上手な異世界での逃げ方~勇者の私は普通に生活するんで皆さん頑張ってください~

亜久里遊馬

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第22話:エルフから逃げますよ!(2)

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「先輩! ナツミ先輩!!」

 ミラに起こされて、目を覚ました。
 起こしてくれるのはいいんだけど、胸のあたりを触ってくるのはやめてくれないかな?
 正直なんだけど、エッチ方面ににも正直すぎるのが玉に瑕。


「ガッツ、回復した? 炎はどのぐらいいけそう?」

「大丈夫っす。いつでもいけますよ。そうっすね……前にご主人が見た炎を50回ぐらいは楽勝っす」

 マジか……。魔王の目を眩ませたあのでっかい炎の塊を50回とか……。心強いけど、ちょっと怖いよ。

 50回もあれば小さな花火大会には十分。正直1発でも相当驚くだろうし。


「ミラの魔法も……大丈夫か。エアだっけ? あの魔法も本来弱いはずなのに、岩石が雲まで飛んでちゃったしね。問題は力加減よ」

「は、はい! 結界の上に落とせば良いんですよね?」

「そうそう、結界が壁みたいになってて上を越えられないなら、壁にぶつけちゃって! それでも十分効果があるから」


 指示をしてから、最後の金属作りに入る。と言っても調子にのって寝る前に作りまくったから、あと少しでいいかな。

 私は落ちてゆく夕日を見つめた。方向としては……やっぱり本来行こうとしていた街道がいいよね。結界は強固だとは思うけど、逆に言えばあそこを壊せばエルフはびびる。


「そう言えばご主人、この作戦自信満々に言ってましたけど、どのぐらい確率あるんすか?」

「へ? あ、ああ。まあ50%は……あるんじゃ、ないかな?」


 だってしょうがないじゃない。わりと行き当たりばったりの作戦なんだから。成功したら儲けものってぐらいよ。

「まー、それぐらいあれば十分っすね」

「そうですね。安心できますー」

 あれ? そうなの? 50%って私の世界じゃ難問よ。フィフティフィティで間違えるひと沢山いるよ。

 そうこうしているうちに、私の準備も整った。金属は十分。一応燃えやすいようにもしゃもしゃにしてるけど、これであってるのかな? すぐに燃え尽きちゃったら驚かすこともできないし。

「えーと、まあミラの十倍ぐらい? の大きさでいいかな。とりあえず。それをぶち込んでみて足りなかったら増やしましょ」

 あとは、気合だけ!

 私たちはガッツのインビジブルをかけて、結界の近くまで忍び寄った。インビジブルは動かなければほぼ完全に姿・気配をけせるけど、多少なら歩いても大丈夫。夜なら、隠密行動にもぴったりだ。

 まさに、ジャパニーズニンジャ!
 ん? これ前にも同じこと思ってたな。
 あれって……。

「(ご主人、ご主人! この場所でいくっす。角度的にも驚くし、火もつけやすい)」

「(よーし、ミラ。ばーんとやっちゃってー!!)」

 私の号令に合わせて金属片が飛んで行く。ふわふわっとではなく、恐ろしいスピードで、音もなく。
 空中でピタッととまったそれに、エルフは誰も気がついていないようだった。

 ……正直職人さんには申し訳ないけど……異世界の日本代表としてどーんといっちゃえっ!!

 金属を指し示し、合図を送るとガッツが少しだけ飛び立ち……そして巨大な炎をぶつけた。
 それは魔王の時よりは小さかったが火付け材料としては十分だ!

 火がついた金属は、燃えて、きれいな色を空に振りまく。

「たーまーやー!!」

「せ、せんぱい。なんですか、それ!?」

「私たちのとこの風習ね。なんか花火が上がる時こう叫ぶんだよ」

 皆で「たーまーやー」と言いながら、次々と花火の元を投げ込んでいく。あちこちから叫び声や子どもの泣く声が聞える。

 うっわー。精神的にこれは辛いわ。いくら実害ないって言ってもね……まあ、今回は私たちを助けると思って、あきらめてちょうだい。

 私は……逃げなきゃいけないんだから!!

「ご主人、結界壊れたっす!!」

「よし、つっこめー!!」

 運の良いことに、街道沿いに足止めされていた人間たちもいて、それに紛れて私たちは走ることができた。

 よし! もう少し――!!

「待て! 人間よ!!」

 私たちの逃亡を止める、男の声が聞こえた。
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