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1章:俺は魔王見習いのようです
第1話:行き倒れ状態で発見される
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スープの匂いがする。これは幻覚だ。森林を彷徨っていた俺にはわかる。
----------
転生、というものは多少は便利なところに送られるはずだ。
送られるべきだ、と俺は思う。
ただでさえ、魔王という役職を背負わされた俺にとって、森林スタートはあり得ない。
魔王城によくある、あの豪華な椅子で目を覚ますのが常識というものだろう。
穴に落ちた後、数分かそれとも数時間か暗闇の中を流れて、乾いた木の上に着地した。衝撃はそれほどなかったが、俺をおいていくように、黒い穴は収縮していき、やがて点となり消えた。
「おいっ! おいっ!! 待てって! 待ってくだいお願いします!!」
何度頼んでも助けは来ない。
深くどこまでも木々が続いていく森の中、俺は1人取り残されていた。
「まじかよ、これ。異世界で森林とか、絶対モンスターいるじゃん。数歩歩いたら強敵エンカウントの運ゲーじゃん!」
周囲をさっと見回してみる。
俺が落ちた場所だけ草がへこんでいる他は、踏み潰された跡はなかった。
今のところ、ここを通った巨大モンスターはいないと言えるのか?
ただ、木々を渡り歩いたり、空を飛ぶものは別だ。 そのようなモンスターに出会ったら……とりあえず死んだふりをするしかないか……?
ど、どこかに道は見えないか?
できればモンスターじゃない、人間の足跡が見えないか?
あるいは攻撃できるものは!?
そう、モンスターに出会ってしまった時に撃退できれば何の問題もない。
ん、そう言えばあれがあった!
やったぜ俺!
たぶん、ほぼ無敵じゃないか?
ポケットから紙をを取り出す。
誤って魔王転生の書類に拇印を押してしまった後も、この紙――スキル表は返さずにポケットに入れていたのだ。
折り曲げて入るぐらいだから、大きなものじゃない。
ノート2~3枚分ってところか。
さあて、ここに空を飛んだり、モンスターを一撃で倒したりするようなチート級のスキルが載ってるはずだ。
だって魔王だもの。
俺は折りたたまれていたスキル表を広げてみた。
普通は左上にスキルがのっているはず……。
「あ、あれれれ。おかしいぞ。俺の目が疲れてるんだな、そうに違いない!」
誰に話しかけるでもなく、自分自身に問いかける。
俺は魔王を選択した、それは間違いない。
そしてクラリスさんは勇者や魔王には特別なスキルがあると言っていた。
これも間違いない。
けれど……もらった紙は白紙だ。
紙を火であぶったら出てくるようなものだろうか? ……そんな事する必要ないよな。
深呼吸してから、もう一度目を凝らして見てみる。
お、完全な白紙じゃない。
左上の隅に何か書いてある。
『魔王のスキルはモンスターを部下にする毎に増え、強力になっていきます。まずは、基本スキル「威圧」を使って、部下を増やしていきましょう』
「ほうほう、なるほどね。じゃあ、その辺りのモンスターに威圧を使えばいいわけだ。……威圧のいの字も載ってないよな……」
不良品を掴まされた!!
そうだよ、セールスマン的な仕事だもん。
そりゃ、不良品もいっぱいあるよね。
むしろ在庫処分する勢いだよね。
とりあえずこんな紙、ゴミだ! 捨てちまおう!!
と、ぽいっと近くに捨ててから慌てて拾い上げる。
よく考えたら、威圧を使わないで部下を増やせばスキルも増える……可能性があるわけだ。
不良品だけど、可能性はある。
ただ、今俺が森の中にいて何も力を持っていない事実は変わらない。
ゴブリンぐらいなら、言葉巧みに部下にできるかな?
今は腕力よりは、言葉で解決したい。
大丈夫だ!
楽しい話を聞かせて部下にするんだ!
ポケットにしまい込むと、俺は先の見えない木々の間を慎重に歩いていった。
南国のように果物がなっているわけでもなく、ただの木が続いている。
肉が食べたいけど、俺ってサバイバルな感じで兎とかさばけるかな?
ああ……それ以前にナイフ持ってないか。
同じような場所をぐるぐると回っているような感じがする。
真っすぐ行けば、いつかは森の外にでるはず。方向はまったくわからないけど。
「この場所に落とすなら、せめて非常用セットでもつけてくれよ」
なんてぶつぶつと呟きながら1日ほど。
俺の足は棒のようになっていたが、やっと、獣道のような場所を見つけた。
「どうかモンスターは来ないで! どうかどうか!!」
と祈っていると、道のすぐ横に『カリンガの実、ご自由にお取りください』と看板が立っていた。
一気に疲れが吹き飛んだ。
食い物だ! 食い物があるぞー!!
以前財布に50円しか入ってなかった時の事を思い出しながら、木の枝を見ていく。
ふんふん。
この匂いからしてりんごに近いものかな?
枝がかなり太い! これは大きな果物が!?
と木の周囲をくまなく見て回った。
……皆ご自由に取りすぎてるね。
一つも残ってなかった。
いや、まだだ。
こんな事で俺はめげない。
看板があるという事は、これを立てた人がいるということ。
この森の中を歩き回るより、ここで待っていた方が確実だ。
1日目:誰も来ないが、まあすぐには来ないよなと寝転んで待つ。
2日目:木を離れて入れ違いになるかもしれないので、少しでも体力を保つために眠る
3日目:食べ物……
4日目:せめて、水、水……もう朝露ないよ
5日目:……
そして、たぶんそのまま気絶したわけだ。
5日間も待っても誰も来なかったんだ。
もう俺には生きる気力も体力も残っていなかった。
これは、再び天から迎えがきているに違いない。
「……あのー、もしかして目を覚まされましたか?」
ずいぶんと優しい声だ。天使だろう。
俺は、そんなに悪い事はやっていないからな。
「もしもーし、聞こえてますかー!?」
やかましい天使もいるもんだな。
そのまま、天国まで直行してくれればいいのに。
「お水、飲みます?」
「水!!」
飛び起きた俺の隣には、少女が見えた。
ただ、下を見ると、タコみたいな吸盤のついた足がうねうねと動いていた。
そうだ、異世界お決まりのモンスター娘だ。
俺、こういう異世界がいいって死ぬ前に思ってるんだな。
「走馬灯ってやつか? ま、もう俺死んじゃうし、何もすることはできないけど、最期に可愛い女の子が見れたからいいか」
「え、可愛いなんて……そんな……」
すげえリアルな走馬灯だな。
うねる足の動きもそうだけど、青い皮膚で頬を赤らめた少女。
髪は青い肌とは対象的に長く透き通った桃色だ。
耳は少し大きく横向きに垂れている。
顔は身体に対して小さく、特に茶色で大きな目が印象的だった。
……俺の想像していたモンスター娘より数十倍可愛い。
手をモジモジと動かしながら、照れている表情もGoodだ!
ただ……俺の知識じゃこういうモンスターって見たことないんだよな。
見たことないものが走馬灯に現れるってあり得るんだろうか?
下半身が蛇のモンスターから連想したとか?
彼女は俺の凝視をものともせず、微笑んで言った。
「では、お水をどうぞ」
「どうも」
コップを受け取って飲み干す。
くぅー! 身体に染み渡る!!
水がこんなに美味いなんて信じられない!!
もう一度コップを差し出す。
「あのー、おかわりもらえます?」
「はい、今入れますね……どうぞ。ゆっくり飲んでくださいね」
優しいなあ。
こんな娘に看取られるなら本望だ。
言われたとおりに、今度はゆっくりと飲む。
水道水とも、ミネラルウォーターとも違った感じかな。
爽やかな匂いと微かに甘い味。
「じゃ、もう一杯……って!」
……ん?
走馬灯にしてはいくらなんでも長すぎだろう。
「……俺もしかして生きてます? ここ現実? 天国じゃなくて?」
「は、はあ、現実ですが。ここは仮の魔王城となっています……。魔王様が貴方が倒れているのを見つけて運ばれてきたのです」
「おお、おおおおお!!」
俺は生きている喜びを、今確かに感じている!
ただ、同時に変な言葉も聞こえた!
「魔王様?」
「はい。先日、勇者と戦ったんですけど、それはもうお強くて。ただ、お城は壊れちゃいました」
待て待て。
俺の聞き間違いに違いないが、情報を整理しよう。
俺は食い物も、おそらく水もなくなって倒れていた。
そこに偶然、魔王が通りがかった。
魔王は、俺を仮の魔王城に連れてきた。
なんか魔王と勇者は戦ったらしくて、城はもう無い。
……なんで!
ねえ、なんで魔王がいるの!?
俺、魔王として転生してきたんだよね?
しかも、城ないの?
潰れちゃったの?
勇者と魔王の戦い、もう終わってるの?
……俺、なんでここにいるの?
魔王として転生してきた俺の存在が、真っ向から否定された。
というか、クラリスさんが務めてるところ、ろく現地の情報調べずに俺を送り込んできたのか。
途端に力が拔けてきた。
コップをテーブルに置いて再びベッドに横になる。
顔は仰向けではなく、彼女の方向を向いている。
せめて目の保養をしなければやってられない。
「何故か、気を落とされているようですが……」
「あ、いいです。気にしないで。ちょっとした事情があるだけだから」
「では、スープはいかがでしょう。まだ普通のお料理は無理だと思いますので、具の少しあるスープを持ってきたんです」
笑顔で彼女が机に置いてくれたスープ。
せっかくなので、起き上がって口をつける。
ああ……生き返る。俺死んでたけど。
最初に気づいたのって、この匂いだったのか……。
天井白いな。転生する時の部屋みたいだ……。
……なんか、もうどうでもよくなってきたな。
「良かったです、お口にあったようで。こちらもおかわりをお持ち――あ!?」
「なにー? どうしたのー?」
ベッドから足をおろしてぶらぶらと揺らす。
言葉もなげやりになってきた。
「魔王様がいらっしゃいました」
へ!?
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転生、というものは多少は便利なところに送られるはずだ。
送られるべきだ、と俺は思う。
ただでさえ、魔王という役職を背負わされた俺にとって、森林スタートはあり得ない。
魔王城によくある、あの豪華な椅子で目を覚ますのが常識というものだろう。
穴に落ちた後、数分かそれとも数時間か暗闇の中を流れて、乾いた木の上に着地した。衝撃はそれほどなかったが、俺をおいていくように、黒い穴は収縮していき、やがて点となり消えた。
「おいっ! おいっ!! 待てって! 待ってくだいお願いします!!」
何度頼んでも助けは来ない。
深くどこまでも木々が続いていく森の中、俺は1人取り残されていた。
「まじかよ、これ。異世界で森林とか、絶対モンスターいるじゃん。数歩歩いたら強敵エンカウントの運ゲーじゃん!」
周囲をさっと見回してみる。
俺が落ちた場所だけ草がへこんでいる他は、踏み潰された跡はなかった。
今のところ、ここを通った巨大モンスターはいないと言えるのか?
ただ、木々を渡り歩いたり、空を飛ぶものは別だ。 そのようなモンスターに出会ったら……とりあえず死んだふりをするしかないか……?
ど、どこかに道は見えないか?
できればモンスターじゃない、人間の足跡が見えないか?
あるいは攻撃できるものは!?
そう、モンスターに出会ってしまった時に撃退できれば何の問題もない。
ん、そう言えばあれがあった!
やったぜ俺!
たぶん、ほぼ無敵じゃないか?
ポケットから紙をを取り出す。
誤って魔王転生の書類に拇印を押してしまった後も、この紙――スキル表は返さずにポケットに入れていたのだ。
折り曲げて入るぐらいだから、大きなものじゃない。
ノート2~3枚分ってところか。
さあて、ここに空を飛んだり、モンスターを一撃で倒したりするようなチート級のスキルが載ってるはずだ。
だって魔王だもの。
俺は折りたたまれていたスキル表を広げてみた。
普通は左上にスキルがのっているはず……。
「あ、あれれれ。おかしいぞ。俺の目が疲れてるんだな、そうに違いない!」
誰に話しかけるでもなく、自分自身に問いかける。
俺は魔王を選択した、それは間違いない。
そしてクラリスさんは勇者や魔王には特別なスキルがあると言っていた。
これも間違いない。
けれど……もらった紙は白紙だ。
紙を火であぶったら出てくるようなものだろうか? ……そんな事する必要ないよな。
深呼吸してから、もう一度目を凝らして見てみる。
お、完全な白紙じゃない。
左上の隅に何か書いてある。
『魔王のスキルはモンスターを部下にする毎に増え、強力になっていきます。まずは、基本スキル「威圧」を使って、部下を増やしていきましょう』
「ほうほう、なるほどね。じゃあ、その辺りのモンスターに威圧を使えばいいわけだ。……威圧のいの字も載ってないよな……」
不良品を掴まされた!!
そうだよ、セールスマン的な仕事だもん。
そりゃ、不良品もいっぱいあるよね。
むしろ在庫処分する勢いだよね。
とりあえずこんな紙、ゴミだ! 捨てちまおう!!
と、ぽいっと近くに捨ててから慌てて拾い上げる。
よく考えたら、威圧を使わないで部下を増やせばスキルも増える……可能性があるわけだ。
不良品だけど、可能性はある。
ただ、今俺が森の中にいて何も力を持っていない事実は変わらない。
ゴブリンぐらいなら、言葉巧みに部下にできるかな?
今は腕力よりは、言葉で解決したい。
大丈夫だ!
楽しい話を聞かせて部下にするんだ!
ポケットにしまい込むと、俺は先の見えない木々の間を慎重に歩いていった。
南国のように果物がなっているわけでもなく、ただの木が続いている。
肉が食べたいけど、俺ってサバイバルな感じで兎とかさばけるかな?
ああ……それ以前にナイフ持ってないか。
同じような場所をぐるぐると回っているような感じがする。
真っすぐ行けば、いつかは森の外にでるはず。方向はまったくわからないけど。
「この場所に落とすなら、せめて非常用セットでもつけてくれよ」
なんてぶつぶつと呟きながら1日ほど。
俺の足は棒のようになっていたが、やっと、獣道のような場所を見つけた。
「どうかモンスターは来ないで! どうかどうか!!」
と祈っていると、道のすぐ横に『カリンガの実、ご自由にお取りください』と看板が立っていた。
一気に疲れが吹き飛んだ。
食い物だ! 食い物があるぞー!!
以前財布に50円しか入ってなかった時の事を思い出しながら、木の枝を見ていく。
ふんふん。
この匂いからしてりんごに近いものかな?
枝がかなり太い! これは大きな果物が!?
と木の周囲をくまなく見て回った。
……皆ご自由に取りすぎてるね。
一つも残ってなかった。
いや、まだだ。
こんな事で俺はめげない。
看板があるという事は、これを立てた人がいるということ。
この森の中を歩き回るより、ここで待っていた方が確実だ。
1日目:誰も来ないが、まあすぐには来ないよなと寝転んで待つ。
2日目:木を離れて入れ違いになるかもしれないので、少しでも体力を保つために眠る
3日目:食べ物……
4日目:せめて、水、水……もう朝露ないよ
5日目:……
そして、たぶんそのまま気絶したわけだ。
5日間も待っても誰も来なかったんだ。
もう俺には生きる気力も体力も残っていなかった。
これは、再び天から迎えがきているに違いない。
「……あのー、もしかして目を覚まされましたか?」
ずいぶんと優しい声だ。天使だろう。
俺は、そんなに悪い事はやっていないからな。
「もしもーし、聞こえてますかー!?」
やかましい天使もいるもんだな。
そのまま、天国まで直行してくれればいいのに。
「お水、飲みます?」
「水!!」
飛び起きた俺の隣には、少女が見えた。
ただ、下を見ると、タコみたいな吸盤のついた足がうねうねと動いていた。
そうだ、異世界お決まりのモンスター娘だ。
俺、こういう異世界がいいって死ぬ前に思ってるんだな。
「走馬灯ってやつか? ま、もう俺死んじゃうし、何もすることはできないけど、最期に可愛い女の子が見れたからいいか」
「え、可愛いなんて……そんな……」
すげえリアルな走馬灯だな。
うねる足の動きもそうだけど、青い皮膚で頬を赤らめた少女。
髪は青い肌とは対象的に長く透き通った桃色だ。
耳は少し大きく横向きに垂れている。
顔は身体に対して小さく、特に茶色で大きな目が印象的だった。
……俺の想像していたモンスター娘より数十倍可愛い。
手をモジモジと動かしながら、照れている表情もGoodだ!
ただ……俺の知識じゃこういうモンスターって見たことないんだよな。
見たことないものが走馬灯に現れるってあり得るんだろうか?
下半身が蛇のモンスターから連想したとか?
彼女は俺の凝視をものともせず、微笑んで言った。
「では、お水をどうぞ」
「どうも」
コップを受け取って飲み干す。
くぅー! 身体に染み渡る!!
水がこんなに美味いなんて信じられない!!
もう一度コップを差し出す。
「あのー、おかわりもらえます?」
「はい、今入れますね……どうぞ。ゆっくり飲んでくださいね」
優しいなあ。
こんな娘に看取られるなら本望だ。
言われたとおりに、今度はゆっくりと飲む。
水道水とも、ミネラルウォーターとも違った感じかな。
爽やかな匂いと微かに甘い味。
「じゃ、もう一杯……って!」
……ん?
走馬灯にしてはいくらなんでも長すぎだろう。
「……俺もしかして生きてます? ここ現実? 天国じゃなくて?」
「は、はあ、現実ですが。ここは仮の魔王城となっています……。魔王様が貴方が倒れているのを見つけて運ばれてきたのです」
「おお、おおおおお!!」
俺は生きている喜びを、今確かに感じている!
ただ、同時に変な言葉も聞こえた!
「魔王様?」
「はい。先日、勇者と戦ったんですけど、それはもうお強くて。ただ、お城は壊れちゃいました」
待て待て。
俺の聞き間違いに違いないが、情報を整理しよう。
俺は食い物も、おそらく水もなくなって倒れていた。
そこに偶然、魔王が通りがかった。
魔王は、俺を仮の魔王城に連れてきた。
なんか魔王と勇者は戦ったらしくて、城はもう無い。
……なんで!
ねえ、なんで魔王がいるの!?
俺、魔王として転生してきたんだよね?
しかも、城ないの?
潰れちゃったの?
勇者と魔王の戦い、もう終わってるの?
……俺、なんでここにいるの?
魔王として転生してきた俺の存在が、真っ向から否定された。
というか、クラリスさんが務めてるところ、ろく現地の情報調べずに俺を送り込んできたのか。
途端に力が拔けてきた。
コップをテーブルに置いて再びベッドに横になる。
顔は仰向けではなく、彼女の方向を向いている。
せめて目の保養をしなければやってられない。
「何故か、気を落とされているようですが……」
「あ、いいです。気にしないで。ちょっとした事情があるだけだから」
「では、スープはいかがでしょう。まだ普通のお料理は無理だと思いますので、具の少しあるスープを持ってきたんです」
笑顔で彼女が机に置いてくれたスープ。
せっかくなので、起き上がって口をつける。
ああ……生き返る。俺死んでたけど。
最初に気づいたのって、この匂いだったのか……。
天井白いな。転生する時の部屋みたいだ……。
……なんか、もうどうでもよくなってきたな。
「良かったです、お口にあったようで。こちらもおかわりをお持ち――あ!?」
「なにー? どうしたのー?」
ベッドから足をおろしてぶらぶらと揺らす。
言葉もなげやりになってきた。
「魔王様がいらっしゃいました」
へ!?
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