ギャルゲーのはずが攻略対象外男子に好かれてます。

11月

15

 （情けなさ過ぎるだろ、俺）



 人混みに隠れ吉良から逃げた俺は物陰に隠れしゃがみ込んだ。

 そう、俺は吉良から逃げた。

 子供じみた我儘だとあの時自分自身の中で納得し、割り切ったはずじゃないか。今更なんでぶり返すんだか。

 今までもいくらでも見てきたはずなのに。



（好きって言われたから？）



 身勝手てで都合良すぎる自身に、我ながら呆れてしまう。

 ズボンのポケットからスマホを取り出すと、吉良からラインと着信が来ていた。
時間はほんの数分前。

…雨塚先輩から一緒にいろって言われてたっけ。

 けれど今の笑えない俺じゃ戻れない。

 放っておけば何度も連絡がくるだろう事は簡単に予測出来る。

 俺はラインで『喉渇いたから飲み物買ってくる。待ってろ』と打ち込む。すぐ様吉良から『今どこ』『そっちに行く』と返ってきたが、俺はそのままスマホの電源を落とした。



（…顔でも洗って気分転換するか）



 ここにいても気が滅入るだけだ。

 顔を洗ってどこか賑やかな場所に行けば気持ちも上昇するだろう。

 俺は体育館脇に水飲み場があるのを思い出し、そこへ向かうため立ち上がる。

 人の流れに逆らい徐々に人気が無くなっていく。

 先輩達の言葉が過ぎったが顔を洗ってすぐ戻れば大丈夫だ。落ち着いたら上手く誤魔化して吉良に謝ろう。

 どう誤魔化すか考えながら歩いて、水飲み場が見えた瞬間、




 「静御前見っけ」


 ガンッ、



 声と共に頭に強い衝撃を受け、世界が回り地面に身体が叩きつけられた瞬間意識が途絶えた。