相談内容 月に向かって祈ったら、悪魔が召喚されました。どうしたらいいでしよう?

あべ鈴峰

文字の大きさ
19 / 22

19 拾っては イケない物

しおりを挟む
ミリアは、ペンダントを弁償する代わりに、もう少し手伝えと言われてダリルと一緒に  ロイヤルストリートを散策していた。

その名の通り、王室御用達のお店ばかりが並ぶ。ここに来れば、王宮で使われている物 全部 揃えられる。
従って全て高級品。
またここはデートコースにもなっていて、貴族や富豪の子供たちのカップルが、将来を夢見ながらウィンドウショッピングするのが流行っている。
私もそう言う人に巡り会ったら、来てみたいものだ。
それなのに、一緒の相手が悪魔では……。やれやれと首を横に振る。

あの変なペンダントの手掛かりを求めて来たが、こんな貴族しか出入りしないようなところで、本当に売っている店があるの?
ダリルの勘を怪しむ。 胡乱な視線を送るが、本人は店探しより 商品が気になるらしく。 
右の店、左の店と、目を輝かせて手当たり次第に 見て回っている。
まるで 、小さな男の子のようだ。
( こう言うところが、 悪魔らしくないのよね)
くすりと笑うと ダリルが振り返る。
不味い。笑ったのがバレると面倒だ。
ミリアは咳払いしてごまかす。
「コホン。お店は、どこにあるのですか? 」
「裏通りにあるとガーゴイルが言って
いたから、この先だろう」
(裏通り? )
危険な香りがする。しかし、興味深い。そのまま、ダリルの後をついて 路地を曲がる。

ミリアは、雰囲気がガラッと変わったことに驚く。道を一本入っただけなのに、全てが違う。石畳もあちらこちらに 穴が開いていて、道じたい狭い。
それでも 表通りと変わらず 同じ物を扱う店が並んでいる。しかし、ダリルは 店に目もくれなくい。
私の目から見れば 同じに見える。
( 一体どうしてかしら?)
自分でも、目利きが出来そうなドレスを凝視する。
う~ん。サッパリ分からないわ。
「ここは、さっきの通りと何が違うんですか? 」
 そう聞くとダリルが、意地悪そうな笑みを浮かべて いつもの調子でからかう。
「まぁ……お前はお子供様だから、 知らなくて当然か」
「 子供じゃありません!」
頬を膨らませて睨みつけると、ダリルが わざと言い換える。
「未婚のお前は、知らなくて当然か」
「どうして、いつも結婚、結婚って言うんですか? 」
親でも無い。まして、悪魔のくせに私の結婚問題を口うるさく言う。
(おおきなお世話よ! )

「社会的に女性は  結婚しなければ、大人と認められないからだ」
「 ……… 」
 全く。価値観が化石なみなんだから。今は、貴族が働いても卑しいと蔑まれなくなった。それに、働く女性は大勢いる。
ミリアは、その代表として クラス担任の名を上げる。
「そんなことありません。エルザ先生は未婚だけど 大人です。しかも、皆の尊敬されてます」
「心配するな。お前も二十歳過ぎても 未婚なら、大人の 仲間入りできる」
まったく、話しにならない。
「それって、差別です!」
 食ってかかると、ダリルが急に手を突き出た。びっくりして黙ると、質問について説明を始める。

「裏通りで、売っている物は すべて中古品か、偽物だ」
「 中古品? 」
 ミリアは好奇心に負けて、あっさりと話に食いつく。
ダリルが、顎を指で叩きなが 考えてをまとめる。
「んー。一度、誰かが使った物だ」
「誰が使ったか分からない物を買う人が 居るんですか? 」
確かに、ドレスは高価だし、作るのに時間が 掛かる。でも、オーダーメイドだこら、サイズが合わない。そんな物どうして売れるの?

「これだから、貴族は」
ダリルが、両手を上げて首を左右に振る。小馬鹿にされて ムッとする。
貧富の差の話しではない。一般的な話しだ。
「みんなが、みんな。常に新品を見つけられるわけじゃない。だが、パーティーで同じドレスを着るのは、裕福ではないと思われる。だから、こういう中古品扱う店があるんだ 」
「なるほど……」
 ドレス代は、我が家の家計を逼迫させる要因にもなっている。 
だから少しでもお金を浮かそうと、お母様が しょっちゅう ドレスをリメイクしている。

「今も昔も、貴族は見栄の塊。社交界は、いかに自分が 金持ちかひけらかす場所だ。ほんと下らない」
「 ……… 」
ダリルのうんざりした口調から、貴族を軽蔑していることが伝わる。
何人も、そういう貴族を見てきたようだ。
「ここで買って良い物は、宝石、家具、食器、楽器、本など。流行に関係なく価値が変わらない物がお薦めだ 」
ダリルが、指折り数えながらレクチャーしてくれるが 、なかなか難しそうだ 。目利きのできない私には無関係な場所そう。
「もちろん、審美眼が あるのが前提だがな」
そう言って私の顔を覗き込む。はい。はい。私には無理です。本当に一言多いんだから。

「ダリルは、ほんと物知りですね」
 悪魔なのに、 人間界のことをよく知っている。そういうところは尊敬できる。
「様! 当たり前だ。私は何歳だと思っているんだ」
「そうですね…… 28歳くらい? 」
「そんな若造のはずないだろう」
ダリルが憤慨する。 若造って……。
私から見たら 十分オジサンだ。
 「じゃあ、何歳なんですか? 」
そう聞くと ダリルが腕組みして考え込む。自分の年齢なのに なぜ即答できない。もしかして、悪魔の年齢を人間年齢に換算しているとか。
「そうだな ……人間の歳で言うとニ、三千歳くらいか」
「そんなアバウトな! 二千と三千では全然違います」
 ミリアは ダリルの答えに愕然とする。三千年前になんて、紀元前の時代になる。
まさか恐竜と同い年?

「仕方ないだろ。私は悪魔なんだぞ」
「じゃあ、 悪魔年齢は何歳なんですか? 」
「 知らん! そもそも誕生日を知らないんだから 数えようがない 」
ダリルが肩をすくめる 。その返事に 胸が痛む。
誕生日を知らない理由は、ひとつしかない 。生まれた時から天涯孤独。
家族が全て死んでしまったのか、捨てられたのか。その理由は分からないが。友達もいないと言っていたから、 ずっと独りぼっち。
そう思うと同情する 。
だから、こんな偏屈な性格になったんだ。三千年もの長い、長い間。生き延びるために、どんなに苦労したのかと考えると苦しくなる。

「どうした。変な顔をして?  腹でも痛いのか」
 覗き込んできたダリルに、なんでもないと首を振る。私に憐れんでいると 知ったら ダリルが もっと惨めになる。

***

「きゃっ! 」
すっかり物思いにふけっていたから、前を歩いていたダリルの背中にぶつかった。
「 着いたんですか?」
「 ……… 」
痛む鼻を押さえてダリルを見ると、 上を見ている。視線の先を見ると、看板が出ている。
『スミス 商会 』
いかにもという名前だ。スミスなどという、ありふれた名前を使っているところが怪しい。
建物はレンガ造り、ドアは木製。普通で変わったところは無い。強いて言えば、窓が汚れ過ぎていて中が見えない。

「この店ですか?」
「 そうだ。今日はドアを開けたら帰っていい」
「えっ? 」
 (本当に? )
 人使いの荒いダリルに優しくされると 逆に怖い。
何か裏があるのではと、ダリルの様子を伺うと口を固く閉じて、深刻な顔をしている。こんな真面目なダリルを見るのは初めてだ。なんだか不安を掻き立てられる。
( そんなに 危険な場所なんだろうか?  )
ミリアは、落ち着かない気持ちのままドアを開ける。

 店内には、種種雑多な物が年代も種類も関係なく 所狭しと置いてある。
 どうやら骨董品店らしい。
「こんにちは。どなたか いらっしゃいませんか? 」
声をかけるが 人の気配がない。
 随分不用心な店だ。泥棒とか心配とかじゃないのかしら。
 店員を探して店の奥へ行こうとすると、 ダリルに首根っこを掴まれる。
 見ると指で首を切る真似をしてから、ドアを指差す。
 『さっさと出て行け! 』と言うことらしい。

 分かったとミリアは頷くと、ドアに向かう。
 本当に帰っていいらしい。振り返ると 手で、しっしと 追い払われた。 
それなら、気が変わらないうちに帰ろう。ドアノブを掴もうとして、何かを蹴飛ばした。
下を見るとピエロの人形が転がっている。気づかないうちに落としてしまったのかもと、人形を拾おうとすると、
「それに触るな! 」
切羽詰まったダリルこ叫び声に、振り向いた時には その姿が消えていた。

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます

菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。 嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。 「居なくていいなら、出ていこう」 この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし

主人公の恋敵として夫に処刑される王妃として転生した私は夫になる男との結婚を阻止します

白雪の雫
ファンタジー
突然ですが質問です。 あなたは【真実の愛】を信じますか? そう聞かれたら私は『いいえ!』『No!』と答える。 だって・・・そうでしょ? ジュリアーノ王太子の(名目上の)父親である若かりし頃の陛下曰く「私と彼女は真実の愛で結ばれている」という何が何だか訳の分からない理屈で、婚約者だった大臣の姫ではなく平民の女を妃にしたのよ!? それだけではない。 何と平民から王妃になった女は庭師と不倫して不義の子を儲け、その不義の子ことジュリアーノは陛下が側室にも成れない身分の低い女が産んだ息子のユーリアを後宮に入れて妃のように扱っているのよーーーっ!!! 私とジュリアーノの結婚は王太子の後見になって欲しいと陛下から土下座をされてまで請われたもの。 それなのに・・・ジュリアーノは私を後宮の片隅に追いやりユーリアと毎晩「アッー!」をしている。 しかも! ジュリアーノはユーリアと「アッー!」をするにしてもベルフィーネという存在が邪魔という理由だけで、正式な王太子妃である私を車裂きの刑にしやがるのよ!!! マジかーーーっ!!! 前世は腐女子であるが会社では働く女性向けの商品開発に携わっていた私は【夢色の恋人達】というBLゲームの、悪役と位置づけられている王太子妃のベルフィーネに転生していたのよーーーっ!!! 思い付きで書いたので、ガバガバ設定+矛盾がある+ご都合主義。 世界観、建築物や衣装等は古代ギリシャ・ローマ神話、古代バビロニアをベースにしたファンタジー、ベルフィーネの一人称は『私』と書いて『わたくし』です。

【大賞・完結】地味スキル《お片付け》は最強です!社畜OL、異世界でうっかり国を改革しちゃったら、騎士団長と皇帝陛下に溺愛されてるんですが!?

旅する書斎(☆ほしい)
ファンタジー
【第18回ファンタジー小説大賞で大賞をいただきました】→【規約変更で書籍化&コミカライズ「確約」は取り消しになりました。】 佐藤美佳子(サトウ・ミカコ)、享年28歳。死因は、過労。連日の徹夜と休日出勤の果てに、ブラック企業のオフィスで静かに息を引き取った彼女が次に目覚めたのは、剣と魔法のファンタジー世界だった。 新たな生を受けたのは、田舎のしがない貧乏貴族の娘、ミカ・アシュフィールド、16歳。神様がくれた転生特典は、なんと《完璧なる整理整頓》という、とんでもなく地味なスキルだった。 「せめて回復魔法とかが良かった……」 戦闘にも生産にも役立たないスキルに落胆し、今度こそは静かに、穏やかに生きたいと願うミカ。しかし、そんな彼女のささやかな望みは、王家からの突然の徴収命令によって打ち砕かれる。 「特殊技能持ちは、王宮へ出仕せよ」 家族を守るため、どうせ役立たずと追い返されるだろうと高をくくって王都へ向かったミカに与えられた任務は、あまりにも無謀なものだった。 「この『開かずの倉庫』を、整理せよ」 そこは、数百年分の備品や資材が山と積まれ、あまりの混沌ぶりに探検隊が遭難したとまで噂される、王家最大の禁足地。 絶望的な光景を前に、ミカが覚悟を決めてスキルを発動した瞬間――世界は、彼女の「お片付け」が持つ真の力に震撼することになる。 これは、地味スキルでうっかり国のすべてを最適化してしまった元社畜令嬢が、カタブツな騎士団長や有能すぎる皇帝陛下にその価値を見出され、なぜか過保護に甘やかされてしまう、お仕事改革ファンタジー。

冤罪で辺境に幽閉された第4王子

satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。 「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。 辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。

夫と息子に邪険にされたので王太子妃の座を譲ります~死に戻ってから溺愛されても今更遅い

青の雀
恋愛
夫婦喧嘩の末に置き去りにされた妻は、旦那が若い愛人とイチャついている間に盗賊に襲われ、命を落とした。 神様の温情により、10日間だけこの世に戻った妻と護衛の騎士は、その10日間の間に心残りを処分する。それは、娘の行く末と……もし、来世があるならば、今度は政略といえども夫以外の人の妻になるということ。 もう二度と夫と出会いたくない彼女は、彼女を蔑ろにしてきた息子とも縁を切ることを決意する。 生まれかわった妻は、新しい人生を強く生きることを決意。 過去世と同じ轍を踏みたくない……

大根令嬢の雑学無双、王弟殿下を添えて。~ 前世を思い出したので、許婚をほったらかして人助けしまくります!!

古森真朝
恋愛
気弱な伯爵令嬢のカレンは、自分勝手な婚約者レナートに振り回されていた。耐え続けていたある日、舞踏会で何者かに突き飛ばされ、階段から落ちてしまう。 その傷が元で儚く……なるかと思いきや。衝撃で前世を思い出したカレンは一転、かの『ド根性大根』みたいな超・ポジティブ人間になっていた。 『モラハラ婚約者の思惑なんぞ知るか!! 今度こそ好きなことやって、目いっぱい幸せに長生きするんだから!!!』 昔ひたすら読書に耽って身に着けた『雑学』を武器に、うっかり採れ過ぎた作物や、開墾しようとすると不幸に見舞われる土地、不治の病にかかった王族、等々の問題をどんどん解決。 領地の内外で心強い友人が出来たり、いつの間にかものすごく有名になっていたり、何かと協力してくれる王弟ヴィクトルから好意を寄せられたり(注:気付いてない)する中、温かい家族と共に仕事に励んでいく。 一方、前世から因縁のある人々もまた、こちらに転生していて――

断罪まであと5秒、今すぐ逆転始めます

山河 枝
ファンタジー
聖女が魔物と戦う乙女ゲーム。その聖女につかみかかったせいで処刑される令嬢アナベルに、転生してしまった。 でも私は知っている。実は、アナベルこそが本物の聖女。 それを証明すれば断罪回避できるはず。 幸い、処刑人が味方になりそうだし。モフモフ精霊たちも慕ってくれる。 チート魔法で魔物たちを一掃して、本物アピールしないと。 処刑5秒前だから、今すぐに!

地味な薬草師だった俺が、実は村の生命線でした

有賀冬馬
ファンタジー
恋人に裏切られ、村を追い出された青年エド。彼の地味な仕事は誰にも評価されず、ただの「役立たず」として切り捨てられた。だが、それは間違いだった。旅の魔術師エリーゼと出会った彼は、自分の能力が秘めていた真の価値を知る。魔術と薬草を組み合わせた彼の秘薬は、やがて王国を救うほどの力となり、エドは英雄として名を馳せていく。そして、彼が去った村は、彼がいた頃には気づかなかった「地味な薬」の恩恵を失い、静かに破滅へと向かっていくのだった。

処理中です...