上手な異世界での逃げ方~勇者の私は普通に生活するんで皆さん頑張ってください~

亜久里遊馬

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第9話:逃げるために武器と防具を買います

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 魔王から逃げ出して1時間ほど。私たちは懲りずにカリンガの街にやって来ていた。私は反対したんだけど。


「武器と防具はぜったいここのがいいっすよ! ほら、魔王だって手をつながなきゃわからなかったんすよ。コソコソいけば大丈夫ですって」

「で、でもさあ。普通、この街に戻ってくるって思わない?」

「ご主人。自分が魔王だったら、どこ探すっすか?」

「そりゃあ、この街の先にある……」


 って、そりゃそうか。魔王と会った街に戻るなんて、考えるわけがない。というよりも、先の街のほうが危険だ。


「じゃあ、決まりっすね」


 こうして、私たちは再びラプラスの街に戻ってきた。
果物屋のおばちゃんが言ってたみたいに、道に沿って行くと、いかにもな看板がぶら下がっている。鉄臭い。
 中には、無精髭をはやした頑固そうなおじさんが金属を叩いていた。


「すみませーん。剣と防具欲しいんですけど」

「ん……なんだい嬢ちゃん。冒険者かい?」


 意外に気さくな人だ。このまま話しちゃおう。


「えっと、この剣を打って、さらに短くしてもらえます? あと今着ているのより丈夫そうな鎧が欲しいです」

「剣の打ち直しか。どれ、見せてみな?」

「ふむ……見たことがねえものだな」

「(ちょっとガッツ! 有名なものじゃなかったの?)」

「(俺ぐらいのレベルの者の間じゃ有名ってことっす。そのおっさんなんかじゃ知らないっすよ。領主は変な魔法のことも詳しかったんで、どこかで聞いたみたいっすけど)」

「(知らないのに直してもらうって、できるの)」

「(たぶん、大丈夫じゃないっすか?)」


 酷い投げっぱなし状態だ。でもこのままじゃ、剣はゴミも同然。強いものにはハリボテも同然。やっぱり直してもらおう! 駄目だったらツギハギにしとけばハッタリには使えるし。


「ま、なんとかなるだろ。鎧は……そうだな。嬢ちゃんの体型だったら、そこにあるのなんてどうだい?」


 店主が指し示したのは少し錆びているけど、なんだかとっても良さそうに見える鎧。これしかないって感じがした。


「打ち直しにゃ、1日かかるから明日また来てくんな。鎧は持っていっていいぜ。代金はまとめて後で受け取るからよ」

「わかりました。じゃあ、お願いします!」


 軽く頭を下げて、宿屋へと向かう。せっかくなので宿屋で新しい鎧に着替えてみたい。

 宿はマルス村とは比べ物にならなかった! まさにドラキエの世界!! 今日はゆっくりできそう。


「それでは、鎧のお披露目といきまーす」

「よっご主人かっこいい!!」

「まだ見てないでしょ。さて、もらった鎧を脱いで……新しいのを……ええとどう着ればいいのかな?」


 悩んでいたら、鎧がぴったりと吸い付いてきた。おおーハイテクだあ!!


「うんうん。いいっすねそれ! 俺もそんなのどっかで見ましたよ。あれは確か……」

「ま、思い出さなくてもいいでしょ。さあ、普通の服で買い物に行きましょ!」


 でね。まあ、お約束の展開というわけだよね。


「ガッツ……これ……ぬ、脱げない。脱ごうとすると痛い」

「うーん、やっぱり見たことがあるっすねえ。あ、思い出した!! 呪いの鎧の代表みたいなグルックっすよ」

「もう遅いよ……」


 ガッツに「防御力は高いから」とかなんとか慰められながら、私はげんなりとしてベッドに寝転がった。

 やることが一つ増えちゃった。

 私は、防具からも逃げられませんでした。
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