ギャルゲーのはずが攻略対象外男子に好かれてます。

9月

11

 ーー転校の話をしてから1週間経った。

  当初引っ越しは2週間後の予定だったが、急遽引継ぎの関係で両親は昨日引っ越し先へ行ってしまった。

 急ぎの引っ越し準備は慌しいものだったが、これもストーリー通りだから問題ない。

 今日から終業式まで妹と2人暮らしだ。

 菜美と話し合い、家事は分担し朝夕食は当番制にした。

 自慢じゃないが俺は同世代の中じゃ料理は出来る方だと思う。カップ麺やレトルトじゃないぞー。

  以前吉良や奏美にも料理を作ったら、奏美が敗北に崩れ落ちた姿は実に爽快だった。…その後のいつでも嫁に行って良し！！との許可は褒め言葉と思っている。



（今日は和食しよっかなぁー）



 放課後。

 夕食の献立を考えながら俺は昇降口から外へ出た。




「凪沙！！」

「………」




 今日秋刀魚安くないかな、なんて考えの途中で名前を呼ばれた俺は不本意ながらそちらを振り向く。

  フェンス向こうのテニスコートにいた吉良がこちらに向かって駆け寄って来る姿に嘆息する。




「…お前なんでまた女子のテニスコートにいるんだよ」

「部活の用事だ」

「だったら今日こそ三条ちゃん紹介してくれ」

「嫌だ」

「おいっ」




 真顔で即答かいっ。

 遠くに赤茶の髪の小柄な後ろ姿が見えているのにぃ。

 ここ1週間出会いを求め、わざと女子テニス部の使うコート近くを通っているのに、全く出会いイベが発生しない。

 途中から何故か吉良が邪魔しに現れるようになるし…。

 お前俺のサポキャラだろうがっ。