上手な異世界での逃げ方~勇者の私は普通に生活するんで皆さん頑張ってください~

亜久里遊馬

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第16話:いつか逃げるために転職してもらいます(1)

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 「近い」とガッツは言ってたけど、それはドラゴンの感覚じゃないかな? と今は思う。炎天下の中、私たちはひぃひぃと言いながら歩いていた。照りつける太陽が恨めしい。
 そんな中で、それでも私の側を離れないミラは尊敬する。私としては人間からの熱もシャットダウンしたいんだけど、逃げるとついてくる。

 ミラはとっくに鎧は脱いでいる。中の服装は案外素朴なものだ。田舎、と言っていて、冒険の経験も少しだけ。わりと最近来たのかも。
 
 ちなみに、私はもちろん脱げない。いつもは気を利かせてくれる鎧も、今はただの鉄のかたまりになってしまっていた。
 


「せ、せめて水ないの……水……」

「僕もこんなに遠いと思ってなくて置いてきちゃいましたし……商人ももういないですね」

「じゃあ、ガッツ。魔法で水出してよ~」

「俺は炎属性って知ってますよね? 水魔法は覚えることもできないっす」


 何ともならない……か。勇者の肉体なのだから、水分補給はいらないようにしてくれても良かったのよ。
ほら、強敵と戦う時にのんびりと食事なんかしてられないし……。

 あまりの暑さに、やがて蜃気楼が見えてきた。城とは少し違う。昔のヨーロッパにあった神殿のような建物だ。白い柱と彫刻が見える。……かなりハッキリと見える。


「ガッツ! ちょっと見てきて!! この中で元気なのあんただけなんだから!!」

「了解っす。と言っても俺の目には本物と見えてますが」

「お、おおおーー!!」


 私とミラは声を揃えて言った。若干飛び跳ねている。


「さ、行くわよ!!」

「はい、急いで行きましょう」


 水があると思うと、急に元気が湧き出してくる。私はそのまま、ミラは鎧を持ってガシャンガシャンと揺らしながら走った。


「えーっと、あの神殿って何か決まりあったっすよねえ。なんだろ? ……ま、勇者のご主人には関係ないか」


 後ろでガッツが何か呟いていたけど、私の目標は神殿ただ一つ。

 私は太陽から逃げられたんだ!!
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