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1.それでも私を愛してくれますか
それでも私を愛してくれますか-2
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私には前世の記憶があった。
一から十までの、忘がたい記憶である。
さて。
父、勇士郎にとって私は、どういった娘なのだろうか。
私はこの二度目の人生にして両親を愛していたし、できる限り報いようと、彼らには自分らしく素直にすごした。
逆に言うと、前世の成熟した記憶のある私にとっては自分らしく過ごさざるを得ないほど、子供らしく振る舞うのは困難を極めたのだ。
だが、どうにも出来ない問題だった。
出来る限り違和感の無いよう過ごしてきたが、時折両親から怪訝な目で見られるようになった。
恐らく、年齢の割に達観し過ぎていたのだ。
それはそうだ。
歳相応の玩具は面白くもなんともない。
歳相応のテレビ番組は退屈極まる。
歳相応の学習は簡単を通り越して欠伸が出るし。
歳相応の扱いに身を委ねるには加減が難しかった。
余計な事は言わないようなるべく静かな子供でいる事に努めたが、両親には不気味に見えてしまったらしい。
私はある種の諦観を持っていたが、怪訝に思いながらも我が子に心血を注ぎ愛してくれる両親に同様の愛を感じていた。
しかしそれにもいつか、両親達は慣れていった。
「夕夜」
勇士郎が私の名前を呼ぶ。
これは偶然か私の前世と同様の名で、前世と今を繋ぐものとして私は非常に気に入っていた。
私が特に誰も見ていなかったバラエティ番組から目を離すと、勇士郎は続けて言った。
「お母さんと愛美ちゃんが帰ってきたら愛美ちゃんに何かプレゼントしようと思うんだけど、どんなものが良いと思う?」
言葉尻に私の頭を撫でては微笑む。
何もかもが前世を引き継いでいたならば、男に頭を撫でられると言う行為は不愉快なものだったろう。
だが今の私は黒崎 夕夜だ。
間違いなく父、勇士郎の娘であるし、達観しているとは言え基本的には幼女に過ぎない。
勇士郎のその大きな手は、甘んじて受け入れるに易い心地良さがあった。
私は小学四年生になっていた。
同学年の友人達と両手を振って遊ぶほど童心ではいられないが、子供達にも徐々に個性がではじめ、静かで達観した私もそれほど不自然ではなくなっていた。
そして小学四年生になって、母がまた入院した。
これは病弱な訳ではなく、妹の愛美が産まれる事に起因する。
私は今世においても愛しい妹を得られるのだと歓喜した。
その喜びが出たのかいつになく表情のあった私に、父も更に喜んだ。
「ペットとかどうかな。できれば子犬とか子猫とか。愛美ちゃんを守って一緒に育っていくの」
「夕夜は本当にかしこいな。すごい。それ、ほんとにいいと思う。お母さんと相談してみるよ」
そう言うとまた、わしゃわしゃと私の髪の毛を掻き回し、ぽんぽんと叩いて笑った。
私も、つられて笑った。
一から十までの、忘がたい記憶である。
さて。
父、勇士郎にとって私は、どういった娘なのだろうか。
私はこの二度目の人生にして両親を愛していたし、できる限り報いようと、彼らには自分らしく素直にすごした。
逆に言うと、前世の成熟した記憶のある私にとっては自分らしく過ごさざるを得ないほど、子供らしく振る舞うのは困難を極めたのだ。
だが、どうにも出来ない問題だった。
出来る限り違和感の無いよう過ごしてきたが、時折両親から怪訝な目で見られるようになった。
恐らく、年齢の割に達観し過ぎていたのだ。
それはそうだ。
歳相応の玩具は面白くもなんともない。
歳相応のテレビ番組は退屈極まる。
歳相応の学習は簡単を通り越して欠伸が出るし。
歳相応の扱いに身を委ねるには加減が難しかった。
余計な事は言わないようなるべく静かな子供でいる事に努めたが、両親には不気味に見えてしまったらしい。
私はある種の諦観を持っていたが、怪訝に思いながらも我が子に心血を注ぎ愛してくれる両親に同様の愛を感じていた。
しかしそれにもいつか、両親達は慣れていった。
「夕夜」
勇士郎が私の名前を呼ぶ。
これは偶然か私の前世と同様の名で、前世と今を繋ぐものとして私は非常に気に入っていた。
私が特に誰も見ていなかったバラエティ番組から目を離すと、勇士郎は続けて言った。
「お母さんと愛美ちゃんが帰ってきたら愛美ちゃんに何かプレゼントしようと思うんだけど、どんなものが良いと思う?」
言葉尻に私の頭を撫でては微笑む。
何もかもが前世を引き継いでいたならば、男に頭を撫でられると言う行為は不愉快なものだったろう。
だが今の私は黒崎 夕夜だ。
間違いなく父、勇士郎の娘であるし、達観しているとは言え基本的には幼女に過ぎない。
勇士郎のその大きな手は、甘んじて受け入れるに易い心地良さがあった。
私は小学四年生になっていた。
同学年の友人達と両手を振って遊ぶほど童心ではいられないが、子供達にも徐々に個性がではじめ、静かで達観した私もそれほど不自然ではなくなっていた。
そして小学四年生になって、母がまた入院した。
これは病弱な訳ではなく、妹の愛美が産まれる事に起因する。
私は今世においても愛しい妹を得られるのだと歓喜した。
その喜びが出たのかいつになく表情のあった私に、父も更に喜んだ。
「ペットとかどうかな。できれば子犬とか子猫とか。愛美ちゃんを守って一緒に育っていくの」
「夕夜は本当にかしこいな。すごい。それ、ほんとにいいと思う。お母さんと相談してみるよ」
そう言うとまた、わしゃわしゃと私の髪の毛を掻き回し、ぽんぽんと叩いて笑った。
私も、つられて笑った。
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