「今回はご縁が無かったと言う事で」秒で断られた俺のお見合い日記

あべ鈴峰

文字の大きさ
3 / 16

欠点があっても友達

しおりを挟む
 お見合いすることを親友のニ人に伝えると意外な反応が返ってきた。
「あー、分かった 。永久就職だ!」
裏切り者と言いたげに加奈が私を指差した。
確かに三年生だから就活が始まるけど、そんな不純な気持ちで受けたわけじゃない。
まだ始まってもいないのに諦めたりしない。
その指を叩いて払った。
「 そんなはずないでしょ」
「永久就職って、今時は言わないわよ」
分かってないと千尋が、チッチッと指を振る。
「どうして?」
秘密を話すかのように千尋がグイっと身を乗り出すと釣られて加奈も身を乗り出した。
「昔と違うのよ。今は結婚しても働くものよ」
「なるほど……離婚する人も多いもんね」
「そう言う事。それに大学を卒業するまで二年もあるんだから、どうなるかわからないでしょ」
「つまり婚約しても結婚までは行かないと」
「その可能性は大いにあるわね」
私をそっちのけで話す二人を、もうおしまいと引き離すように肩を押して間に入った。
「二人とも先走りすぎ。まだ会ってもないのよ」
「そう言う事なら、楽しんじゃえば」
「そうだよ」
簡単に言ってくれる。本音を言えば美味しい物も食べたいし、新しい着物も欲しい。
でも、その理由がお見合いと言うのが嫌なのだ。そもそもお見合いは楽しいものじゃない。互いに相手の本性を探ろうとする心理戦の場だ。とは言えどうせ断るのに時間の無駄とも、相手にも悪いとも思える。

「着物とか着て美味しい物が食べれるんでしょ」
加奈の発言を聞いて胡乱な目を向ける。しかし、分からないと加奈が肩を竦める。
「何が嫌なのよ?」
「見知らぬ人と会うのも。まして、その人と食事をするのも嫌なの」
気ばかり使って食べても味がしないに決まっている。相手に愛嬌を振りまかなくてはイケないのも嫌だ。考えただけでうんざりする。
小さく首を振ると加奈が口元をだらしなく緩ませた。
「それなのに見合いするなら相手はイケメンなんじゃないの?」
「どんな人よ?」
「えっ!?……どんなって……」
白状しろと加奈がのぞき込んできて、千鶴が小突いて来る。流石、加奈。中々鋭い。本心が知られるのが恥ずかしくて隠してしまった。
「ええ、いいじゃない。教えなよ」
「写真ないの?」
「まあ……。それなりに……」
比和子は気恥ずかし気に頷くと適当に相槌を打って誤魔化した。でも、正直言うと実は下心がある。

 最初はお見合いなんてと断ろうと思った。
それでもどんな人か興味本位で、写真を見たらトクンと心臓が鳴った。生真面目な顔で私を見る彼に何故か気づいた時には微笑みかけていた。イケメンと言うより育ちが良いと言った方がしっくりくる顔だ。
(見た目は幾らでも変えられるが醸し出す雰囲気と言うものは一朝一夕には身につかない)
それに、なんて言うか……。懐かしいような親しみを覚えた。そんな人は初めてだった。
だからお見合いには期待している。
あわよくば彼氏ができるかも。そしたら、もしかして……念願の初デートが出来るかもしれない。なんて、つい、甘い事を考えてニマニマしてしまう。すると急に加奈が真面目な顔を私に向ける。
「出会いのチャンスなんじゃないの?」
加奈の魅惑的な言葉に心が動く。
なら見合いも悪くない。偏見を持っちゃダメ。彼氏が居るのって、どんな気持ちになるんだろう?
「お見合いしなよ。やっと、彼氏ができるかもしれないよ」
グサリ!
一番気にしている事を言わなくても……。
そうなのだ。何時だって私たちは仲良しだったけど恋愛に関してはいつも蚊帳の外。
二人の恋バナを、指をくわえて聴いているだけだった。今だって加奈には恋人が居る。千尋はこの前別れたばかり。それに引き換え私は……。年齢イコール彼氏居ない歴。
別に理想が高いとか、ずっと片思いしている人が居るとか、トラウマがあるとか、そう言ったのは全く無い。それなのに何故か彼氏が出来ない。自分から告白しようと思った事もあったけど、その矢先に相手が転校してしまったり、怪我したりと、兎に角縁がない。私の何がイケないのか……。

「丁度よかったじゃない」
手の平を返す千鶴に呆れる。モテない人間は見合いをしろと言う事。確かに私に恋愛結婚は無理だ。と内心思っていたけどそう言われると何だが腹が立つ。それも終わりになるかもしれない。と期待している。
彼氏ができたら 自慢してやるんだから。 そのためにも 好印象を与えたい。
となると問題は……。
「そうそう、相談に乗ってほしい事があるのよ」
「何々?」
「簪を探しているんだけど思うようなものが無くて……」
「何で? もう成人式は終わったじゃん」
人の話を遮ったな。ムッとして睨みつけたけど全く気にしてない。
「お見合いに刺していく簪を探しているの」
「やっぱり着物着るんだ」
現代人にとって着物は特別な物。それを大手を振って着られる。普段着として着物を着る人は一握りの人だけだ。
「当たり前でしょ。だから真剣に考えてね」
せっかくのチャンス逃す手はない。
だからは妥協は無し。一目ぼれさせるくらい最高に奇麗な自分を見せなくちゃ。
でもこれが難しい。気合が入っていると思われるのはガッツいているみたいでいやだ。
(例えば成人式の格好とか)
だからと言っておしゃれを諦めたくない。
「どう見て」
そう言うとさっきまで見ていた画面を見せた。加奈がスマホを手に取ると二人で画面をスクロールしだした。

 あーでもない、こうでもないと見ていたけれど、加奈が画面を指さした。
「これいいじゃないの?」
それはつまみ細工で作られた桜の花だった。確かに可愛い。でも場にそぐわない。その時期は終わっている。
「こう言うのは成人式用。お見合いに付けていったら派手なの」
「じゃあ、こっちは?」
千尋が今度は、なでしこを指さす。
色はいいけど……。七宝焼きだからなのか。
「地味すぎ」
「じゃあ、これは?」
加奈が指さしたのは白と黄色の菊をモチーフにした物だ。
「お見合いは今月なのよ。何で菊なの?」
「え⁉」
加奈がキョトンとした。そんな顔を見たら溜息しか出てこない。私が着物好きで、付き合いも長いのに全く和装の事を分かってないと小さく首を振る。
「はぁ~」
すると、見かねた千尋が私の代わりに説明してくれた。
「和装は特に季節を大切にするのよ」
そうだ。そうだ。流石千尋よくわかっている。しかし、加奈が更に首を捻る。
「えっ? でも花屋で年中売ってるじゃん」
「………」
「………」
噓でしょ……。花に詳しくなくても花屋に菊の花がどうして売っているか、それくらい誰だって知っている。仏花だ。言葉もない。私と同じように千尋も黙り込んだ。加奈だけ状況が分からず、なぜ黙ってるんだと首を傾げている。
「どうしたの⁉」
「はぁ~」
「はぁ~」
何でこの子が私の友達なんだろう。千尋と揃ってため息をついた。すると、加奈が慌てて取り繕うとする。
「だって、だって……着物は高いから……その縁がないと言うか……よく知らないのよ」
問題はそこじゃない。一般常識だ。でも、加奈の気持ちも分かる。さっきの発言も成人式の経験から言っているのだろう。一回しか着ない事を考えればレンタルの方がお得だ。
となると、言われるままに身をつけるだけ。
そのせいか、現状は着物イコール特別。身近な和装と言えば浴衣だろう。
だけど、声を大にして言いたい。着物は一生物。流行り廃りが激しくない。柄が単純なら帯を変えれば十代から五十代まで着られる。
髪型だって好きな位置にお団子を作って根元を三つ編みでぐるりと一周すれば完成。慣れてしまえば簡単なのに……。

上目付けで 私たちの顔色伺っている。
加奈に悪意はない。知らなかっただけだ。
でも、加奈のこういうところが苛立たせる。この前もバスクチーズケーキを買ってきてと、言ったのにベイクドチーズケーキを買って来た。
「もう! 真剣に相談に乗って」
「まあまあ」
比和子は睨みつけたまま。まったく、着物の事となると冗談が通じない。本気で怒ってる。
そのホッペを見れば一目瞭然だ。三歳の時から変わらず怒ると餅のように頬を膨らませる。昔からの癖だ。そんな比和を見るたび私はその頬を指でツンツンと突きたくなる。そうすれば餅のように破裂するかも、なんて。だけど、怒った顔まで可愛いのは反則だ。
「比和~」
愛くるしさに我慢できずに比和にしがみつくと目を真ん丸にしてびっくりしている。
「なっ、なに?」
「許してあげなよ。ねっ?」
「そうだよ。許して」
私を見て加奈も比和にしがみ付いた。
「なっ! ちょっと……二人とも私から離れなさい」
「比和~」
「比和子ちゃん」
「……もう、私は怒っているのよ」
私たちに左右から抱き着かれては身動きも出来ない比和が逃れようとするから更にしがみ付いた。私も加奈も比和が優しい事は知っている。
「機嫌直して」
「そう、そう」
「もう!」
そう叫んでも怖くとも何ともない。


4中原

 都内の大手設計事務所。代表は有名人でテレビや雑誌で度々取り上げられている。
儲かっているだけあって壁には前衛的な絵が掛られてある。その広いフロアーには等間隔で机が並び。皆が黙々と作業をしている。

その中の一人。中原は細いフレームの眼鏡を人差し指で押し上げた。
もう三回目だ。詰まらぬ拘りにはうんざりだ。何が『化殺』だ。何が『欠け』を直したいだ。施工主のわがままで書き直している図面に向かって三角定規を放り投げた。
こんなことの為に苦労して一級建築士になった訳じゃない。
奇麗になでつけられていた前髪がはらりと落ちて眼鏡にかかる。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

虐げられた私、ずっと一緒にいた精霊たちの王に愛される〜私が愛し子だなんて知りませんでした〜

ボタニカルseven
恋愛
「今までお世話になりました」 あぁ、これでやっとこの人たちから解放されるんだ。 「セレス様、行きましょう」 「ありがとう、リリ」 私はセレス・バートレイ。四歳の頃に母親がなくなり父がしばらく家を留守にしたかと思えば愛人とその子供を連れてきた。私はそれから今までその愛人と子供に虐げられてきた。心が折れそうになった時だってあったが、いつも隣で見守ってきてくれた精霊たちが支えてくれた。 ある日精霊たちはいった。 「あの方が迎えに来る」 カクヨム/なろう様でも連載させていただいております

冷遇された没落姫は、風に乗せて真実を詠う ─残り香の檻─

あとりえむ
恋愛
「お前の練る香など、埃と同じだ」 没落した名家の姫・瑠璃は、冷酷な夫・道隆に蔑まれ、極寒の離れに追いやられていた。夫の隣には、贅を尽くした香料を纏う愛人の明子。 しかし道隆は知らなかった。瑠璃が魂を削って練り上げた香は、焚く者の心根を映し出す「真実の鏡」であることを。 瑠璃が最後に残した香の種を、明子が盗み出し、手柄を偽って帝の前で焚き上げた瞬間。美しき夢は、獣の死臭が漂う地獄へと変貌する。 「この香りの主を探せ。これほど澄み切った魂が、この都に在るはずだ」 絶望の淵で放たれた一筋の香りに導かれ、孤独な東宮が泥の中に咲く白蓮を見つけ出す。 嘘と虚飾にまみれた貴族社会を、ひとりの調香師が浄化する、雅やかな逆転劇。

一年後に離婚すると言われてから三年が経ちましたが、まだその気配はありません。

木山楽斗
恋愛
「君とは一年後に離婚するつもりだ」 結婚して早々、私は夫であるマグナスからそんなことを告げられた。 彼曰く、これは親に言われて仕方なくした結婚であり、義理を果たした後は自由な独り身に戻りたいらしい。 身勝手な要求ではあったが、その気持ちが理解できない訳ではなかった。私もまた、親に言われて結婚したからだ。 こうして私は、一年間の期限付きで夫婦生活を送ることになった。 マグナスは紳士的な人物であり、最初に言ってきた要求以外は良き夫であった。故に私は、それなりに楽しい生活を送ることができた。 「もう少し様子を見たいと思っている。流石に一年では両親も納得しそうにない」 一年が経った後、マグナスはそんなことを言ってきた。 それに関しては、私も納得した。彼の言う通り、流石に離婚までが早すぎると思ったからだ。 それから一年後も、マグナスは離婚の話をしなかった。まだ様子を見たいということなのだろう。 夫がいつ離婚を切り出してくるのか、そんなことを思いながら私は日々を過ごしている。今の所、その気配はまったくないのだが。

妹の身代わりだった私に「本命は君だ」――王宮前で王子に抱き潰され、溺愛がバレました。~私が虐げられるきっかけになった少年が、私と王子を結び付

唯崎りいち
恋愛
妹の身代わりとして王子とデートすることになった私。でも王子の本命は最初から私で――。長年虐げられ、地味でみすぼらしい私が、王子の愛と溺愛に包まれ、ついに幸せを掴む甘々ラブファンタジー。妹や家族との誤解、影武者の存在も絡み、ハラハラと胸キュンが止まらない物語。

身を引いたのに、皇帝からの溺愛が止まりません ~秘された珠の還る場所~

ささゆき細雪
恋愛
五年前、内乱の混乱のなかで姿を消した最愛の妃・白瑤華(はくようか)。 彼女を失った皇帝・景玄耀(けいげんよう)は、その後ただ一人を想い続けながら執務に追われていた。そんなある日、書類に彼女の名前を発見し、居ても立っても居られなくなる。 ――死んだはずの彼女が、生きている? 同姓同名かもしれないが確かめずにいられなくなった彼は地方巡察を決行。そこで、彼によく似た幼子とともに彼女と再会、地方官吏として働く瑤華と、珠児(しゅじ)を見て、皇帝は決意する――もう二度と、逃がさないと。 「今さら、逃げ道があると思うなよ」 瑤華を玄耀は責めずに、待ちの姿勢で包み込み、囲い込んでいく。 秘された皇子と、選び直した愛。 三人で食卓を囲む幸福が、国をも動かすことになるなんて――?    * * * 後宮から逃げ出して身を引いたのに、皇帝の溺愛は止まらない――これはそんな、中華風異世界ロマンス。

この度娘が結婚する事になりました。女手一つ、なんとか親としての務めを果たし終えたと思っていたら騎士上がりの年下侯爵様に見初められました。

毒島かすみ
恋愛
真実の愛を見つけたと、夫に離婚を突きつけられた主人公エミリアは娘と共に貧しい生活を強いられながらも、自分達の幸せの為に道を切り開き、幸せを掴んでいく物語です。

女王は若き美貌の夫に離婚を申し出る

小西あまね
恋愛
「喜べ!やっと離婚できそうだぞ!」「……は?」 政略結婚して9年目、32歳の女王陛下は22歳の王配陛下に笑顔で告げた。 9年前の約束を叶えるために……。 豪胆果断だがどこか天然な女王と、彼女を敬愛してやまない美貌の若き王配のすれ違い離婚騒動。 「月と雪と温泉と ~幼馴染みの天然王子と最強魔術師~」の王子の姉の話ですが、独立した話で、作風も違います。 本作は小説家になろうにも投稿しています。

前世の記憶しかない元侯爵令嬢は、訳あり大公殿下のお気に入り。(注:期間限定)

miy
恋愛
(※長編なため、少しネタバレを含みます) ある日目覚めたら、そこは見たことも聞いたこともない…異国でした。 ここは、どうやら転生後の人生。 私は大貴族の令嬢レティシア17歳…らしいのですが…全く記憶にございません。 有り難いことに言葉は理解できるし、読み書きも問題なし。 でも、見知らぬ世界で貴族生活?いやいや…私は平凡な日本人のようですよ?…無理です。 “前世の記憶”として目覚めた私は、現世の“レティシアの身体”で…静かな庶民生活を始める。 そんな私の前に、一人の貴族男性が現れた。 ちょっと?訳ありな彼が、私を…自分の『唯一の女性』であると誤解してしまったことから、庶民生活が一変してしまう。 高い身分の彼に関わってしまった私は、元いた国を飛び出して魔法の国で暮らすことになるのです。 大公殿下、大魔術師、聖女や神獣…等など…いろんな人との出会いを経て『レティシア』が自分らしく生きていく。 という、少々…長いお話です。 鈍感なレティシアが、大公殿下からの熱い眼差しに気付くのはいつなのでしょうか…? ※安定のご都合主義、独自の世界観です。お許し下さい。 ※ストーリーの進度は遅めかと思われます。 ※現在、不定期にて公開中です。よろしくお願い致します。 公開予定日を最新話に記載しておりますが、長期休載の場合はこちらでもお知らせをさせて頂きます。 ※ド素人の書いた3作目です。まだまだ優しい目で見て頂けると嬉しいです。よろしくお願いします。 ※初公開から2年が過ぎました。少しでも良い作品に、読みやすく…と、時間があれば順次手直し(改稿)をしていく予定でおります。(現在、146話辺りまで手直し作業中) ※章の区切りを変更致しました。(9/22更新)

処理中です...