神に愛されるということ

あすかもち

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1.それでも私を愛してくれますか

それでも私を愛してくれますか-2

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 父が大手企業に務めているのもあり、私は非常に裕福な家庭に生まれたと言っていいだろう。
父、勇士郎はしっかりと定時に退社し夜の八時には食卓を囲んでいるし、休祝日には私と母の麗奈を遊びに連れ出してくれる。
 麗奈は専業主婦で、勇士郎よりも更に穏やかな性格だ。
おっとりしている、と言えば似つかわしい表現だろう。
 一時は年齢に似つかわしくない私の言動にいっとう戸惑っていたが、今は幾分か落ち着きを取り戻し、頻繁に私のことを気にかけてくれる。

 勇士郎も麗奈も非常に顔立ちが良く、特に麗奈のその綺麗な黒髪と静かさを感じさせる端正な容姿を、私は必要以上に引き継いでいた。

 二人は育ちも良い、顔も良い。
裕福な家庭を築き、明晰な娘をがおり、間もなくしてもう一人産まれる。
 誰が何処から見ても完璧で、幸せ過ぎる家庭と言えるだろう。
 前世の私とは、大違いもいいところである。

 勇士郎はさっそく入院中の麗奈に連絡を取っていた。
私も動物が好きだったが勇士郎は輪にかけて好きで、特に犬猫に関しては専門のカフェに通うほど愛玩している。
  麗奈は臨月が近いため電話ができないが、メッセージでやり取りをしているようだ。
勇士郎が私が座るソファの隣に腰掛けて、スマートフォンに指を滑らせている。

「すぐにでもペットショップに行きたかったけどダメだ夕夜。飼うならお母さんも一緒に選びたいんだって」

 笑いながら言った。
存外麗奈も乗り気ではあるらしい。
確かにそう言えば、麗奈の実家では猫を数匹飼っている。
しかしまあ、出産後もしばらくは動けないだろうから、ペットはとりあえずお預けと言う形になるだろう。

「じゃあお父さん、プレゼントはどうする?私は案を出したよ」

「そうだなぁ。お洋服ももう買ってあげちゃったし……」

 勇士郎がうーんと首を捻る。
新生児へのプレゼントとは言っても、本人がそれを理解して使用する訳ではないし、洋服やオムツなどの必需品はあらかた用意してしまっている。
 勇士郎から振ってきた話だが、思った以上に難しい問題だ。
いや、問題と呼べるのか分からない話だが。

「そうだ。お父さん、おしゃぶりはもう買った?」

「あ、それは買ってないね」

「じゃあおしゃぶりはどうかな。今は変な形のおしゃぶりもあるみたいだし、かわいいのを選んであげようよ」
  
「……それはいいね。そうだな。そうか。よく知ってるな夕夜。本当に物知りだ」

「バナナの形のとかあるらしいよ。そういうの買ってあげたいね」

 「そうと分かったら、すぐ買いに行くか!お母さん臨月だし、今日産まれてきちゃうかもだしな」

 そう言って勇士郎は私を抱き上げ、ソファを立った。
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