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第17話:いつか逃げるために転職してもらいます(2)
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神殿の入口。まだ少し日の当たる場所で、私は神殿の従業員の人と口論していた。早く中に入りたいのに、怖い顔をして扉を守っている。
いっそ殺ってしまおうか。……って何を考えてるんだ、私は。暑さで頭がボーッとしているんだ。実際できるけど、殺っちゃいけないことだ。
「だーかーら、私の仲間が転職して、ついでに私も魔法を覚えたいんです。ここはその場所でしょ?」
「まったくもってその通りですが。貴方様方をお通しすることはできません」
「だって、他の人は入ってるじゃない。なんで私たちだけだめなのよ。あ……もしかしてペット禁止? そういうことなら、外につないでおくけど」
「酷いっすよ、ご主人」
鎧の首のあたりからも汗が染み出してきている。かなり限界に近い。何か入るための条件があるわけよね? それを私たちは満たしてない。
……もしかして、こんな方法じゃ、ないわよね。
「えーと、袖のところが少し汚れてますよ」
「おっと、これは失礼。……さて、入っても大丈夫ですよ」
マジかー!! こんな古典的なことやってるのか。しかも神殿なのに。聖なる場所なのに!
「な、なにをしたんです?」
鎧を引きずりながら、ミラが問いかけてくる。何もわからない、といった顔だ。当然そうだよね。私もミラには純心でいて欲しい。できれば性癖を口に出すのは控えてもらいたいけれど。
「入ったら説明するわ。今はとにかく水を飲みましょ!!」
親切なことに、入り口の脇に水を噴射しているものがあった。足でペダルを踏むと、水が吹き出す。あー、うちの世界にもよくあったヤツだね。人間ってけっこう同じもの作るのかもしれない。
私が喉を潤したあと、ミラが恥ずかしそうにペダルを踏む。やめてー! お願いだから、頬を染めるのはやめてーー!!
なんとか落ち着いた一応ミラにさっきのことを説明した。本当は聞いてほしくないけど、騙されても困るからね。
「――つまり、あの神官はワイロを受け取っているとっ!!」
「しーっ! 大きな声出さないの。聞かれるでしょ?」
「でも、ワイロを出してない人もいましたよね?」
「あれは年間パスポートってやつよ。高いけど買っとけば、出入り自由みたいな」
本当にろくでもない事を考えるなあ。……でも待てよ? 私の世界でも宗教ってお金とってなかったっけ? あんなに堂々とはしていないけど、色々な形で受け取っていたと思う。そうしないと、その宗教自体を運営するお金がなくなるわけで。
あれ……? もしかして自然なの? ワイロありなの?
「ワイロがまかり通っているなど、こんなところで転職なんてできませんよ! ねえ、先輩!!」
「う、うーん。それ考えてたんだけどね。私たちはここで転職したり、魔法を覚えたりするわけじゃない?」
「ええ、そうですが。それが何か?」
「転職って料金かかるんだっけ?」
「そんな話は聞いたことがありませ……あ!!」
「気づいた? つまり、あそこでワイロを受け取って神殿の運営資金にしてるってわけ。どうせなら転職料金とればいいのに。ここの世界の人の考えはわからないなあ」
「う、う……僕は未熟者でした。自分で勝手に思い込んで、憤慨して……騎士失格です……」
泣き出してしまったので、慌てて背中をさする。ちょうど中学1年生ぐらいだっていうから仕方ないわよね。
「さ、気分を切り替えて転職&魔法の習得に行きましょう!! まずはミラの転職からね」
肩を叩いて、手をつなぎながら歩いて行く。ミラのとても喜んでいる反応が直に伝わってくるけど、ここは母性愛的なものだから。大丈夫。
神殿は複雑な作りをしているけど、ガッツが看板代わりになってくれるから、かなり楽だ。
2階にあがって中央の通路を歩いて横に……としているうちに、転職の間についた。1番使われそうなところなのに、なんでこんな場所にあるんだろ?
中は白い花が咲き乱れ、その真ん中に女性が座っている。テーブルとお客用? の椅子もある。
「さ、行ってきなさい」
「が、頑張ります!!」
鼻息荒く出ていったミラは、何かのアンケートに答えるような感じでいくつかの書類に書き込みをし、戻ってきた。
「次、どこ行くの?」
「え、ええと。これで転職終わりです。僕、魔法使いになりました」
「あんな……事務作業で?」
「ご主人、意外と文字の力って凄いんすよ! 言霊っていいますけど、あの女の力が紙に流れて、さらにミラの書き込んだ希望にも力が伝わったんです」
「り、りくつはわからなくもないけど……」
拍子抜けする。これは呆気なさすぎやしないかい?
もっとこう、あるでしょ! 試験とか、資質を見るとか!!
けれど、その思いもミラの手の上を見て無残に打ち砕かれた。
「わ、わあ!! これが魔法なんだあ。炎が勝手に出てくる。小さいけど」
「基本魔法ってヤツだな。転職すると、いくつか魔法や特技がついてくるんだ。こいつはチビファイアボール。正直戦いには使えないけど、焚き火の火をつけるのに役立つぜ」
「は、ははは……」
「……? ご主人? どうかしたっすか?」
「い、いや……何でもないの。じゃ、ミラの上位版魔法と私の魔法も覚えに行きましょ!」
もうノリでいいや。異世界ってこういうものだって思おう。きっと私の魔法もアンケートで覚えるんだろうけど、使えるんだったら途中経過はどうだったいいよ。
とは言っても、正直驚きがなかなか拔けない。
どこかでスポットライトを浴びてる神様。
私は本当にこの異世界の常識から逃げ出せるんでしょうか!?
それとも逃げちゃ駄目なんですか!?
答えは返ってこなかった。
いっそ殺ってしまおうか。……って何を考えてるんだ、私は。暑さで頭がボーッとしているんだ。実際できるけど、殺っちゃいけないことだ。
「だーかーら、私の仲間が転職して、ついでに私も魔法を覚えたいんです。ここはその場所でしょ?」
「まったくもってその通りですが。貴方様方をお通しすることはできません」
「だって、他の人は入ってるじゃない。なんで私たちだけだめなのよ。あ……もしかしてペット禁止? そういうことなら、外につないでおくけど」
「酷いっすよ、ご主人」
鎧の首のあたりからも汗が染み出してきている。かなり限界に近い。何か入るための条件があるわけよね? それを私たちは満たしてない。
……もしかして、こんな方法じゃ、ないわよね。
「えーと、袖のところが少し汚れてますよ」
「おっと、これは失礼。……さて、入っても大丈夫ですよ」
マジかー!! こんな古典的なことやってるのか。しかも神殿なのに。聖なる場所なのに!
「な、なにをしたんです?」
鎧を引きずりながら、ミラが問いかけてくる。何もわからない、といった顔だ。当然そうだよね。私もミラには純心でいて欲しい。できれば性癖を口に出すのは控えてもらいたいけれど。
「入ったら説明するわ。今はとにかく水を飲みましょ!!」
親切なことに、入り口の脇に水を噴射しているものがあった。足でペダルを踏むと、水が吹き出す。あー、うちの世界にもよくあったヤツだね。人間ってけっこう同じもの作るのかもしれない。
私が喉を潤したあと、ミラが恥ずかしそうにペダルを踏む。やめてー! お願いだから、頬を染めるのはやめてーー!!
なんとか落ち着いた一応ミラにさっきのことを説明した。本当は聞いてほしくないけど、騙されても困るからね。
「――つまり、あの神官はワイロを受け取っているとっ!!」
「しーっ! 大きな声出さないの。聞かれるでしょ?」
「でも、ワイロを出してない人もいましたよね?」
「あれは年間パスポートってやつよ。高いけど買っとけば、出入り自由みたいな」
本当にろくでもない事を考えるなあ。……でも待てよ? 私の世界でも宗教ってお金とってなかったっけ? あんなに堂々とはしていないけど、色々な形で受け取っていたと思う。そうしないと、その宗教自体を運営するお金がなくなるわけで。
あれ……? もしかして自然なの? ワイロありなの?
「ワイロがまかり通っているなど、こんなところで転職なんてできませんよ! ねえ、先輩!!」
「う、うーん。それ考えてたんだけどね。私たちはここで転職したり、魔法を覚えたりするわけじゃない?」
「ええ、そうですが。それが何か?」
「転職って料金かかるんだっけ?」
「そんな話は聞いたことがありませ……あ!!」
「気づいた? つまり、あそこでワイロを受け取って神殿の運営資金にしてるってわけ。どうせなら転職料金とればいいのに。ここの世界の人の考えはわからないなあ」
「う、う……僕は未熟者でした。自分で勝手に思い込んで、憤慨して……騎士失格です……」
泣き出してしまったので、慌てて背中をさする。ちょうど中学1年生ぐらいだっていうから仕方ないわよね。
「さ、気分を切り替えて転職&魔法の習得に行きましょう!! まずはミラの転職からね」
肩を叩いて、手をつなぎながら歩いて行く。ミラのとても喜んでいる反応が直に伝わってくるけど、ここは母性愛的なものだから。大丈夫。
神殿は複雑な作りをしているけど、ガッツが看板代わりになってくれるから、かなり楽だ。
2階にあがって中央の通路を歩いて横に……としているうちに、転職の間についた。1番使われそうなところなのに、なんでこんな場所にあるんだろ?
中は白い花が咲き乱れ、その真ん中に女性が座っている。テーブルとお客用? の椅子もある。
「さ、行ってきなさい」
「が、頑張ります!!」
鼻息荒く出ていったミラは、何かのアンケートに答えるような感じでいくつかの書類に書き込みをし、戻ってきた。
「次、どこ行くの?」
「え、ええと。これで転職終わりです。僕、魔法使いになりました」
「あんな……事務作業で?」
「ご主人、意外と文字の力って凄いんすよ! 言霊っていいますけど、あの女の力が紙に流れて、さらにミラの書き込んだ希望にも力が伝わったんです」
「り、りくつはわからなくもないけど……」
拍子抜けする。これは呆気なさすぎやしないかい?
もっとこう、あるでしょ! 試験とか、資質を見るとか!!
けれど、その思いもミラの手の上を見て無残に打ち砕かれた。
「わ、わあ!! これが魔法なんだあ。炎が勝手に出てくる。小さいけど」
「基本魔法ってヤツだな。転職すると、いくつか魔法や特技がついてくるんだ。こいつはチビファイアボール。正直戦いには使えないけど、焚き火の火をつけるのに役立つぜ」
「は、ははは……」
「……? ご主人? どうかしたっすか?」
「い、いや……何でもないの。じゃ、ミラの上位版魔法と私の魔法も覚えに行きましょ!」
もうノリでいいや。異世界ってこういうものだって思おう。きっと私の魔法もアンケートで覚えるんだろうけど、使えるんだったら途中経過はどうだったいいよ。
とは言っても、正直驚きがなかなか拔けない。
どこかでスポットライトを浴びてる神様。
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それとも逃げちゃ駄目なんですか!?
答えは返ってこなかった。
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