ギャルゲーのはずが攻略対象外男子に好かれてます。

9月

『幼馴染みのお友達』君part②

 ちょっと突くだけで良い反応するとか見た目に反してころころ表情変わって可愛いとか。本人が聞いたら怒りに打ち震えるだろう内容を、オレは黙って聞く。

 もちろん、オレも不愉快だが。このタイミングでこんな話をするこの人の意図が知りたかった。

  すると、いったん言葉を切った会長は初めて顔を上げオレを視界に捉えた。

 射抜くような真剣な表情で。




「何より、あの子は人を頼らない」

「………っ」

「無意識だろうが、自分の気持ちより他人を優先する。あの子は悲しくても笑う」




  お前なら意味が分かるだろう、と。 吉良会長の藤紫の瞳が蔑みに目を細めるる。

 吉良は咄嗟に何か言おうとして口を開くが、上手い言葉が見つからず閉ざした。
 それが無性に悔しくて出ない言葉の代わりに唇を噛み締める。




「そんなあの子を僕はもう見たくない。転校するって聞いた時、手放したくないって思った。だから告白した」




 生徒会長の自分としてではなく、1人の恋愛対象として意識して欲しくて。




「まだいなくなるまで時間はある。僕は振り向いてもらえるよう努力するつもりだ」

「…会長の気持ちはわかりました。でも、オレも譲れません」

「『幼馴染み』君のくせに都合良すぎじゃない？」



（…間違いない）



 
 この人の言う『幼馴染み』はオレを同等に見ていないという意味だ。

  凪沙から見たオレは共有する時間が多いだけの、ただの友達。それ以上でもそれ以下でもない。

 スタートラインに立ってもいないヤツが出しゃばるなとこの人は言っているのだ。