『双子石』とペンダント 年下だけど年上です2

あべ鈴峰

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姉妹

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 クロエは 母様が 最初から記憶があったのに嘘、をついていたことを知って驚いた。だけどそれは、姉によるモラハラが原因だった。だから、父様に言っても 見当違いだと取り合ってくれないと諦めて、口をつぐんでいたんだ。
事実、父様は 義理の姉が妻になり変わろうとしたと言う話を認めなかった。妻より、義理の姉の話を信じたんだ。

 そのことに傷ついた母様が部屋を出と行こうとしてることに気づいた。引き止めようとした時、 急に
ネイサンが 証人がいると言って 皆 驚かせた。


「いいえ、本当のことです。証人 承だっています」
母様が驚いたように振り返って、ネイサンを見つめる。 すると、ネイサンが母様に向かって かすかに頷く。
「メイドのエマが夫人が持って来たお茶を飲んだそうです」
「えっ?」

(あっ……そう言えば、言っていた)
伯母が眉をひそめる。それもそのはず。伯母の知らないところで起きたことだ。私も思い出した。
「高級茶だと言っていたので、興味があったようです」
驚いている伯母の前でネイサンが肩を竦める。
褒められた行為ではないが、今回ばかりは ありがたかった。
「忘れたの? あの日。高いお茶だからと、散々自慢したでしょ」

「夫人と同じ頃、眠りこけるエマを他のメイドが見ています」
「それに、自分で淹れると言ってメイドを下がらせたわ」
母様が思い出させようと、当日のことを話した。すると、伯母の顔色がサッと変わる。
言い逃れ出来ない証人が出て来たんだから そうなる。
「ぐぐっ」
音が聞こえるほど歯ぎしりして悔しがる伯母の姿に、ゾクリと背中に冷たい物が流れる。
「まさか、お姉様が私に酷い事をするとは思わなかったから何一つ警戒せずに飲んだわ。……まさか、そんことを考えていたなんて……」
瞳を伏せる母様に、伯母が今にも襲いかかりそうな顔で体を震わせる。伯母のその形相に父様も、これが本当にあったことだと受け入れてくれたようだ。
「私は妻である キャサリンの言葉を信じます」
「あなた……」
母様が自分を信じてくれたことに嬉しそうにお父様を見上げる。
「疑ってすまなかった」
「ううん。良いの。 あなたの気持ちもわかるから」
「辛かっただろう」
その言葉に 母様が唇を震わせる。 そんな母様を大事そうに、父様が
抱き締める。寄り添い合う二人の姿に嬉しくなって 笑みが浮かぶ。こうでなくちゃ。


「これで答えは出ましたね」
ネイサンが、そう言って伯母を見る。そうだ。これで、伯母を助けようとする者は誰もいなくなった。もう逃げられない。
ネイサンの隣に立つと、これで終わった頷くと、ネイサンも頷いた。 これでいつもの日常が戻ってくる。しかし、伯母が私たちに向かって、ケッと唾を吐く。
もはや、マナーもない。伯母の恨みの深さが現れている。

 正体を現した伯母は、正真正銘の犯罪者だ。
「はっ、何を言っているの? この出来損ないのどこが良いの? 頭だって、見た目だって、私の方が上なのよ」
怒りで火照ってた顔で、母様を顎でしゃくる。
「それを妻だからと信じる? 馬鹿らしい。貴男がそこまで愚か者だとは思わなかったわ」
そう言う伯母の眉が釣りあがり、目は血走り、激昂するその顔は、とても人の顔には思えない。
人の底に潜んでいるどす黒いモノが現れていた。

「どう足掻いても 罪は免れません」
しかし、そんな伯母に対しても ネイサンは冷静な態度で接する。 でも私は無理だ。悪意にさらされて体が強張る。
ギロリと伯母が母様を見た。その視線から守るように、父様が母様の前に出る。すると今度は、私を睨みつけて来た。すると、父様が私たちを守ろうと両腕を広げる。
それでも恐ろしさはなくならない。クロエは怖いと母様と取り合う。
「観念して罪を認めて下さい」
「ああ、もう五月蝿い! 五月蝿い!」
ネイサンがそう言うと開きなおった伯母が、吐き捨てるように言う。そして、自分をぐるりと取り囲んでいる私たちを順番に 見据える。その視線には殺気が混じっていて、後ずさりしたくなる。だけど、誰も視線を外そうとはしなかった。 負けたくないという気持ちが勇気を与えてくれる。

 効き目がないとわかると、出てこようと伯母が身を乗り出す。パリパリと氷にヒビが入ってパラパラと欠片が落ちる。
大丈夫だろう。そう思っいても、
もしかしたらと考えてしまう。無意識に父様の服をつかむ。
「無駄です」
 ネイサン首を振って意味がないと伝える。 しかし、諦めの悪い伯母は 何度も体を動かして 必死にもがく。 それは私たちは 傍観していた。最後の悪足掻きだ。と知っているから。その証拠に それ以上は、ヒビは広がらなかった。無理だと悟ったのか、伯母が諦めたように大きな溜め息をつく。
「はぁ~。上手く行くはずだったのに、とんだ伏兵がいたわね」
そう言ってネイサンと私を見据える。



 私の計画は完璧だった。それなのに何処で間違えたの?
マーガレットは、あの日の事を思い返してみた。

 遅効制の眠り薬を滲みこませた 茶葉を使ってお茶を飲ませて、いったん家まで帰ってアリバイ作りをした。御者の格好をして、人目を引かないように 馬車の家紋を黒く塗り潰した。
そうやって戻って来た時には 妹は鏡台の前で、うたた寝していた。
それを見て片方の口角だけで笑う。相変わらず単純で騙され易い。妹をベッドに寝かせると、邪魔な家具を部屋の隅に押しやって昨日の夜作っておいた。魔法陣の描かれた布を広げて魔法石にヒビを入れた。
双子石をポケットから取り出して一つを妹にもう一つを自分の胸に置いた。
(そうだ。手順に間違いは無かった)

 魔法陣が光り、双子石が、じわじわと温かくなってきた。
全てが順調だった。
明日の朝になれば私はキャサリンになっている。
妹を不幸に出来るかと思うと笑みが浮かぶ。 私が本物だと涙ながらに訴える 妹。それを相手にしない夫。絶望の表情を浮かべる 妹の顔が見れる。
(ああ楽しみだ)
期待に胸を躍らせてゆっくりと目を閉じた。

 成功するはずだった。するはずだったのに……。
急に心臓を貫かれたような痛みに、のた打ち回った。それからは全てが狂ってしまった。 全てを元通りするのに朝までかかってしまった。

 どうして、いつも、いつも、妹ばかり、幸せになるの?
それに引き換え 私は不幸ばかり。
私は長子として爵位を継ぐために厳しく育てられた。それに比べて妹はただ笑って遊びほうけていた。今迄の嫌な記憶が次々と思い浮かぶ。
ずっとそうだった。姉だからと多くのモノを 譲ってきた。 ただ 私の後に生まれただけなの 不公平だ。
「お姉様。……どうして、こんな事をするの? 私たち姉妹でしょ」
それなのに妹が無神経にその理由を聞いてくる。自分の胸に手を当てれば分かりそうなものなのに。
手を自分の胸の前で組んで、悲しそうな顔をして被害者面する。
そう言う可愛い子ぶりっこしてるところが、前々から気に入らなかった。その顔を見ると、傷つけたい、 惨めにしたい、 そんな気持ちが 胸の中にどんどん積もっていった。我慢も限界だ。

*****

 母様が伯母に向かってその理由を問う。しかし私は、そんなことして欲しくない。きっと、聞いても理解出来ない。
「母様……」
それを引っ張ってやめさせようとするけど、 母様はこちらを見ようともしない。 そのことが聞きたくて仕方なかったことなのだろう。
だけど、聞いても何一つ良い事は無い。お金の為に妹に、なり代わろうとして、失敗したら、今度は
口封じの為に殺そうとした。
そんな思考の人間だもの、
私たちと同じ考えなんかじゃない。犯罪者の心理など共感できるものとは思えない。
「どうして? だったら教えてあげる」




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