魔王見習いは、最強魔王を超えるか

亜久里遊馬

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プロローグ

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「どうぞ、こちらに腰掛けてくださいね。これから面談を始めますから。なお、この面談は私――クラリスが担当させていただきます」

 白い基調の部屋。ストライプの木目がアクセントになっている。
 俺の前には会議室によくある長机と、受付のお姉さんがいた。
 いや、受付と決めつけることはできないんだけど、どうしてもそのイメージが強い。

 でも本人が面談というのならば、違うのだろうか?

 金髪は艷やかでシトラスの香りがする。
 赤フレームの眼鏡の奥には知的な瞳があった。
 グレーのスーツは仕事用なのだろうか? どちらにしても似合ってる。
 クラリスと言う名前はハーフか何かかもしれない。
 
 言われるがままに椅子へと座り彼女と向き合った。緊張する。

「では、葛西龍二さん。こちらにある、死亡を認める念書に拇印を。インクを置いてありますので」

 「はい」と答えて指をインクにつけた時、ふと気づいた。
 死亡を認める念書とはなんだろう?
 俺の思いを見透かしたように、クラリスさんが言う。

「大変申し訳無いのですが、貴方は亡くなってしまいまして、こちらの念書に拇印を押した上で天国、地獄等に行っていただくこととなります」

「死んだ!? 俺がですか!! そんな事あるわけが……だって昨日もまっすぐ家に帰って……」

「途中で信号を無視したスポーツカーに轢かれてしまいまして……本当にご愁傷様です」

 ――横断歩道を渡る俺。帰って録りためていたアニメを見ようと思っていた気がする。
 その後、突然の光と、衝撃があって……
 ああ、段々と思い出してきた。

「あのスポーツカーの野郎! よくも俺を殺したな!! 復讐してやりたいけど……あの、幽霊なんかになれませんかね?」

「幽霊にはなれませんが、その点に関しては大丈夫かと思います。スポーツカーの運転手は先ほどこちらにやってきて、地獄へと案内されていきました」

「そ、そうっすか」

 敵を見失ってしまうと怒りをどこにぶつけていいのかわからなくなる。
 クラリスさんには、さすがに暴言は吐けないけど。

「はあ、それにしても高校2年で俺の人生終わっちまうのかあ。やり残したってほどの事はないけど、やっぱり残念だな」

 そう、天井を見上げて呟くとクラリスさんが2枚の別の紙を持ち出して来た。

「若い方はそうでないといけませんね。先ほど天国、地獄等と言いましたが、この『等』という中に特例がありまして」

 目を彼女へと戻す。
 特例って……もしかして1年ぐらいは寝込まなきゃいけないけど、生き返る事ができるとか?
 あ、でも死亡の念書を書くわけだからそれはないのか。

「私たちの死亡確認組織も、未成年に対しては特別な措置をとっているのです。ほら、あなたの国にもあるでしょう」

 あったなー。とても叩かれてたけど。
 クラリスさんってお役所仕事やってるんだな。

「あなたに与えられる2つの選択肢は、勇者か魔王ですね。天国と地獄に合わせて作られました。それぞれ、特別なスキルが与えられまして……詳しくはこちらをお読みください」

 紙を手に取り、流し見する。
 たたんでポケットにしまった。
 ちなみに服は轢かれる『前』の服だ。

「へぇーすごいっすね。そんな事やってるんだ」

 俺は自分でも驚くほどの勢いで拇印を押した。
 勇者と魔王!? これ夢じゃないよね。
 死んでるから夢見ないと思うけど、本当だよね!

「では、特例措置を受けられるということで。どちらになさいますか?」

「それはもちろん……」

 決まっている! 転生できるのならば、恰好の良い方。古ーい言い方なら正義のヒーロー。

「勇者でっ、勇者でお願いしますっ!」

 俺は拇印を押した。そう、右にあった、はずの勇者の紙へと。
 ……さっき勢い良く念書に拇印を押したせいで、勇者の紙は床に落ちていた。
 つまり……

「ちょ、ちょっと待って下さい! 新しい紙ください!! 勇者の紙に拇印押すんで!!」

「そうしてあげたいのは山々なんですが、一度押してしまうと無効にできないんですよ」

 お役所仕事より悪いぞ、それ!
 詐欺に近いセールスマンじゃないか!!

「では、お気をつけて行ってらっしゃいませー」

 俺の椅子の下に穴が開いた。笑顔で見送るクラリスさん。

「誰だ! 魔王なんて選択肢作ったやつはーー!!」

 そう叫びながら、俺はどこまで続くかわからない穴を落ちていった。
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