『双子石』とペンダント 年下だけど年上です2

あべ鈴峰

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割れ鍋に綴じ蓋

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 クロエは 幼馴染のエミリアが、まだ早いというのに自分が婚約したんだから私も婚約しろと進めてきた。
「簡単なことよ。ネイサン殿下と結婚すれば良いのよ」
「ぶっ」
驚いて、思わず吹き出しそうになる。 エミリアの言うとおり、ネイサンは最高物件だ。見た目も、性格も、地位も、金も、全て兼ね備えている。
だけど、曲がりなりにも相手は王族。
結婚に関しては陛下が決めるだろう。
(息子と言っても駒の一つ。恋愛結婚などあり得ない)

エミリアにしてみれば、シンデレラストーリーを夢見たいんだろう。
でも、相手は私じゃない。 
そもそも、お互いに 相手のことをそういう対象に思ってない。
(やはり、10歳も年が離れていては……。ネイサンがロリコンでない限り。否、ロリコンなら、こっちから願い下げだ)
欠陥品の私に、そもそもそんな資格はない。

「婚約なんて 気が早いわよ」
勝手に盛り上がっているエミリアに向かって否定する。
「何言っているの。生まれてすぐ婚約するなんてざらよ。11歳の婚約なんて遅いくらいよ」
「 ……… 」
 あっさり言い負かされて渋い顔になる。確かにそうだど……。
自力で魔力を作れない、貯めても置けない、 魔法石ばかり食う私は荷物だ。
結婚すれば誰だって、子供ができると考えるだろう。だけど、こんな体じゃあ、子供を産むのは難しい。 
お父様が持参金を積んでも 初婚で、子供はいらないと言ってくれる相手を探すのは無理だ。 心配ばかりかけることに嫌になる。
エミリアの家みたいに、弟が出来れば もっと気楽に生きて行けるのに……。


 エミリアは考え込んでいるクロエを見て微笑む。
(おば様が病気になったことで、少しは大人になったみたいね)
だったら 今が説得するチャンスかも。

  

「騎士になると言ってるけど、その身体じゃ無理でしょ」
「そんな事ないわよ」
 ズバッとエミリアが切り込んできた。 叶わぬ夢など諦めて、嫁に行けと言いたいのだろう。無理だと決めつけるのは早い。と、エミリアを見返す。私にはコネがある。剣術だって上達している。しかし、エミリアが 首を左右に振る。
「所詮女なのよ」
「 ……… 」
差別だ。 
どの世界も女は見下される。それでも、それに立ち向かう人間はいる。
( 少ないけれど 女の騎士はいる)
それなのに、女は守られる側でいろと、同じ女のエミリアが言ってくる。
( 友達なら応援しなさいよ)
ムッとして唇を突き出す。するとエミリアが、身を乗り出して また私の頬をつまむと横に引っ張る。
「女なのに、剣術を習いたいなんて。殿下じゃなかったら、とっくに辞めさせられてるわよ」
「何するのよ」
その手を叩き落とす。怒って睨みつけてるのに、余裕で笑ってる。
彼女とは3歳からの付き合いだけど、同い年なのに最初からの姉ような態度だった。面倒を見ていたことには感謝してるけど、これは別だ。

「ネイサンは、私に理解があるのよ」
私が剣術を習いたいと言っても反対しなかった。もし、そうだったら素振りの回数を増やさせたりしないで、とっくに辞めさせられていただろう。
「はっ、ただ甘やかされてるだけでしょ」
 エミリアが鼻で笑うと座り直す。
「ううっ……」
そう言われるとグウのねも出ない。
言い返したいところだけど、我慢するしかない。だって、自分の計画はネイサン頼りだから。言えない。 言えば それ見たことかと馬鹿にされる。

ネイサンも、ジェームズさんも、私のやりたいことを ダメとは言わない。
だから、やりたい放題。
ここと違って人目もないから、気兼ねなく好きなことができるせいもあるけど……。  我が儘だったかも。
「言い負かされるとすぐ黙る」
私が黙っていると、エミリアが調子に乗って、" ほら、言ってみる "と 煽るように顎でしゃくる。 むかつく。 
「ちゃんと考えているわよ。将来のこと」
「ちゃんとねぇ~」
疑わしいと私を見るエミリアの視線から逃れるように背を向けて、 お茶をすする。
(ああ、早く立ち去りたい)
だけど追いかけてくに決まってる。
全く、蛇のようにしつこいんだから。


エミリアは 誤魔化すように お茶をがぶ飲みしているクロエを見て、不思議に思う。 何で 殿下との結婚を嫌がるんだろう……。魔力 だだ漏れの男と、魔力 空っぽの女。二人の体質を考えれば、割れ鍋に綴じ蓋なのに……。
どうして、運命の相手だと思わないんだろう? 無自覚なのか、わざとなのか、分からないけど……。
 (つまらないプライドは持ってないと思うけんだけど……)

う~ん。少し葉っぱをかけてみるか。 イメルダ・トンプソンの娘だもの。
私が 品定めすれば二人の間に恋が芽生えてるかどうか、はっきりするでしょう。
まだ逃がさないわよと、タイミングを見計らって逃げようとしているクロエに 声をかけた。
「クロ……エ」
しかし、そのタイミングでドアが開く。一体誰だとドアの開く音に振り向くと、ネイサン王子が立っていた。
(クロエを探しに来たのね)
ちょうどいい。いらっしゃいませと、
ニヤリと笑う。


まさしく、バトタイミングで、ネイサンが私をを訪ねてきた。
" 噂をすれば影がさす " だ。

***

追い返すこともできず 仕方なく3人でお茶を飲んでいると、並んで座っているエミリアが、早くと脇腹を小突いて
せっつく。こうなっては紹介しないわけにはいかない。 
「ネイサン様、紹介します。エミリアです。エミリア、こちらがネイサン王子です」
そう言って二人を引き合わせる。
正直、エミリアの存在は隠しておきたかった。エミリアが口を滑らせたら、私の黒歴史が公開されてしまう。

エミリアがすっと立って、片手を胸に当てて優雅に お辞儀をする。
「初めまして、エミリア・トンプソン
です。殿下のことはクロエからの手紙に色々書いてあったので知ってます」
(その言い方じゃ、私が秘密を暴露してるみたいじゃない)
エミリアが 顔を上げた時には口角が上がりきっていた。それを見て、余計なこと言わないでと テーブルの下で膝をぶつける。
「そうか、私は…… 幼馴染がいるとは知らなかった」
ネイサンが 拗ねたような、諌めるような視線を送ってくる。その視線を笑ってごまかす。今までは帰省する度、私送り届けると さっさと帰ってしまったから ネイサンが我が家に滞在することはなかった。つまり、エミリアを紹介する機会はなかった。それなのに、そんな目で見られると 悪いことをしたようで 気まずい。
「ははっ、そうなんです」
「えっ? 知らなかったんですか? 手紙に 是非紹介して欲しいと書いたんですけど……」 
そう言ってエミリアが傷ついた目で私を見る。確かに、そうだけど……。
そんな目で見ないで、わざとそうじゃないんだから。
どこから出したのか、ハンカチを悲しいとこねくり回す。
「ええと、これには……」
もう婚約したんだから興味ないでしょ。何で今言うんよ。さっきは断ったに!
これ以上喋るなとエミリアの靴に自分の靴をぶつける。
「そうだったのか、全く知らなかった」
「やっぱり……田舎もんだから恥ずかしいと思ってるのね」
「えっ?」
そう言うと今度は、出てもいない涙を拭い始めた。不味い。不味い。
このままエミリアのペースに、はまったらネイサンに誤解されてしまう。
「そっ、そんな事ないわよ」
「クロエ」
ネイサンが 咎める様に私の名前を呼ぶ。

「ネイサン様、聞いて下さい」
これじゃあ私が悪者じゃない。エミリアが、わざと私を困らせてるの!
そんな人間ではないと、手を振って誤解を解こうとネイサンを見る。
しかし、視線はエミリアに向いている。
「私はクロエの友達なら大歓迎だよ」
「そうですか。やはり殿下は、お優しいですね」
ネイサンが笑いかけると、エミリアも嬉しそうに笑う。

この二人は今日、会ったばかりなのに既に仲良くなっえる。笑いあってる二人から同じ匂いがする。
このままでは、どんな言い訳を言っても片方が揚げ足を取って、 からかってくる。駄目だ。
ここにいたら二人に、いいように弄ばれる。こんな時は……。 
「あら? お菓子がないはね。貰ってくるわ」
立ち上がると、二人に向かってにっこりと笑いかける。 そして、声を掛けられる前に部屋を出ようと早足で扉に向かう。とりあえず逃げよう。
 
****

ネイサンは慌てて出ていくクロエを、目を三日月にして笑いをこらえる。
やり込められているクロエの姿は新鮮だ。まさかクロエ以上に口が達者な人間がいるとは。上には上がいる。というか。恐れ入った。
にやけそうになる口元を隠そうと お茶を飲む。
「クロエも居なくなったことですし、じっくり話しましょう」
そう言ってカップを置くエミリアは、とてもクロエと同い年には見えない。

思わずギクリとした。なんだか母上を前にした時と同じ緊張を感じる。
しかし、どんな話をする気だ?

次回予告
* 捜査開始

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