持っていたのは自分のスマホのみ。

 『神的チュートリアル』をいう怪しげなアプリがダウンロードされていたので起動してみると……

『この異世界には魔王がいます。スマホを改造したので頑張って勇者をダウンロード、SSR武器もGETして魔王を倒してきてください。これは課金厨の貴方……か他の課金厨にしかできない使命です』

 と文字が表示され、自動終了した。

 その時はあまりにもムカついて、スマホを地面に叩きつけようとしていた。
 でも、もしかしたら……という思いで『勇者(アプリ内購入あり)』をダウンロードしたのが、さっきの結果。

「チートアイテムって言っても使えないじゃないの。私のスマホ古いから、この前機種変しようと思ってたばかりなのに……」

 おそらく、道を歩く人間、亜人間たちからは「なんだこいつ」と思われているのだろう。
 けれど、このスマホが私の生命線だ。
 この異世界で生き、魔王を倒すたった1つの手段……だったはずなんだけど。

 少し他のも試してみるかな。
 
 私は、さっきのように目立つ事を避けて、小道の階段に腰掛けながら、スマホを見た。

 神アプリストアという腹立たしいアイコンをタップすると、無料、有料、トップセールスに分かれている。

 とりあえずは無料だ。
 有料はその名の通り、300G等表示されているけど、もちろん今の私にそんな金はない。
 トップセールスも『アプリ内購入』しないと、ほとんど使えないものがある。だからこそ、トップの売上になっているわけだけど。

「まあ、定番だけどこれでいいかな」


アプリ名:鉄の剣
現在のバージョン:1.01
広告:あり
神的評価:★★★
神的レビュー:安定して使えると思います。ただ、頻繁に広告が出るのがウザいです。
詳細説明:
攻撃力+10

 私は神的評価と神的レビューという表現がウザい。
 
→『インストール』
→『開く』

 そのボタンをタップした瞬間だった。
 私の横に宙から鉄の剣が出現し、金属音をたてて転がった。

「マジで? ……これって本物!?」

 これぞ私が望んでいたチートアイテムだ。
 スマホをポケットに入れ、鉄の剣を両手で持ってみる。
 鈍く光る金属と重量感が、剣の存在を主張している。
 私は剣道などはやったことはないけど、軽く一振りすると、姿勢が勝手に矯正されて、刃が美しい弧を描く。

「身体能力も変わるんだ! 無料でこれなら十分! ザコ敵なら一撃で倒せるぞー!」

 身長150cm、体重?kgの平均的な身体から繰り出される斬撃じゃない。大きな戦士並みの威力がありそうだ。

 調子にのって数回振り回していた時、それは出てきた。
 剣の先からニュッと、プラスチックの棒のようなモノが生えて『怪我の治療? それならキュアクリニックへ!!』という旗がひらひらと風に揺れた。

「もしかして……広告ありって……」

 確認のため数十回剣を振ってみると、武器屋、道具屋、宿屋等々の広告が出てきた。剣という性質のためか、武器屋の広告が多い。
 なるほど、こういう事か……。

「――って、なによこれは!! 確かに『広告:あり』って表示されてたよ!? でも剣から広告ってないでしょ! 敵と戦っている時にこんなの出てきたら、緊張感も何もなくなるわ!!」

 叫ぶ私に追い打ちをかけるかのように、『神的チュートリアル』が起動する。

『お金を貯めれば広告を非表示にできます。また、有料アプリを買うのもおすすめです。動かない場合は、経験値を貯めて機種変してください』

 私のチートアイテムは、どうやらちょっと……いや凄く変わっているようだ。
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