最強魔王は貧乏なので、魔王城で商売します

亜久里遊馬

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10:勇者? は魔王城でご飯を食べます(1)

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「人間用に調整した料理はどうなっている? あのクリスはくねくねパンを容易く食ってしまったが、他の者には難しかろう」

「……えっと、それを今いっちゃいます?」

「ん? 何だというのだ? つい先日の事であろう?」

「いやー、魔王様が気に入っていらしゃったので、試食係にとこちらへお呼びしたのですが……」


 皿やグラスが収められている質素な木製の棚の奥。何かが動いた。肩にかかる金髪は土で少し汚れている。服は実用性を重視した農作業着。しかし、何故か清楚で知的な様相を呈している。ぷるぷると震えてはいるが、ばつが悪そうにこちらに横顔を見せている少女を俺は知っていた。


「クリスか。どうやら俺と渡り合えるような男は連れていないようだが……。せっかく注意してやったというのに、お前一人では勝負にならんぞ」


 豪快に笑い飛ばすと、彼女は頬を膨らませてそっぽを向いた。以前の事といい、俺の言い方に問題でもあるというのか?


「さて……魔王城への不法な侵入であるな」

「も、申し訳ございません! 最近の魔王様は楽しそうにしておられますので、つい緊張が緩んでおりました。この身、どうなされようと覚悟しております」

「よいよい。少々驚かしただけだ。それに、お前がいなくなっては誰が食事を用意するというのだ。言っておくが、お前の助手が作ったというスープを味見したが食えたものではなかったぞ」


 うむ、ナーガの事は問題ない。そもそも、人間を入場させているのだ。今更、食堂に一人いた所で脅威ではない。もっとも、相手がこやつとなると……。


「クリス、もう出てこい。罰は与えぬ。こちらから頼んだことでもあるしな」

「(魔王様……実は、自分のお金で魔王様にお会いしたかったようでして。私もそれを承諾した上で無理やり来ていただいておりますの)」

「なんだ、この前に啖呵を切ったことを気にしておるのか? 年間利用券の試用はお前も承知したであろう?」

「……で、でもやっぱり年間利用券目的で魔王様に会いにくると思われたくなかったんです!!」

「何故だ? タダで楽しめる。それで良いのでないか」

「それでも! 私は! うう……」


 床は野菜の鮮度を保つために少し冷たくなっている。人間の身体には負担も掛かるであろう。
 俺は歩みを進めると、丸うさぎのように小さくなっているクリスの手を握って立たせた。あの怪力からは想像もできないほど、華奢で軽い。


「え、あ。何をするんですか!? 魔王様!?」

「お前が何を憂いているのか正直俺にはわからぬ。だが、試食係は試食係。お前の胃袋が人間の平均であるかいささか心配ではあるが、仕事はこなしてもらう。もちろん報酬は……ナーガ、何かあるか?」

「くねくね小麦粉1kgでどうでしょう。これで家でもパンを焼けますわ」

「クリスもそれで構わないか?」

「は、はひ? い、いです。う、れしいです、でも、下ろしてくださああい」
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