ギャルゲーのはずが攻略対象外男子に好かれてます。

11月

14

 吉良がゴール地点に到着し受付の子が待っていた俺を呼ぶ。

 そちらに気を取られ、次に隣を見た時にはすでに雨塚先輩の姿は消えていた。

 あの人っている世界間違っているんじゃなかろうか…。

 まあ、いいや。気を取り直して楽しもう。俺は張り切ってお化け屋敷の中に入っていった。








ーーー十数分後。

 学生の作るお化け屋敷なんてとちょっと侮っていた。

 人の深層心理や現代科学を駆使し、精神力が削られた所で古典的な技法。次に何が起こるか分からない中、スタンプ集めなきゃならないからとにかく体力というより、精神的に疲れた。

 全部スタンプを集められた商品は箱の中の飴掴み取りでした。そこにはお金かけないのね…。

 片手で掴めるだけ掴んだ飴を１つ口に含むと口に広がる苺味に疲れた心が僅かに癒される。

 残りを制服のポケットに突っ込んで、近くで待っていてくれているはずの吉良の姿を探す。

 高身長の金茶の頭はすぐに目にとまる。


そう、止まったけど…………。


 沢山の人の真ん中で笑う、吉良。

 先程のまとわりついていた女の子には不機嫌でしかなかったのに、俺から数メートル先の男女の輪の中で吉良は楽しそうに笑っていた。

 俺の足は動かない。



（あ、嫌だな…）



 思い出す去年の冬。

 悲しくて寂しくて心まで底冷えしそうで。

 あの時の寒さが蘇りブルリと身体が震えた。

 らしくないなーと内心自分を笑い飛ばそうして、笑えなかった。



（こんなんじゃ、ダメだ）



 あそこには行けない。

 吉良に気付かれないようにそっと背中を向けて俺はその場から立ち去った。