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1章:俺は魔王見習いのようです
第10話:勇者と密談する(2)~真実~
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「――大事なことだ……僕は……勇者じゃない」
んんー!?
今さらりと凄いこと言ったぞこいつ。
「はあ!? そりゃあ、今は仲良く魔王と城を作ってるんだから勇者とは言えないかもな」
キラクが声を荒げ、机を叩いた。
かなり丈夫な木製の机が凹む。
やっぱり勇者の力はすげーわ。
でも、俺が勇者だと思っていても、こいつは自分を勇者じゃないって言い張る。
自分の言葉で何かを思い出してしまったのか、目が充血し、今にも泣きそうに見える。
どういうことだ?
「僕は、勇者ではなく……戦士だった。勇者は別にいる。それをアイツ……魔王には知られるわけにはいかない」
「せん……し……どういうことだ!?」
突然何を言い出すんだ?
勇者ではなくて戦士。
戦士というのも重要な役目だ。
パーティーの盾として、敵の攻撃を受け止めなければならない。
いずれ、魔法を身につけ、様々な特技を極めていくことで限りなく勇者に近づくことはできるかもしれない。
だが……そこには彼女とは別に勇者と呼ばれる者がいた。
彼女は決して勇者にはなれない。
「僕らは4人パーティーだった。勇者、魔法使い、僧侶、そして戦士の僕。自分でいうのもなんだけど、いいパーティーだったと思う。皆、戦いの中に余裕があった。安心感があった。僕たちなら出来ると信じていた。……でもね……やはり魔王は別格なんだ。最後の決戦の時、僕たちは酷い恐怖を感じていた。魔王は、特定の敵には容赦しないから」
いくら勇者と言っても、魔王を前に平然としていられるわけがない。
俺はあの馬鹿な状態の魔王しか知らない。
だが……どこの世界でも魔王は人々に恐怖を与えるものと決まっている。
キラクは歯を食いしばり、ベッドに腰掛け直すと息を吐く。
この感情は、恐怖……ではないと思った。
「そして……魔王の前に来た時、勇者が小声で言ったんだ。魔法を使って、ここから逃げよう、と」
「な、に……」
そんな勇者があり得るのか?
皆に選ばれた英雄だぞ?
俺だったら逃げるから強いことは言えないけど……それって勇者なのか?
「僕は止めたけど、3人は帰ってしまった。でも、そこで帰ってどうなるっていうんだ! もう一度勇者が現れるのを待つのか!? 同じことを繰り返して、いつまでも人々を恐怖に曝しておくのか!?」
熱くなっている少女の横に座りなだめる。胸に軽くふれるもの。彼女は俺の胸に頭をおき、
「ごめん」と言った。
しばらくすると、息も整ったのか、話を続ける。
「僕と魔王は戦い、ほぼ相打ち。たぶん運が良かったと思うんだけど、魔王は急所を外した。対して、僕の剣は急所に突き刺さった」
戦士1人でか……?
そんな事普通はあり得ない。
余裕、安心感、出来ると信じていた……。
もしかしたら、勇者パーティーの功績は全部キラクがやったことなんじゃないか?
「その時魔王は言ったんだ。お前のような勇敢な者……勇者に負けるのなら本望だと。仲間を逃し、一人だけ戦う様、そこだけは認めてやる、とね」
そういう事か……。
俺にも、やっと事情が飲み込めてきた。
勇者が追い出されたんじゃない。
勇者の真実を知っているから、キラクが追い出されたんだ。
「魔王が特定の敵には容赦しないってさっき言っただろ? もし逃げた中に勇者がいて、今も匿われていると知ったら、どうすると思う?」
「なるほど……な。それは魔王にゃ言えないわな。あいつの目を見たらわかる。本当にやると決断した時、きっとあいつは言葉通りにやる。……もしかしたら、国ごと滅ぼすかもしれない。歯止めがかかってくれればいいが……その話だったら、厳しいな。良くて城ごと破壊だ」
俺だって胸糞悪いんだ!!
魔王が逃げ出した3人の中に勇者がいたなんて知ったら激怒する。
キラクという、少女1人を置き去りにしたんだから。
「そう、だから人間として頼んだんだ。リュウジは人間なのに『魔王見習い』。人間でもあって、モンスターでもある。だから、きっとこの事を人間の視点からも理解してくれると思って」
くっそー、聞いちまった!
聞いちまったよ!!
もう逃げられねえじゃないか。
キラクの目を見て、それでも裏切るなんて、俺には無理だ。
「つまり、この情報が魔王に渡らないように情報規制をする……ってことか。でも、それじゃ危ういな。あまり厳重に情報も守ってちゃ、バレた時に本当だとすぐに信じる」
「じゃあ、どうすれば良いっていうのさ!」
またキラクが熱くなる。
ここは……俺だ。
俺が冷静にならなきゃだめだ。
深呼吸をして、頭を整理する。
もう一度彼女をゆっくりと見てみる
なんか後輩みたいだな。
結局、戦士だとしても、勇者だと思われたとしても、少女は少女だ。
やっぱり俺みたいに怖がるし、怒る、困る。
じゃ、先輩としてやってやんなきゃね。
だって俺ってば異世界人で『魔王の見習い』なんだから。
「いっそ、情報バンバン出しまくろう」
張り詰めていた緊張の糸が一瞬でゆるくなる。
「ええ!? 何言ってんの!! 僕の話聞いてた?」
「聞いてたよお。だから、色んな偽情報をとにかく魔王に伝えるってわけだ。本当っぽいものから、馬鹿馬鹿しいものまで。俺たちの世界だと、情報が多すぎてどれが本物かわからなくなることってよくあるんだわ」
まあ、ネットなんだけどね。
身体に良い食べ物とか、サイトによって全然違うし。
3chの話なんてこんがらがってわからなくなる。
「俺たちの世界?」
「あ、いや俺のいた村のことね。子供の頃、そこが世界だって思ってたから」
「俺に任せておいて。メイドの仕事に戻りなよ。正直、ベッドメイクまだまだだぞ!」
キラクは怒るようなホッとしたような複雑な顔で帰っていった。
ベッドをぐちゃぐちゃにして。
最後に少し言ってやりたかったな。
例え、キラクが戦士だったとしても、俺は『勇者』だって信じる、と。
ま、真面目モードはここまでだ!
暗くなってどうにかなるわけじゃない!!
さあ、俺の世界の知識……。
できればスキルも使ってやっちゃいますか!?
『魔王の見習い』の初仕事が魔王を騙すことってのも笑えるな。
まずは噂をばらまくか。
とりあえず動いていけば、何か見えてくるさ。
俺の良いところは、どこでも楽しむこと。
それに加えて順応性が高いところだからな。
んんー!?
今さらりと凄いこと言ったぞこいつ。
「はあ!? そりゃあ、今は仲良く魔王と城を作ってるんだから勇者とは言えないかもな」
キラクが声を荒げ、机を叩いた。
かなり丈夫な木製の机が凹む。
やっぱり勇者の力はすげーわ。
でも、俺が勇者だと思っていても、こいつは自分を勇者じゃないって言い張る。
自分の言葉で何かを思い出してしまったのか、目が充血し、今にも泣きそうに見える。
どういうことだ?
「僕は、勇者ではなく……戦士だった。勇者は別にいる。それをアイツ……魔王には知られるわけにはいかない」
「せん……し……どういうことだ!?」
突然何を言い出すんだ?
勇者ではなくて戦士。
戦士というのも重要な役目だ。
パーティーの盾として、敵の攻撃を受け止めなければならない。
いずれ、魔法を身につけ、様々な特技を極めていくことで限りなく勇者に近づくことはできるかもしれない。
だが……そこには彼女とは別に勇者と呼ばれる者がいた。
彼女は決して勇者にはなれない。
「僕らは4人パーティーだった。勇者、魔法使い、僧侶、そして戦士の僕。自分でいうのもなんだけど、いいパーティーだったと思う。皆、戦いの中に余裕があった。安心感があった。僕たちなら出来ると信じていた。……でもね……やはり魔王は別格なんだ。最後の決戦の時、僕たちは酷い恐怖を感じていた。魔王は、特定の敵には容赦しないから」
いくら勇者と言っても、魔王を前に平然としていられるわけがない。
俺はあの馬鹿な状態の魔王しか知らない。
だが……どこの世界でも魔王は人々に恐怖を与えるものと決まっている。
キラクは歯を食いしばり、ベッドに腰掛け直すと息を吐く。
この感情は、恐怖……ではないと思った。
「そして……魔王の前に来た時、勇者が小声で言ったんだ。魔法を使って、ここから逃げよう、と」
「な、に……」
そんな勇者があり得るのか?
皆に選ばれた英雄だぞ?
俺だったら逃げるから強いことは言えないけど……それって勇者なのか?
「僕は止めたけど、3人は帰ってしまった。でも、そこで帰ってどうなるっていうんだ! もう一度勇者が現れるのを待つのか!? 同じことを繰り返して、いつまでも人々を恐怖に曝しておくのか!?」
熱くなっている少女の横に座りなだめる。胸に軽くふれるもの。彼女は俺の胸に頭をおき、
「ごめん」と言った。
しばらくすると、息も整ったのか、話を続ける。
「僕と魔王は戦い、ほぼ相打ち。たぶん運が良かったと思うんだけど、魔王は急所を外した。対して、僕の剣は急所に突き刺さった」
戦士1人でか……?
そんな事普通はあり得ない。
余裕、安心感、出来ると信じていた……。
もしかしたら、勇者パーティーの功績は全部キラクがやったことなんじゃないか?
「その時魔王は言ったんだ。お前のような勇敢な者……勇者に負けるのなら本望だと。仲間を逃し、一人だけ戦う様、そこだけは認めてやる、とね」
そういう事か……。
俺にも、やっと事情が飲み込めてきた。
勇者が追い出されたんじゃない。
勇者の真実を知っているから、キラクが追い出されたんだ。
「魔王が特定の敵には容赦しないってさっき言っただろ? もし逃げた中に勇者がいて、今も匿われていると知ったら、どうすると思う?」
「なるほど……な。それは魔王にゃ言えないわな。あいつの目を見たらわかる。本当にやると決断した時、きっとあいつは言葉通りにやる。……もしかしたら、国ごと滅ぼすかもしれない。歯止めがかかってくれればいいが……その話だったら、厳しいな。良くて城ごと破壊だ」
俺だって胸糞悪いんだ!!
魔王が逃げ出した3人の中に勇者がいたなんて知ったら激怒する。
キラクという、少女1人を置き去りにしたんだから。
「そう、だから人間として頼んだんだ。リュウジは人間なのに『魔王見習い』。人間でもあって、モンスターでもある。だから、きっとこの事を人間の視点からも理解してくれると思って」
くっそー、聞いちまった!
聞いちまったよ!!
もう逃げられねえじゃないか。
キラクの目を見て、それでも裏切るなんて、俺には無理だ。
「つまり、この情報が魔王に渡らないように情報規制をする……ってことか。でも、それじゃ危ういな。あまり厳重に情報も守ってちゃ、バレた時に本当だとすぐに信じる」
「じゃあ、どうすれば良いっていうのさ!」
またキラクが熱くなる。
ここは……俺だ。
俺が冷静にならなきゃだめだ。
深呼吸をして、頭を整理する。
もう一度彼女をゆっくりと見てみる
なんか後輩みたいだな。
結局、戦士だとしても、勇者だと思われたとしても、少女は少女だ。
やっぱり俺みたいに怖がるし、怒る、困る。
じゃ、先輩としてやってやんなきゃね。
だって俺ってば異世界人で『魔王の見習い』なんだから。
「いっそ、情報バンバン出しまくろう」
張り詰めていた緊張の糸が一瞬でゆるくなる。
「ええ!? 何言ってんの!! 僕の話聞いてた?」
「聞いてたよお。だから、色んな偽情報をとにかく魔王に伝えるってわけだ。本当っぽいものから、馬鹿馬鹿しいものまで。俺たちの世界だと、情報が多すぎてどれが本物かわからなくなることってよくあるんだわ」
まあ、ネットなんだけどね。
身体に良い食べ物とか、サイトによって全然違うし。
3chの話なんてこんがらがってわからなくなる。
「俺たちの世界?」
「あ、いや俺のいた村のことね。子供の頃、そこが世界だって思ってたから」
「俺に任せておいて。メイドの仕事に戻りなよ。正直、ベッドメイクまだまだだぞ!」
キラクは怒るようなホッとしたような複雑な顔で帰っていった。
ベッドをぐちゃぐちゃにして。
最後に少し言ってやりたかったな。
例え、キラクが戦士だったとしても、俺は『勇者』だって信じる、と。
ま、真面目モードはここまでだ!
暗くなってどうにかなるわけじゃない!!
さあ、俺の世界の知識……。
できればスキルも使ってやっちゃいますか!?
『魔王の見習い』の初仕事が魔王を騙すことってのも笑えるな。
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