『双子石』とペンダント 年下だけど年上です2

あべ鈴峰

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目を開けるのは……

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 クロエは伯母との拷問のような時間を耐え抜いて 疲れ果てていた。そんな弱っているところに、ネイサンと会ったことで 安心して泣いてしまう。


「ここは人目もある。移動しよう」
泣いて居る私の扱いに困ったのか、ネイサンがそう言うと私を抱き上げた。

 クロエはネイサンに抱きかかえれたまま 自分の部屋に着くと、壊れ物のように そっと私をベッドに座らせた。大切にされている。その事が私を我が儘にする。
(私の理解者 ネイサン)
甘えるよう大泣きする。どんなに泣いても 私を見捨てたりしない。
すると、あやすように背中をトントンと擦る。

 満足して、しゃっくりを上げていると、ネイサンが、まだ濡れている私の頬を指で涙を拭う。
「クロエ。何があったんだ。泣いてないで話してくれ、でないと力になれない」
私が泣いている理由を知ろうと話を促してくる。
「実は……」
私の怖さも悩みも打ち明けられるのはネイサンしかいない。
だから、伯母に母が目を覚ました事が知られてしまった事たど、包み隠さず語った。
そうしたかった。パートナーなのだから 知っておいた方が良いと判断したからだ。

 全てを話し終えるとクロエは小さく息を吐く。
「ふぅ~」
口に出して話した事で、落ち着きを取り戻した。いずれ分かる事だったし、手遅れになった訳じゃないから 怒られることはないだろう。
「それは 大変だったな」
ネイサンがそう言って、私の手を取った。私の手を握っている そのネイサンの大きな手を見つめる。
こうして握られていると、勇気が貰える。そして、元気にもなれる。それだけでネイサンの事を信頼している。

 母様を伯母の魔の手から助けるためには、怖がっていてばかりではいられない。伯母が来た時の事を考えて備えないと。

*****

 ネイサンは、また悩み出したクロエの横に腰かけると、少しは休めとクロエの頭を自分の方へ倒す。
「クロエ。難しいことは後まわしだ」
「はい」
促すと小さく返事を返した。
私を頼ってと言うくせに、自分は頼らない。困った子だ。
自分の腕の中に、すっぽりとおさまるほど 小さくて幼いクロエ。
いくら大人ぶっても子供だ。それなのに、一人で何でもかんでもしがちだ。こう言い時こそ、大人である私がしっかりして 支えてあげなくては駄目だ。

 クロエの伯母が来ている事は知っていた。だが、家族の事だし 同席するのは避けたが、こんな事なら後からでも参加すべきだった。
偶然を装って乱入しても伯爵は出て行けとは言わなかっただろう。
そのことが悔やまれる。事情を知らない父様と、母様を狙っている伯母。二人の間に挟まれて苦労したはずだ。
 気付くとクロエが寝息を立てている。その寝顔に微笑む。よほど疲れていたんだろう。凭れ掛るクロエの髪を撫でると、サラサラと指から離れて行く。
こうして私に無防備な姿を見せてくれる事が 嬉しい。

 靴を脱がせて起こさないように寝かせると布団を掛ける。
そして、悪夢から守ってあげようとクロエと手を繋ぐ。まだ、伯母と対峙した事は生々しい記憶として残ってる。そう簡単に過去にはならない。うなされるかもしれない。そのときは、起こしてあげよう。そう思って、しばらく傍に居ることにした。

 しかし、目はクロエを見ているが、頭の中ではどうやって夫人を姉から守るかについて計画を練っていた。 
クロエは伯母を説得できたと思っているようだが、本当は違う。
妹の顔を見ないで帰ったのは、伯爵達の前で妹に対する自分の態度を怪しまれないようにするためだろう。入れ替わることに失敗しただけでなく、目も覚ました。計画の全てをダメにした妹を前に、理性を保っていられるかどうか……。臍を噛む思いだっただろう。町での評判でも傲慢な人と言っていた。 思ったよりも早く行動を起こすかもしれない。

 ネイサンは乱れたクロエのは前髪をなぜつける。クロエには知られないように、事件を解決なくてはならない。 身内の犯行を告発するのは、子供のクロエには重すぎる。

*****

 クロエはネイサンの部屋の前で
入るか入らないかで
愚図愚図していた。
(昨日の今日で、気まずい)
昨日の私は理性を失っていた。
あんな大泣きするつもりは無かった。しかもそのまま寝ちゃたし……。
色々と 思い返すと自分の未熟な行いに穴があったら入りたい。
何が、母様を目を覚ましたことを知られないようにするだ。
何が、母様を守れのは私だけだ。
大したことなどしてないのに、怖かったと泣いただけだ。
私が、どうこう出来ることじゃない。話題をそらすなど、出来たかどうか。返す返すも、愚かな行為だった。ネイサンにも迷惑をかけてしまった。
(全く、いつになったら頼れる人間になるのよ!)

 恥ずかしすぎると、今更ながら顔を赤らめてパタパタと手で扇ぐ。
本音を言えばしばらく会いたくない。だけど、そうもいかない。
嫌だからと逃げていては 本当に子供だ。そうだ。昨日のことは無かった事にすれば良い。ネイサンだって、わざわざ言わないだろう。
(平常心、平常心)
そう自分に言い聞かせてドアノックした。

コンコン

しかし、返事が無い。
留守? 昨日も留守だった。
「ネイサン様、クロエです」
声を掛けたが、やっぱり返事がない。
( ……… )
この前の事もある。 具合が悪くなっているかもしれない。出直すことは躊躇われる。留守だとしても確認しておいた方がいいだろう。
「……入りますよ」
気になってドアを開けた。
しかし、部屋の中には誰も居なかった。ガランとしていて、影も形もない。誰かが居た形跡さえない。綺麗に整えられた部屋は最初から人が居なかったみたいだ。
(いったい、何処で何をしてるんだろう)
今後の事を相談しようと、せっかく来たのに……。
しかし、こう何度も続くとお約束としか思えない。
(どうしよう……)
唇に指を押し当てて暫し考える。


 探しに行こうかと思ったが、止めた。探し回ってすれ違いになっては面倒だ。仕方ない。待とう。
どうせ、城の中に居るんだから十分もしたら戻って来るだろう。

 それなのに三十分経っても、一時間経っても戻って来ない。
「何処へ行ったいのよ!」
イライラと部屋の中を歩き回る。探しに行って、本当にすれ違いになったら今まで時間が無駄になる。何より、ここまで待ったんだから絶対来るまで待ってやる。
こうなったら意地だ。
とは言え、ここは客間だから、本も無いし暇つぶしになるものが無い。
「あ~、もう~」
待ちくたびれて どさりとソファに座ると、体のこりをほぐそうと
後ろに仰け反った。すると、夕闇に染まる空が見えた。
窓いっぱいのオレンジ色……。
(夕焼けだ)
私は、この短い時間が好きだ。
昼から夜へ。

 クロエは立ち上がると窓を開けた。山の斜面をゆっくりと夜がカーテンを閉めて行く。それに伴って温かだった風が 少しひんやりしていく。夜が来る。
そのカーテンに、ぽつぽつと明かりが灯り、美味しそうな匂いが漂って来る。誰にも帰る家がある。待ってくれる人が居る。
そんな気持ちにさせてくれる。
目を閉じて、そんな気分を味わおうとしたのに、何が目の前に居るのを感じる。
誰? 何か居るの?
ここは家の二階で、気配を感じるのは外側だ。でも、確かに 私の目の前に存在する。気配と言うか、息づかいと言うか、熱のような物を感じる。
鳥? それとも、リス?
(どう対処したらいいんだろう……)
目を開けた途端、襲って来られたら嫌だな。
そのまま一歩下がる? それとも、手を突き出して追い払う? 目を開けると同時に顔を隠す?
どれも、安全とは思えばない。

 完全に目を開けるタイミングを失ってしまった。
(お願い。居なくなって!)
未確認の生物に遭遇して焦って固まっていると

次回予告
*留守だった理由
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